みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、カレル・チャペックの『郵便配達の話』を紹介したいと思います。
カレル・チャペックは、20世紀のチェコで活躍した文筆家です。児童文学にとどまらず、劇や小説、紀行随筆、少年少女の文学と、様々なジャンルで名作を残しました。『ダーシェンカ』という犬の物語や、『こいぬとこねこのおかしな話』などを読んだことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その多くが、画家として活躍した兄ヨゼフとの共同作業でした。今回紹介する『郵便配達の話』の挿絵も、兄ヨゼフによるものです。
そんなチャペック兄弟による『郵便配達の話』と、ヨガにはどんな関係があるのでしょうか。早速、みなさんと考えていきたいと思います。
マルチな活躍を見せたカレル・チャペック

著者のカレル・チャペックは、1890年にボヘミア(当時のオーストリア・ハンガリー帝国領)の小さな町で生まれます。
1909年にカレル大学へ進学し、哲学を専攻。1910年には、ベルリンのフリードリヒ・ヴィルヘルム大学へ留学します。ベルリンの大学修了後は、兄ヨゼフがいたパリのソルボンヌ大学へ留学します。その時、兄ヨゼフと共に『盗賊』という戯曲を書き上げました。
その後は、戯曲、小説、童話、旅行記、文明評論、園芸の本に至るまで、実に様々なジャンルの作品を発表し、国民的人気作家になっていきました。ちなみに、戯曲『R.U.R(ロッサム万能ロボット商会)』で、初めてロボットという言葉が生まれたそうですよ。
小説『山椒魚戦争』や戯曲『母』で、ヒトラーとナチズムを痛烈に批判しているため、ナチスに目をつけられますが、ゲシュタポに捕らえられる前に肺炎で亡くなりました。
郵便局の妖精

この物語の主人公は、郵便配達のウォーカーさんです。ウォーカーさんは、郵便配達の仕事をものすごくつまらないものだと思っていました。
「郵便配達……なんていやな商売だろう。走って、駆けて、走って、飛んで、毎日毎日三万三千三百三十三歩は走り廻らなければならない。その中には、階段を上がったり下りたり、その梯子段は、八千八百八十八段はあるにちがいない。それに配達する手紙といったら、刷り物だの、勘定書だの、誰一人喜んでくれそうなものはありゃしない。ほんとにくだらないものばっかりだ。第一、郵便局というところからして糞面白くもない、全く変なところだ。お伽噺一つありそうにもない」
山本有三.『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. p,19
こんな風にウォーカーさんは不満タラタラだったわけですが、ある夜に不思議な出来事に出くわしてから、その考えをすっかり変えることになりました。
ある夜、配達に疲れたウォーカーさんは郵便局のストーブの横に座り込んで、ついウトウトと眠りこんでしまいました。そして、そのまま、郵便局が閉められてしまったことにも気がつかず、ぐっすり眠り込んでしまったのです。
真夜中、ピタピタピタという小さな物音で、ウォーカーさんはハッと目を覚まします。ネズミか!と思ったのですが、違いました。足音を立てていたのは、郵便局の妖精だったのです。
せいぜいひよっこか小栗鼠か、それともはつか鼠くらいの、それは可愛らしい、それでいて顎には真っ白な髭をふさふさとはやした小人の一団でありました。それがどうでしょう。その小っぽけな体に、ちゃんと一人前の郵便配達の制帽をかむり、しかも、仕事に出る時のマントまでそっくり着こんでいるではありませんか。
山本有三.『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. p,21
郵便配達の小人たちが夜の郵便局で何をしていたかと言いますと、トランプでした。ただし、ここでいうトランプは、日本のトランプとは少し違っています。チェコに昔からある「マリアーシュ」というカードゲームで、7が一番弱く、8、9、10、ジャック、クイーン、キング、一番強いポイントの札という8枚で遊ばれるものです。トランプによく似ていますが、少しだけ違いますよね。
とにかく、郵便配達の小人たちは、そのマリアーシュというカードゲームをしていたわけですが、普通のカードで遊んでいたわけではありませんでした。カードのかわりに未配達の郵便物を使っていたのです。
未配達の郵便物で、どうやってカードゲームをするのか、ウォーカーさんが不思議がりますと、小人たちはこんな風に教えてくれました。
「一枚一枚、中に書いてある手紙の内容次第で、ちゃんと等級が決まっているのです。一番弱い札、つまり七の札にあたるのは(略)いい加減な、口さきだけの、いわば嘘ばかり書いてある手紙、それなのです」
山本有三. 『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. pp,24-25
8の札は仕方がないから書いた手紙。
9の札はただ礼儀正しいだけの手紙。
10は、お互いに面白い出来事を知らせ合う手紙。
ジャックは、人を喜ばせたい心から書いた手紙。
クイーンは親友同士の手紙。
キングは愛の手紙。
一番強いカードは、人が真心をこめて書いた手紙……といった具合なのだそうです。
封をした手紙を見ただけでは、どんな手紙かわかるわけはありません。けれども、郵便局の小人たちはこう言います。
「私共はちょっと上からさわってみただけで、封書の中身くらい造作なくわかってしまうのです。真心のこもっていない手紙……これはちょっとさわってみただけで、手触りがつめたい。反対に愛がこもっていればいるほど、その手紙はあたたかいものです」
山本有三.『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. p,26
また手紙を額に当てると、手紙の中身を一言一句読めてしまうということでした。ウォーカーさんは、郵便局の小人たちのことをとても面白く思い、食べ物のことや暮らしぶりについて、あれやこれやと聞いて、愉快な時を過ごします。
その日からウォーカーさんは、郵便配達の仕事に不平を言わなくなりました。ウォーカーさんが届けているものは、決してつまらないものばかりでなく、心のこもった手紙もたくさんあるのだということに気がついたからです。
「なんだ、この手紙のなまぬるいことはどうだ」ウォーカーさんはよく独り言を申しました。「それにしてはこちらはどうだ、持っている私の手まであったかくなる。そうだ、多分これはどこかの母親から子供にあてた手紙に違いない」
山本有三.『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. p,29
ウォーカーさんは、今まで郵便配達の仕事はただ疲れるだけのつまらないものだと思い込んでいましたよね。でも、郵便局の小人たちのおかげで、そうではないということがわかったのです。ウォーカーさんが運ぶ手紙の中には、確かにつまらないものもあるわけですが、その中には、真心がこもった温かい手紙もたくさんあったのだということに気がついたのです。
固定観念や思い込みといった縛りをとくことが、ヨガの目的の一つだと言われていますが、郵便局の小人との出会いによって、郵便配達なんてつまらないものだというウォーカーさんの縛りはなくなり、郵便配達という仕事を新しい目で見ることができるようになったということができるでしょう。
その日から、ウォーカーさんには郵便配達員としての使命感が芽生えます。
どこの誰かわからないメアリを探して

