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ヨガの聖地、インド。
訪れた者は何かを手にし、そして何かを壊される。私にも、その洗礼を受ける日が来たのです。
私にとって、インドはずっと憧れ続けた場所でした。しかし同時に、心の奥でこう感じていたのです。
「この土地に足を踏み入れたら、今までの生き方を変えなければならない」と。
だからこそ行きたくて、でも、行くのが怖かったのです。何度も訪れるチャンスがあっても、どこかでストップがかかっていたのですが、今回は違いました。導かれたのではなく「招かれた」のです。
その確信を得たのは、通常では考えられない方法で渡航費が舞い込んできた時のことでした。「何かの間違いか?」そう思い、何度も確かめましたが、手元には確かに現金がありました。
その瞬間、私は悟りました。これは、「導かれた」のではなく「招かれた」のだと。「インドに私がやるべきことがあるのではないか?」そんな期待と確信を胸に、私は渡航しました。
しかし、そこには想像もしない展開が待ち受けていたのです。
サルとPCとトイレ…… ~インドで壊れるのはモノだけじゃない~
バンガロールでのキャンパスライフは、想像以上にエキサイティングで、まさに「壊れる」こと尽くしの日々でした。
サルとの戦い ── 自由すぎる侵略者
朝6時の静かな瞑想から始まる平和なキャンパス生活……のはずが、その幻想は初日で見事に壊されました。
クラスを終えて部屋に戻ると、そこはサルの遊び場と化していました。食べ物は荒らされ、荷物は散乱状態……。しかし、インドのサルは律義に戸締りをして帰ります。ですから、初めは誰の仕業かもわかりませんでした。
しかも、その夜からサルたちは部屋の前で大合唱を始めたのです。勉強どころではありませでした。
壊れ続けるモノたち ── その先に見えたもの
サル問題がひと段落したと思った矢先、今度は身の回りのものが次々と壊れ始めました。
トイレが壊れ、愛用のPCが壊れ、カバンの持ち手も壊れ、極めつけはスーツケースのキャスターまで壊れたのです。
特に、PCの壊れ方は忘れることができません。
モニターの3分の2が映らなくなり、残った3分の1だけでなんとか作業を続ける日々。「壊れたけれど、まだ使える」そんな状況が、今の私自身を象徴しているように感じられました。
壊れたのはモノだけではない ── 自分の中の「こうあるべき」
次々と起こる不便な出来事の中で、私は気づきました。壊れていたのはモノだけではなく、私の中にあった「こうあるべき」という固定観念だったのです。
日本ではすべてが便利に整えられ、壊れてもすぐに修理されて元通りになります。
しかし、ここでは違います。そして、壊れたトイレを何度も直そうとする現地の人々の姿を見ているうちに、私は気づきました。彼らは、不便だからといって嘆くのではなく、淡々とけなげに、そして楽しそうに修理を続けているのです。
その瞬間、私の心の中でも、不便さすら愛おしいものに変わっていったのです。しかも、思いがけないことに、不便さが生むトラブルは現地の人々との交流という小さな奇跡をもたらしてくれました。
壊れたものを前に、私は気づきました。
文化や価値観の違いを知る、そこには新たな創造が生まれていたのです。
「壊れる」ことで、しなやかに、たくましく
サルは自由そのもの。
壊れたPCは、それでも動き続ける。
トイレのトラブルは、やがて笑い話になる……
そして、私自身も「壊れた」からこそ、しなやかにたくましくなれた気がします。壊れたものたちには、今では感謝すらしています。もっとも、スーツケースのキャスターは未だに動きませんけれどね。笑
その後も、愛用のマッサージ器やiPhoneまでもが壊れ続けています。
すべての始まり ── 「招かれた渡航費」の行方
最初に手にした渡航費は、インドで全額(それ以上)ドネーションすることにしました。なぜなら、ヨガという叡智によって救われた人たちはたくさんいるからです。私も、その一人。この叡智がなければ、人々の心に平安は訪れたでしょうか?
私一人にできることは、ほんのわずかかもしれません。ですが、この叡智を絶やさない、そして後世に受け継ぐこと。それこそが私の「ミッション」であり、果たすべき役割なのだと感じています。
インドに「招かれ」、モノも、「私」と思い込んでいた「わたし」も、壊れた日々。その先で見つけたのは、「再生」という希望の光でした。
あなたの中に、まだ壊せずにいる”こうあるべき”はありませんか?
それは、心の奥に隠れた小さな壁かもしれません。「壊れること」は怖いものです。でも、その壁の向こうには、きっとまだあなたも知らない「新しいあなた」が待っています。
もしその壁を壊す勇気を持てたなら、あなたの目の前にはきっと新しい光が差し込むはずです。その光は、恐れを超えた先にしか見えないもの。あなた自身が、今よりもっとしなやかで、もっとあなたらしい存在へと再生するための光です。
私のアナザースカイ ── インド・バンガロールにて!
次回もまた、驚きと感動のインド滞在記が続きます。どうぞお楽しみに!