スマホアプリで瞑想!?~大学生向けストレス対策~

スマホアプリで瞑想!? ~大学生向けストレス対策~

健康の維持・向上、心の安定や美容など、さまざまな目的でヨガをしている方がいらっしゃるかと思いますが、ヨガは海外では医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2025年3月末までに約9,100件を超える研究報告があり、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は、アメリカで2019年に実施されたストレスを抱える大学生を対象とした、マインドフルネス瞑想アプリの効果についての研究報告を紹介します。

1. 研究の背景

大学生のグループ
大学生のグループ

18~33歳の大学生のグループのうち、75%もの生徒が何等かのストレスを抱えているとの報告があり、これは、どの年代のグループよりも高い値となっています。
ある研究では、85%以上の大学生が疲弊感を感じているとも報告しています。これは、両親や地元の友人からの自立、金銭感覚や経済を学ぶこと、増加する学業の負担と課外活動とのバランス、将来のキャリアの選択など、この年代特有のストレスが要因であると考えられています。これらの社会的な重圧は、不安や孤独感、うつ状態、睡眠障害などの増加を引き起こしかねません。
また、別の研究では、大学生のグループのうち60.83%が疲弊感や不安感を感じ、さらにそのうちの38.2%は機能的障害をきたすような重度のうつ症状を訴え、10.4%が自殺を考えるほどであったとも報告されています。しかし、忙しさやプライバシーの懸念、偏見、経済的な制約などを理由に、メンタルヘルスの問題を抱えている大学生は、治療を受けないことの方が大多数のようです。

過剰なストレスは、心の健康だけでなく身体面の健康にも支障をきたすことが分かっています。ストレスを抱える大学生の多くが直面する問題は、睡眠障害、アルコール摂取の増加、運動不足、不健康な食習慣です。大学生へのストレス対策は、喫緊の課題ともいえるでしょう。それに対応すべく、大学は学生に向けたストレス対策を積極的に取り入れつつあります。
特に、今この瞬間にノンジャッジメンタルに意識を向けることと定義される「マインドフルネス」の人気が高まっており、ストレス軽減に効果的であると期待されています。

マインドフルネスを用いた手法は、主にマインドフルネスに基づくストレス軽減法(MBSR)とマインドフルネスに基づく認知療法(MBCT)の2つがよく知られており、心と身体のストレス管理に効果的であることが分かっています。しかし、プログラムが厳格で、時間もコストもかかるため大学生には向いていないかもしれません。

約98%の大学生がインターネットの使用経験があり、85%が自分のスマートフォンを持っているこの時代、多くの大学生がオンラインでのメンタルヘルス治療に前向きのようです。ヘルスアプリの開発も飛躍的に増加しており、アプリによって医療提供の効率や治療効果の向上が報告されています。しかし、個人の健康・医療情報へのアクセスやユーザーの安全確保については、考慮が必要とされています。
マインドフルネス瞑想に関連するアプリをアプリストアで検索してみると、英語でアクセス可能なものが500個以上見つかっており、人気が高まっていることがわかります。

そこで今回の研究では、ストレスレベルの高い大学生を対象に、スマホアプリを用いたマインドフルネス瞑想の効果を検証することを目的としました。

2. 研究の方法

瞑想アプリによるストレス対策を実施
瞑想アプリによるストレス対策を実施

SNSを通じて参加者を募集し、瞑想アプリによるストレス対策を実施した33名のグループと対策を実施しない39名のグループを比較しました。瞑想アプリは1日あたり10分間使用し、8週間にわたり実施しました。ストレスの評価には、以下の指標を用いました。

  • 知覚ストレス
  • マインドフルネススキル
  • 自己への思いやり
  • 睡眠、アルコール摂取、身体的活動、果物や野菜の摂取などの健康に関するその他の指標
  • 瞑想アプリに対する満足度

3. 研究の結果

瞑想アプリによるストレス対策を8週間行ったグループには、以下の効果がありました。

  • 知覚されたストレスが減少
  • マインドフルネスに関する観察、描写(体験を言葉で表現する)、意識を伴う行動、体験を評価しないこと、体験に反応しないことの5つの構成要素を含む、総マインドフルネスの向上
  • 自己への思いやりの向上

さらに12週目に行った追跡調査の結果で、効果が持続していたことも確認されました。また、一部の学生には睡眠の質の改善が見られましたが、統計的に有意な差が出るほどではありませんでした。
8週間の研究期間中、瞑想アプリによる瞑想時間は1週間あたり平均37.9分でした。参加者の半数以上が1週間あたり30分以上、22%が1週間あたり60分以上の瞑想を行いました。さらに参加者の約3分の1が、12週目の追跡調査時にもアプリによる瞑想を継続していました。

瞑想アプリの満足度調査の結果、参加者の半数が、短期的にも長期的にもストレス軽減に役立った・非常に役立ったと回答しており、将来的にもアプリの使用を継続する予定であると回答しました。また、参加者の85%がアプリの使用に満足・非常に満足・楽しんでいると回答し、76%がほかの大学生にも薦めたいとも回答しています。

今回の研究結果から、多くのストレスを抱える大学生に対してスマホアプリを使った瞑想を行うことは、ストレスを軽減し、マインドフルネスと自己への思いやりを向上することに効果的であったことがわかりました。
また、多くの大学生が役に立った、継続して使用したい、ほかの大学生にも薦めたいと回答していることからも、スマホアプリによる瞑想は、大学生のストレス管理において便利で簡単に普及でき、取り入れやすく有効活用できる可能性が期待されます。

コロナ禍をきっかけに、オンラインでのヨガクラスの開催も当たり前となりましたが、瞑想アプリは、それよりも以前に普及が始まっていたようです。

今回の研究に用いられたスマホアプリは、『Calm』でしたが、アプリストアで瞑想や睡眠、リラックスなどと検索してみると、他にも数多くのアプリがヒットしました。ヨガや瞑想が、当たり前に身近な存在になっていると実感します。
ヨガクラスに参加したいけれど忙しくてなかなか時間がとれないという方は、スマホアプリを通じた瞑想やストレス対策を取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献