フィットネスウェアを着た女性の前に置かれた様々な新鮮な食材

『バガヴァッド・ギーター』の教え~心が安定しない時には食事に意識を向けてみよう~

毎日漠然とした不安が消えず、瞑想をしていても集中できず、心が落ち着かないと感じている時には、食事に原因があるのかもしれません。ヨガの教典では、ヨガに適切な食事についても書かれています。

今回は、穏やかな心に適した食事について考えてみましょう。

心に影響を与える3つのグナ(性質)と食べ物

この世界に存在するあらゆるものは、3つのグナ(性質)の組み合わせでできています。それらは、サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(鈍質)です。

私たちの心も、3つのグナの中でどの性質が優先になっているかで変化し続けています。それぞれのグナが優先になっている時の心の特徴をみていきましょう。

サットヴァ(純質):純粋な心の状態。幸せを感じやすい。穏やか。視界が明るい。

マインドフルな状態。集中しやすい。

ラジャス(激質):感情が激しい。渇望。権力、富、官能的な快楽に取り憑かれる。

復讐、怒り、嘆きなどの激情。緊張感。恐怖、不安。

タマス(鈍質):怠慢、怠惰。妄見に取り憑かれる。執着、束縛

この3つの中で最も幸福を感じやすいのは、サットヴァな心の状態です。ヨガでは、できるだけ心の中の不純性を取り除くことによって、サットヴァ性を高めていきます。

食べ物からも影響を受ける心の状態

サットヴァ、ラジャス、タマスという3つのグナ(性質)は、心の状態だけでなく世界のあらゆるものに関係します。

私たちの心は、自分の身の回りのものの性質からも影響を受け続けています。つまり、サットヴァ性の高い食事によって幸福な心の状態が高まり、タマス性の高い食事によって暗く重たい心の状態になります。

例えば、栄養価が低くて添加物の多いファーストフードばかり食べていれば、体の健康が損なわれるだけでなく、心の健やかさも奪われてしまいます。たとえ忙しい時であっても、体に必要な食事を心掛けていれば、心のバランスを崩しにくくなります。

心の状態は、食事だけでなく周囲の音や人、空気、目にする色などからも影響を受けるため、食事だけで完全に整うわけではありませんが、直接的に体内に取り込む食べ物の影響はとても大きいのです。

では、どのような食事が心の状態に影響を与えやすいのか考えてみましょう。

3つのグナ(性質)それぞれの食事

インドのヨガ道場を訪れると、多くの場合、食事のルールが設けられています。

一般的にはベジタリアン食であり、肉食とアルコール摂取が禁止されています。また、味の濃いものや辛い料理もヨガの練習には適しません。

具体的に、どのような食事が適切と考えられているのか見ていきましょう。

心を穏やかにするサットヴァな食事

木の箱に入れられた新鮮なたくさんの野菜

『バガヴァッド・ギーター』では、エネルギーに満ちていて、健康、幸福、喜びを与えてくれる美味しい食事が、サットヴァ性であると説かれています。

上質な穀物と新鮮な野菜や果物は、活力を与えてくれますね。食事は適度な油分を含んでいるべきで、特にギーと呼ばれる精製バターが推奨されます。乳製品を含む動物性の食品が合わない場合には、季節や自分の体質に合った油を選択したいですね。

アーユルヴェーダが日常生活に浸透しているインドでは、健康に良い食事は季節や個人の体質によって違うと考えられています。例えば、乳製品のアレルギーがある人にとってのギーは悪い食べ物ですし、夏には貴重な水分補給になるココナッツウォーターも、冬には体を冷やして風邪の原因となってしまう悪い食べ物です。

誰にとっても絶対的に良い食べ物は存在せず、自分にとって快適な食べ物を探す必要があると考えられています。

感情が激しくなるラジャス性の食事

唐辛子をニンニク

過度に苦いもの、辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いもの、脂っ気がなく乾燥したものはラジャス性の食事とされます。

