初めてのアフリカ大陸 〜力強くて優しいケニアの人々〜

「アフリカのヨガはどんな感じなんだろう？」

私はインドでの6ヶ月間のヨガ旅を終えて、ケニアへ向かいました。
「アフリカでのヨガはどんな感じなんだろう？」「そもそもアフリカにヨガはあるのだろうか？」初めてのアフリカ大陸上陸を前に、不安とワクワクの感情が入り混じっていました。

ケニアへ到着し、首都であるナイロビへ向かいました。「ナイロビは都会である」という事は聞いていましたが、ここまでビルが立ち並び、忙しい街だと思っていなかったので驚きました。ナイロビは、強盗などの危険もある為、外国人は基本的に街を歩く事や公共交通機関を利用する事は推奨されておらず、タクシーを利用してドアtoドアでの移動が基本です。楽ではありますが、ふとした時に気軽に外を歩けないのはとても不便だと感じました。

ナイロビのヨガスタジオ

まずは、ナイロビでヨガクラスがあるかどうかをインターネットで検索してみると、予想以上にヨガスタジオがあり、驚きました。その中でも評判がよく、タイミングが合うレッスンを申し込みました。
ヨガスタジオは雑居ビルの一室を使用し、とても綺麗で開放的なヨガスタジオでした。窓からの景色は、大自然というよりはビルが立ち並ぶ都会的な景色で、「自分がケニアにいる」とは思えない空間でした。
参加したクラスは、パワーヨガのクラス。参加費は約1,500円と安くはありませんが、綺麗なスタジオとトイレやシャワー室なども完備されているので値段相応な印象を受けました。
先生は、現地のケニア人の男性でした。クラスの参加者は、ヨーロッパ系が7割（男女比は半々）、現地の人が3割（女性中心）でした。フロースタイルのヨガのアーサナが中心で、時折パワーが必要なアーサナもありましたが、全体的にはキツすぎず、サーキットトレーニングをした後の様な爽快感を感じました。
印象的だった事は、ケニア人の先生がとても体格が良くポーズもとても力強いのですが、声かけやクラスの進め方には優しさもあり、心地が良かった事です。また、参加している現地のケニアの人たちは、パワーが必要なアーサナは得意そうだったのですが、柔軟性が必要なアーサナは苦手そうな印象を受け、国民性による違いを感じました。

紅茶が有名な街、ケリチョ

私はナイロビを離れ、バスで約5時間かけてケリチョという紅茶が有名な街にやってきました。
ここでは、青年海外協力隊として赴任している友人の活動を見学しました。彼は、家庭の事情や貧困などで犯罪を犯してしまい、裁判でリハビリが必要と判決された子どもたちへ授業を教える活動をしていました。実際に学校へ訪問し、子どもたちと一緒に授業を受けたり、サッカーをしたり、私がヨガクラスを開催したりしました。
ほとんどの子どもたちはキリスト教徒であり、インドのヨガを初めて体験する子どもたちばかりでした。子どもたちは、難しさを感じつつも楽しんでいる様子でした。
後で先生から話を聞いたら、「初めてインドのヨガを体験することで、何か未知なるパワーを得られるのではないかと必死にやっていた子もいた」と聞いて、子どもたちがとても純粋で可愛らしいと感じました。

また、ケリチョに滞在している時に、1人のケニア人の青年と話をした時に印象的だった会話があります。
ヨガの話になって、「お前はなんでヨガやってんの？」と聞かれたから、「幸せに生きるためだよ」と答えたんです。すると、彼が笑ってこう返しました。「じゃあ俺はヨガしなくていいや。うまいご飯食べて、友達と外で遊んでるだけで、毎日めっちゃ幸せだからさ」
その時、「あ、幸せになるのに、特別な事って必要ないんだな」と思ったのです。ただ、私にとっては、ヨガには「幸せに生きるための知恵」が詰まってる。だから、練習している。ヨガは “やるべきこと” じゃない。私にとっては “やりたいこと” なんだ。そう、気づかされた体験でした。

