マタニティブルーに有効なヨガは?

マタニティブルーに呼吸と瞑想が効果的【医学的に研究が証明】

マタニティブルー、どう向き合う?

妊婦の女性が悲しんでいる写真
産前・産後という時期は、一生のうちで最もうつ病にかかりやすい時期

「待望の赤ちゃんが来てくれたのに、気分は落ち込んでばかり。」「自分に自信が持てない。」など、妊娠中の一時的なうつ症状(産前うつ)を一般的にマタニティブルーといいます。

実は、産前・産後という時期は、一生のうちでとりわけうつ病にかかりやすい時期なのです[1]。これは、妊娠・出産は喜ばしい出来事である一方で、ストレスや不安も多くなる時期であること、また、女性ホルモンの大きな変化により、ストレスへの抵抗力が低下することも一因だと考えられています。

こうした気分の落ち込みの対処法として、最もメジャーなのは「家族への相談」。他には「抗うつ薬」や「心理療法(認知行動療法や対人関係療法など)」が妊娠中・出産後のうつ病に対して効果が示されています。

そんな中で、『ヨガ』がマタニティブルーに効果的という研究結果が発表されました!「薬を服薬する」もしくは「心理療法を受ける」といった選択肢よりも、より気軽に実践できるヨガ。実際に、「どんな試験が行われたのか?」「どんなヨガが効果的なのか?」について詳しく紹介します!!

ヨガ VS 通常の産前ケア マタニティブルーに効果的なのは

マタニティブルー(この試験では産前うつ)に対して、ヨガはどのくらい効果があるのでしょうか?

今回は、既に行われた複数の研究を合わせて解析し、検討する“メタ解析”という手法を使い検討した報告から紹介します。今回紹介する試験は6件の研究報告をまとめて解析したもので、妊婦375例を対象にしています。多くの臨床試験を合算して検討することで、症例数も多くなり、より正確な結果が得られると期待される手法です。

このように多くの人数で解析した結果、コントロール群(標準的産前ケア群、標準的産前エクササイズ群、ソーシャルサポート群など)と比較すると、ヨガをやった人の方が、“うつレベル”が下がったことが認められました[2]

また、注目すべきは、うつ病の方も、うつ病ではない方も“うつレベル”が下がった点です。つまり、うつ病の人はもちろん、「薬を飲むほどでもないけど、気分が落ち込む」という方も、ヨガをやることでストレスや不安の軽減といった、症状の改善が期待できます。

マタニティブルーには呼吸法と瞑想を中心としたヨガ

女性が光があたる部屋の中でヨガマットの上に座っている写真
呼吸法と瞑想を取り入れた方が“うつレベル”が下がる

では、マタニティブルーでは、どのようなヨガが効果的なのでしょうか?

答えは、「呼吸法と瞑想を取り入れた、深いリラックスを促すヨガ」です。この問題に関しても、メタ解析結果より「身体的運動を中心とするヨガ」よりも、呼吸法と瞑想を取り入れた方が“うつレベル”が下がることが示されました[2]

また、ただ単に運動を行うよりも、ヨガをやる方がうつレベルが下がることが示されている[3]ことからも、ヨガの醍醐味は“呼吸法”や“瞑想”といった普通のエクササイズにはないプラクティスがあることだと言えるでしょう。

ポイントはヨガの前後の過ごし方

週に1~2回、計60~75分程度のマタニティーヨガを行うのが望ましいでしょう。そして重要なのは、ヨガの始めには、10分程度のプラーナヤーマを行うこと、また、ヨガの終わりには10分以上のシャバーサナを行うことです。

お腹が大きくなり、仰向けの姿勢をとるのが難しい方は、左側を下にして横向きのシャバーサナでお休みください。瞑想の時間や、ヨガニドラ、リストラティブヨガを取り入れるのも大変効果的です。そういったリラクゼーションを目的とした時間は、「自分と繋がる感覚」「呼吸と繋がる感覚」だけでなく、「赤ちゃんと繋がる感覚」も味わいましょう。

妊娠中にはマタニティヨガでリラックス

「妊娠中にも関わらず気分が晴れない」とお悩みの方、悩んでいるのはあなただけではありません。妊娠中の合併症の中で最も多いのが「精神疾患」です。6.5%から12.9%、つまり約8~12人に1人、もしくはそれ以上の女性が、妊娠中に精神疾患にかかるとも言われています[4]

精神疾患まではいかなくても、気分の落ち込みを感じる女性も含めれば、もっと多くの方が同じ悩みを抱えていることになります。また、こうした妊娠中の不安やストレスは生まれてくる赤ちゃんにも影響を与えてしまうことがわかっています。[5]

マタニティーヨガは、うつ病の方も、そうでない方も、全ての方のストレス・不安を軽減する効果があることが示されています。ホルモンバランスの変化で気分が落ち込みやすい妊娠中。ぜひ、呼吸法や瞑想を取り入れたマタニティーヨガでリラックスしてみませんか?

参考資料

  1. e-ヘルスネット(参照日2018/10/28)
  2. 妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル 公益社団法人 日本産婦人科医会
  3. Hong Gong et al, “Yoga for prenatal depression: a systematic review
    and meta-analysis”, BMC Psychiatry, 2015 15:14
  4. Satyapriya M et al,”Effect of
    integrated yoga on anxiety, depression & well being in normal pregnancy.”
    Complement Ther Clin Pract, 2013;19(4):230–6.
  5. Gavin, N.I. et al,”Perinatal depression: a systematic review of prevalence and incidence.” Obstet Gynecol, 2005, 106, 1071-1083,