真心を届けるという郵便配達の大事な使命感を悟ったある日、ウォーカーさんは、宛名のない手紙を見つけます。でも、それは手が火傷しそうになるくらい熱い手紙でした。よほど真心のこもった手紙に違いないと思ったウォーカーさんは、郵便局の小人に相談します。
郵便局の小人はその熱い手紙を額に当て、手紙の中身を教えてくれました。それは、ボブという青年が、メアリという愛している少女に結婚を申し込んだ手紙だったのです。
ウォーカーさんは、その手紙をぜひともメアリに届けてあげたいと思い、きっぱりとこう言います。
「たとえ一年かかっても、二年かかっても、世界中を歩きまわってでも、私がきっとそのメアリという少女をさがし出してみましょう」
山本有三.『世界名作選(二)「郵便配達の話」』. 新潮文庫. 平成15年. p,37
宛名のない手紙なんて放っておいてしまう方が、ずっと楽に違いありません。それなのに、ウォーカーさんは、どんなに時間がかかっても、メアリという少女を探し出そうと決めたのです。
真心を届ける郵便配達という仕事に真剣に向き合い出したウォーカーさんだからこそできた決断ですよね。損得に関係なく、ボブという見知らぬ青年と、メアリという見知らぬ少女のために頑張ることができるウォーカーさんは、ヨギーだということができるのでしょう。
さて、ウォーカーさんが、無事にメアリを見つけることができたかどうか。ぜひとも、本で読んで下さい。短いお話ですから、スルスルと読めますよ。そして、この機会にぜひ、チャペックのほかの面白い作品も読んでみて下さい!
![Dr.マヘシュ直接指導![症状別]ヨガセラピー体験クラス](https://shop.yoga-gene.com/wp-content/uploads/2024/11/mahesh90-top-800x515_new-520x335.jpg)


![[新感覚!]瞑想状態を体験する。ケンハラクマ 瞑想集中講座](https://shop.yoga-gene.com/wp-content/uploads/2023/04/kenharakuma-meditationWS-1-520x335.jpg)



![現在、オハナスマイル祐天寺で開催されている、佐久間涼子先生による体幹トレーニングプログラム「THE BASIC」先日は、トレーニングの山場ともいえるモジュール3でした。筋発揮がテーマ。筋発揮は、筋肉が最大限の力を出すこと。これまでに一か月間、コツコツとトレーニングを積んできた皆さん。辛そうでしたが、確実に体は変わっていましたね!お疲れ様でした!これから忘年会シーズンですが、トレーニングを頭の片隅に置きながら、最後まで頑張りましょう^^応援しています!年内、佐久間涼子先生は「ハタヨガクラス」をオンラインと東京・対面で開催します。ぜひ、しっかり体を動かして、極上のシャバーサナを味わってくださいね。■佐久間涼子「ハタヨガ90分クラス」<オンライン>12月16日(火)<東京・対面>12月29日(木)[検索]ヨガジェネ 佐久間涼子ぜひ、涼子先生のクラスで、筋肉から熱を生みましょう!#ヨガ](https://www.yoga-gene.com/wp-content/themes/yogageneration/assets/images/common/transparent-1x1.gif)