ガッツが欲しい時に、激辛料理が食べたくなる人がいるかもしれません。辛い食べ物によって思考も激しく働きますので、モチベーションが上がってやる気に繋がる場合もあるかもしれませんが、結果に一喜一憂しやすくなったり、未来への不安が高まったりすることもあります。

ヨガ道場では、玉ねぎ、唐辛子、ニンニクは摂取しません。これらは決して悪い食べ物ではありませんが、ヨガを練習する場合には避けられます。なぜなら、ラジャス性の食品を食べることによって心がアクティブになり、雑念が生まれやすくなるからです。

心を迷わすタマス性の食事

頭を抱える女性の前にあるビールと崩れたハンバーガー

鮮度が落ちていて味が劣化しているもの、悪臭を放つもの、前日調理された料理などは、タマス性の食事といわれます。わざわざ腐った食べ物を口にする人はいないと思いますが、長期間保存するための食品添加物が多い食品は安価に購入できるため、知らずに食べてしまうことはよくあると思います。

また、日本ではカレーは3日目が美味しいとも言いますが、カレー発祥の地インドでは、料理してから45分以内に食事をするべきだと考えます。衛生的な意味では再加熱すれば問題ありませんが、食材は加熱するたびにビタミンなどの栄養素が破壊されてしまいます。つまり、何度も温め直した3日目のカレーだと、野菜本来の栄養素をしっかり頂くことができないのですね。

また、アルコール類はタマス性の食品です。ストレス発散にお酒を飲む人もいると思いますが、お酒はストレスの根本的な原因を消してくれません。一時的に嫌なことに蓋をして見えなくしてくれるかもしれませんが、それは視野を奪う行為なのですね。

タマス性のものは、嫌なものから一瞬目を逸らさせてくれることもありますが、本質を知ろうとするヨガでは逆の道に進んでしまいます。

自分の心の状態に合った食事を考えてみよう

心が常にザワザワしていて落ち着かず、漠然とした不安が消えないと感じる時には、無意識にラジャス性の食事をとっている可能性があります。

例えば、仕事を頑張りたいからと、ラジャス性のカフェインを含むブラックコーヒーばかり飲んでいれば、頭がすっきりとしてやる気が出る感じがするかもしれません。しかし積み重なると、イライラすることが多くなったり、先のことばかり考えて緊張感が高くなってしまったりするかもしれません。

興奮している時には、さらにラジャス性の食品を好みがちです。激辛ラーメンや塩分の高いものを好んでしまうかもしれません。

逆に、やる気が全く出なくてどんよりとした重たい状態の時はどうでしょうか。ますますタマス性の上がるファーストフードや、スナック菓子に手が伸びてしまうかもしれません。

そんな時には自分にしっかりと打ち勝って、優勢になり過ぎたタマス性を断ち切る努力が必要ですね。まずは白湯を飲み、体を動かし、自分自身で料理した新鮮な食事を頂くことで、少しずつサットヴァ性が高まっていきます。

どうしても重たくて動けない時には、ラジャス性のコーヒーを淹れても良いかもしれませんが、ラジャス性の反動で、後からタマス性を呼びやすくなります。頼りすぎるのもよくありません。

自分が一番快適な食事を探す

食事は毎日のことなので、しっかりしようとしていても、忙しくなるとつい楽な方に行きがちです。また、オーガニックの野菜や果物をはじめ、あらゆる食品は本当に高価ですので、健康的な食事を気にし過ぎてしまうと、家計の負担を感じてしまうのも事実です。

大切なことは、自分にとっての最善のバランスを見つけることです。

自分の心と食事の関係をしっかりと意識して見直してみると、何がどのように影響するかがわかってきます。不健康で味の濃い食事も、たまになら問題ないのかもしれません。意識して食べることで、その食事がどのように作用するのかが分かってきます。

自分自身を観察して、自分の本質を知ることがヨガです。食事の時間もヨガの一部だと考えると、面倒な炊事の中でも面白さを感じられるようになるかもしれません。

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