パソコンが置かれている机の前でヨガマットを敷いてヨガのアサナを練習する女性

現代社会の緊張感にヨガのリラクゼーション

ちゃんと寝たはずなのに朝疲れが取れていないと感じたり、仕事が忙しかったら週末1日中家でゴロゴロしていたら、かえって身体がダルく感じたりするといった経験は誰にでもあると思います。

疲れているときほど寝られない時もありますし、リラクゼーションって難しいですね。

ヨガは、精神的なリラクゼーションにもとても効果が高いです。

その理由を少し哲学的な概念を踏まえながら考えてみましょう。

現代社会はテンションが高くなりやすい

シーソーの周りに集まる人々
現代的な社会はとてもテンションが高くなりやすいです。

テンションが高くなっている状態とは、緊張感が高く、それによる不安が高く、ストレスが蓄積して、安心できない状態です。

多くの人は相対的に自分の人生の幸福度を量ろうとします。同級生と比べて成績が上か下か、給料が高いか低いか、SNS のフォロワーの数はどうかと、常に競争をし続けて、自分が平均かそれよりも上だと安心します。

このような価値観をもった社会は常に緊張感が高いです。普通かそれ以上が良いということは、全体の半数の人、平均よりも下の人は劣等感を抱いてしまいますね。

特にネットが発展した現代では、無意味に自己評価をする機会も増えがちです。

「平均収入」などネットで簡単に検索できたり、他のヨガのインストラクターのポーズを SNSで見たり、何年も会っていない同級生が家族旅行に行っているのを目にして羨ましくなったりと、「自分の方が劣っている」と不安を感じる機会があるかもしれません。

精神的なテンションが疾患に繋がる

相対的な価値の評価を行う競争社会では神経が常に緊張状態になりがちなので、現代病的な疾患も増えます。

糖尿病、高血圧、片頭痛、喘息、呼吸器疾患、消化器疾患、皮膚病などの疾患は精神身体的(Psychosomatic)な疾患だと考えられます。

精神と身体のどちらか一方ではなく、両方が関係しているものです。

ビハール・スクール・オブ・ヨガ創設者のサテャナンダ師によると、これらの疾患は精神的なテンションを解消しないと取り除けないと説きます。

医学が発展して様々なテクノロジーが生まれても、健康的な幸福を得るためには自分の心に向き合うことがとても大切です。

取り除くべき3種類のテンション


私たちがヨガで解消するべきテンションとはどのようなものなのでしょうか。

ヨガ哲学では3種類に分け考えます。

1.身体的なテンション

身体が緊張して筋肉が硬直しているような状態で、緊張はアンナマヤ・コーシャ(食物鞘)に蓄積します。

パソコン仕事が多い現代では、無意識に顔の筋肉をこわばらせていたり、肩に力が入ったままで長時間していたりと、筋肉の緊張が高いままで生活をしていることがあります。

これらはヨガのアーサナで解決することが可能です。

アーサナの練習で身体の調和を整えた後のシャバーサナでは、完全に弛緩した状態を感じられます。

2.感情的なテンション

感情の緊張状態は双極的なものによって起こります。

双極的なものには「愛―嫌悪」「損―得」「成功―失敗」「幸―不幸」「善―悪」などがあります。教典バガヴァッド・ギーターでは、2極で物事を判断することが苦悩の原因だと考え、全てを平等に見るように説きます。

常に良いか悪いかでジャッジし続ける状態では、感情はその2極の判断基準に束縛されて自由になることができません。

物事を良いか悪いかでジャッジする癖を手放すことで、はじめてあるがままの状態を味わって、感情の豊かさを楽しむことができます。

3.思考的なテンション

最後は思考的な緊張で、ヴィジュナーナマヤ・コーシャ(理知鞘)に蓄積していきます。

思考は過去の経験に基づいて働き、常に妄想を生み続け、混乱の渦の中にあります。

思考のテンションは身体に直接影響を与えます。

『バガヴァッド・ギーター』の1章によると、心的なストレスの高い状態では口が渇く、身体が震える、鳥肌が立つ、弓が手から落ちる、皮膚が焼かれる、立っていられないといった状態になり、それが続けば深刻な疾患に繋がります。