スラム街でのボランティア活動

再びナイロビに戻った私は、貧しい人々が住むスラム街でのボランティア活動に参加しました。そこは、貧困や家庭の理由で学校へ通う事ができない子どもたちが集まるコミュニティセンターで、私は英語や数学などを教えたり、ヨガのクラスを開催したりしました。
ケニアのスラムの子どもたちは、どんな子たちなのだろうという不安もありましたが、とても純粋で可愛らしい子どもばかりで、毎日癒されました。
ヨガを教えた時は、子どもの年齢層が幼稚園から中学生位で、元気すぎて静かにヨガをするというよりは体操教室の様な雰囲気になってしまいました。だから2回目以降は、シンプルなゲームや音楽などを取り入れたクラスにしました。すると、子どもたちが楽しそうに全身を使って動くことができていたので良かったです。アフリカの子どもたちがノリノリでダンスを踊っていたので、アフリカ人の身体能力の高さは、幼少期からダンスをたくさん踊る機会が多い事も影響しているのかなと感じました。
ケニアのスラムでの生活は、過酷で大変な事も多いです。しかし、子どもたちには今の素敵な笑顔のまま、よりよく成長していって欲しいと感じました。

マサイマラ国立公園でのサファリツアー

スラムでのボランティアを終えて、私は、マサイマラ国立公園のサファリツアーへ参加しました。そこでは、ライオンやゾウ、キリンなどの野生動物を至近距離で見ることができて、とても感動しました。その中でも印象的だったのは、野生の食物連鎖の様子を観ることができた事です。ライオンに食べられて倒れているバッファロー。その近くで残飯を狙うワシ。草陰でガゼルの肉を食べるヒョウ……
そこには、自然の世界が広がっていました。
私たち人間も、約100万年前はその食物連鎖の輪の中でライオンに襲われるリスクがあったこと考えると、現代はとてつもない速度で変化していると感じました。

ナイロビ国立博物館

その後、ナイロビにある国立博物館へ行きました。印象的な展示は、人類史の展示コーナーでした。そこには、人類が二足歩行を開始した証拠としてのビッグボーイやルーシーなどの骨格標本が展示されていました。

なぜ人類は二足歩行を始めたのか。

理学療法士としても、ヨガインストラクターとしてもとても興味深い内容の展示があり、骨格標本の前で数時間立ち止まってずっと見学をしてしまいました。笑

人類の長い歴史の中で、最初は石器などを使用する文明から、現代のテクノロジーはどんどん複雑に進化している。しかし、忘れてはいけないのは16万年前に現れた最初の祖先と同じ脳と手を今でも使用している事です。

この文章と共に、アフリカ大陸で見つかった私たちの最初の祖先の頭蓋骨の展示がとても印象的でした。
「現代人は昔の人類と比べて、脳を酷使しており、身体のバランスが崩れやすい」という話を聞く事がありますが、実際に骨の標本を見ると、改めて過剰な脳と手の使用に注意が必要だと感じました。

マサイ族の村

最後は、マサイ族の村を訪問しました。
インターネットでマサイ族の村への訪問について調べると、「ビジネスマサイ族」という言葉もあるほど、現代の生活に適応し、スマートフォンを活用したり、観光客から効率よくお金を稼ぐ事を考えているマサイ族が多いという情報がありました。
マサイ族の村を訪れると、確かにスマートフォンを使用し、観光客への対応がこなれている感じを受けましたが、実際に生活している家を見せてもらったり、「いまだにライオンの狩りを行っている」などの話を聞くと、とてもたくましいと感じました。

ツアーが終わり、村の外に出るとマサイ族の方々がベンチで座っていたので、長老的な方にマッサージをさせてもらいました。驚いたのは、マサイ族の筋肉は凝り固まっておらず、かといって緩すぎず、筋肉のバランスと質がとても良い印象を受けました。それは、ジャンプをたくさんしている影響なのか、広大な土地を歩き回っている影響なのか、それとも遺伝的なものなのかはわかりませんが、肩こりなどとは縁が遠そうな身体であると感じました。
その後、その方は何と村のお医者さんだったらしく、お返しにマサイ族のマッサージをしてもらいました。マサイ族のマッサージは激痛でした。笑

ケニアでヨガをしていて感じた事があります。
それは、「ケニア人は力強いけど、優しい」
これは街中で出会うケニア人にも、同じ事を感じました。「ヨガには国民性が出る」そう感じたアフリカの旅でした。