ヨガは空腹状態で行うのがベストという話は、皆さん一度は耳にしたことがあると思います。そもそもお腹いっぱいの状態では、身体を動かそうという気にはならないですよね。また、満腹で動き回ったら気分が悪くなった、なんていう経験をされた方もいらっしゃるでしょう。
このように、おそらく体感的に・経験的に、食後すぐにヨガをすることは避けておられる方も多いと思いますが、医学的にみて、「空腹状態でのヨガをおススメする理由」には何があるのでしょうか?
空腹状態のほうが、深い呼吸がしやすい!

まず、呼吸のメカニズムについて、ざっくりお話しします。
肺そのものには筋肉がないので、私たちは意識的に肺を動かすことはできません。呼吸は、肺の周りにある筋肉を使って主に行われています。ここで重要なのは、「横隔膜」という筋肉です。呼吸は、息を「吸う」「吐く」の2つがあり、息を吸うときには横隔膜を下に押し下げて、吸い込んだ息をおさめるBOX(医学的には胸腔といいます)をひろげます。つまり、このBOXがひろがった分だけ息が吸い込めるのです(限界はあります)。
ここで図を見てください。肺、横隔膜の下には胃があります。満腹とは言うまでもなく、胃に食べ物がたくさん入っている状態です。満腹で胃が膨らんでいると、横隔膜は下がりにくくなり、吸い込んだ息をおさめるBOXがひろがりません。すると結果として、あまり息が吸い込めなくなり、呼吸を深めることができないのです。
なお、息を吐くのは吸うときと異なり、受動的です。先ほど、吸うときには横隔膜を下げていると言いましたが、このとき、横隔膜という筋肉は収縮しています(頑張って力を入れているイメージ)。吐くときはこのギュッと収縮した筋肉が緩んで、横隔膜がもとに戻るだけなので、あまり努力が要りません。
意識的に息を吐くときは腹筋を使う
ただ、ヨガをするときに意識的に呼吸を行う場合は別です。意識的に息を吐こうとするときには、腹筋を使わなければなりません。
腹式呼吸を行う際、「吐くときにお腹をぺっちゃんこにして」と、インストラクターが話しているのを聞いたことがあるでしょう。お腹に力を入れて息を吐こうとすると、腹筋が収縮します。すると、胃などが入っているお腹のBOX(医学的には腹腔といいます)の圧力が高まり、緩んだ横隔膜を肺のほうへ押し上げる手助けをしてくれます。
このとき、満腹で胃の中が食べ物で詰まっていると、お腹をぺっちゃんこにすることで胃も圧迫されますから、食べ物が逆流してきて気持ち悪い…なんてことになりかねません。
食後は、身体が食べ物を消化したい時間です

食後すぐに動いて、気分が悪くなった経験がある人もいるでしょう。色々な理由が考えられますが、その一つがこちら。高齢者と接する機会が多い方は、その方が食後に疲れている場面を見たことがありませんか?
食後に身体を動かすと消化不良になる?!
食後の身体は、食べた物を消化することにエネルギーを使おうとします。
具体的には、胃や腸など消化器系の臓器に血流が増えます。身体全体に流れる血液の量(血流量)は急に増えたりしないので、消化器系に多めに血液が流れる分、他の場所に流れる血液の量が少なくなり、血圧が下がってしまうことがあります。
さて、このような状態のときにアクティブに身体を動かすと当然、身体は消化にエネルギーを十分使うことができません。せっかくヨガをしても、いつものように身体が動かないばかりか、消化の邪魔をしてしまうことになってしまいます。
ヨガは空腹でしたほうが良いということは、このように医学的にみても理に適っています。せっかくヨガをするなら、呼吸しやすい状態でおこなったほうが効果UPを望めます。また、ヨガは自分の身体を大切にすることです。身体が消化にエネルギーを使いたいときは、そちらを優先してあげるなど、身体の自然な流れに逆らわないように、ヨガを楽しんでみてください。
※妊娠中や持病などで医師から指示を受けている方は、指示通りに食事療法など治療を行ってください。
文・樋口佳耶
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