思考的なテンションは睡眠でも解決はしません。

ヨガ・ニードラや瞑想などで深い潜在意識の層に働きかけることで、はじめて解放されていきます。

緊張感を取り除くヨガのリラクゼーション

リラクゼーションとはとても難しいものです。考えすぎの状態は緊張が高いですが、全く考えなくてもそれがリラクゼーションに繋がるわけではありません。

動きすぎることも、動かなすぎることもテンションを高めます。眠りすぎも、眠らなすぎもよくありません。

ヨガでは心と体の調和のとれた状態を作り出すことでテンションを取り除き、深いリラクゼーション効果を生み出します。

蓄積されたテンションは、何かをやりすぎても、やらなさすぎても解消できず、整えるための方法を知る必要があります。

例えば肩こりの症状が深刻な時に、10分間パソコンを離れて休憩すればその瞬間は少し楽だと感じることができるかもしれません。しかし、蓄積された緊張感は残っているので仕事に戻るとまた痛みを感じます。

解消するためには、ヨガのポーズやストレッチを行い、原因となる筋肉の緊張感を取り除き、同時に緊張感を生み出しにくい姿勢を学ぶ必要があります。

心のテンションの取り除き方も同様です。

仕事の失敗が怖くて緊張している時に、一晩ゆっくり寝て思考を止めても、翌朝になれば変わらない不安に襲われます。

寝ている状態は一時的にタマス(暗闇)に意識が向いて苦悩さえ見えなくなっていますが、そこには苦悩は存在し続けています。

ヨガでは、深い潜在意識の層に働きかけることによって、心のテンションも取り除いていくことができます。

論理的に物事を考えようとする思考の癖は修正することがとても難しいです。

しかし、ヨガによって思考の働きを弱めて到達できる潜在意識の層は、とても素直で、潜在印象に働きかけたことは深く刻まれ、私たちの思考を根底から修正することができます。

自身の深い部分に出会うことがリラクゼーション

5つのコーシャを表すイラスト
ヨガでは5つのコーシャ(層)について学びます。

それは玉ねぎのようなもので、外側から1枚ずつめくっていくことで内側を知ることができます。

アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)

1番外側はアンナマヤ・コーシャ(食物鞘)と呼ばれ、私たちの身体です。

プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)

その内側にはプラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)という層があり、これは内側のエネルギーの流れです。プラーナーヤーマで呼吸に意識を向けると感じやすいです。

マノマヤ・コーシャ(意思鞘)

次にマノマヤ・コーシャ(意思鞘)があり、これは理屈で物事を考えるような思考の層です。

ヴィジュナーナマヤ・コーシャ(理知鞘)

思考も手放したときにヴィジュナーナマヤ・コーシャ(理知鞘)という知性の層があります。

この状態では混沌とした思考の生み出す妄想に囚われなくなります。

物事を「あるがまま」の姿で見ることができ、真実を知ることができます。

アーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)

1番深い部分にはアーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)があります。

内側には完全なる平穏が広がっていますが、思考・プラーナ・身体の不調によって見えなくなってしまっているのですね。

5つのコーシャを理解し、自分のより深い内面へと意識を向ける

リラクゼーションを感じながらヨガを行ってみよう

リラクゼーションとは、ただ横になって目を閉じることではありません。

すでに蓄積してしまったテンションを取り除くことによって初めてリラックスしたと感じることができます。

ヨガではバランスを整えることによってリラクゼーションを叶えます。

アーサナをしている時に、筋肉が強張っていたところが解放されていく感じに意識を向け、瞑想をしながら心の中にあったドロドロしたものが浄化されていくのを感じてみましょう。

怒りや不安、執着などが弱まった時に感じられる心の中の深い静けさに気が付けると、自分の思考と感情が自由になっていくのを実感できるはずです。

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