薄暗がりの森の中の泉の辺に座って片手を胸に当て、もう一方の手を見ずにつける女性

自分の嫌な感情をヨガで受け入れる

自分自身に自信が持てないと悩む人も多いのではないでしょうか。

自分の長所に目を向けて自分自身を好きになるというのも1つの方法です。しかし、どれだけ良い部分を見ようと思っても、自分の嫌いな部分に気が付いてしまうと、良い部分が霞んでしまって見えなくなってしまいます。

それでは、そんな自分の内側の嫌な感情にはどのように向き合えばいいのでしょうか。

ネガティブな感情は敵ではないと知る

薄暗がりの草むらに潜む蛇
生きにくさを感じた時は、自分の内側に生まれてくるネガティブな感情が原因であることが多いです。恐怖感、怒り、妬み、嫉妬、不安など、不快な感情はとても大きな苦しみとなります。

そのような自分の心の弱さ、ネガティブさにどのように向き合ったらいいのでしょうか?

ヨガ哲学で頻繁に使われるたとえ話に、夜道の蛇についての話があります。

暗闇を怖いと思う人は、夜道を歩いているとそれだけで強い恐怖心を抱いています。

人気のない道を歩いている時に道端に1本の縄が落ちていれば、恐怖心から「蛇がいる」と勘違いをして、怖くて逃げてしまいます。その結果、本当は全く危険ではなかった夜道へのトラウマが強まってしまいます。

では、この状況を解決に導くために必要なものは、ランプを持って歩くことです。

ランプの光が道を照らせば、そこには縄しか落ちていないのだと気が付き、恐怖心は消え去ります。

つまり、恐怖心などの苦痛な感情を手放すためには真実を見るための光が必要です。

ヨガとは、真実を照らすための光そのものです。

自分の心の中の問題を解決したい場合には、自分の心を知る必要があります。それができないと、いつまでも外的な要因を探し、いつまで経っても根本的な問題が解決しません。

夜道が怖いと、昼間にしか外を歩けないという人生の制限が生まれます。このような制限が1つずつ増えると、人生はとても窮屈なものになりますね。

恐怖心は自分を守ってくれる味方

1つずつ自分のネガティブな心と向き合ってみましょう。

恐怖心は私自身を守ろうとしてくれる心の働きです。

心が私という存在を心配して、危険に遭遇しないように防御してくれています。

様々な恐怖症を持った人がいます。高所恐怖症、閉所恐怖症、集合体恐怖症、特定の色に対する恐怖症など様々なものがあります。

多くの場合、過去に経験してことに対してのトラウマが原因となっています。

克服には長い時間がかかりますが、恐怖心を受け入れてあげることは今からでもできます。心はか弱いものですが、自分を防御するために頑張って働いてくれていると理解しましょう。

日常生活に支障がある場合は、少しずつ弱めていった方が良いのですが、恐怖心を一方的に否定すると、自分自身を否定することに繋がってしまいます。

嫉妬心は生き残るために一生懸命だった自分

弟が母親に抱かれていることに嫉妬する少女
周囲の人に嫉妬をしてしまい、他者の幸福を一緒に喜んであげられない時、自分の心の狭さにがっかりしてしまうかもしれません。

そんな時も、自分の心を受け入れてあげられるといいですね。

最も分かりやすいのは姉妹や兄弟関係です。子供の時から、自分の兄弟の成功に妬みを感じて、常に競争関係になってしまうと感じている人も多いのではないでしょうか。

これは、自分の生命を守るための本能です。

このような本能は人間だけのものではありません。

犬を多頭飼いしている時、1匹の犬を可愛がっていたら、他の犬が嫉妬のあまり怒ってしまいます。犬によっては、飼い主が留守の時に他の犬を虐めてしまうこともあります。

これと同じことを私たちも行ってしまいがちです。

子供にとって人生を生き抜くためには、親からより多くの愛情を受け取ることが最も重要です。

自然界、特に犬など複数の子供をいっぺんに出産する動物だと、身体が弱くて親から充分にミルクを与えてもらえない子供は命を落としてしまいます。

つまり、兄弟姉妹よりも多くの愛情を親から受け取りたい本能は、ただの自己中心的な欲望ではなくて、生き延びるための大切な知恵です。

現代の人間社会では、それほど必死に他の兄弟を蹴落とさなくても充分な食事を得られる場合が多いです。それでも、人間という動物に生まれることによって背負った本能はとても強いものです。

子供のうちは本能に近い行動をとることも仕方ないかもしれません。しかし、大人になっても嫉妬心が強すぎると生きにくさに繋がってしまいます。

少しずつ自分の心に向き合って、「周囲の人と勝負して勝たなくても大丈夫なのだ」と気がつくことが大切です。

「私は友人の幸福も素直に喜べない」と苦しくなることもあるかもしれません。しかし、まずは受け入れて、少しずつ克服していこうと前を向くことが大切です。

嫌悪感は嫌な経験を避けるもの

真紅の帽子を目深にかぶる女性
嫌いなものが多い人生は息苦しいですね。

食事に行っても、好き嫌いの多い人と出かけると大変です。「悪い油を使っているファーストフードは嫌だ」「出汁に魚介類を使っていると食べられない」「この国の人は嫌いだから、○○人の料理人がいるお店は嫌だ」と、嫌いなものが多いと人生の選択肢がとても狭くなってしまいます。

健康に悪いファーストフードなどを選択しないのは間違っていない選択でしょうが、アレルギーなどに関係なく単純に嫌いな食材が多い人を食事に招いたりするときは大変です。

ヨガでは、嫌悪感は過去に経験した嫌な経験を避けるための心の働きだと説きます。

嫌悪とは、苦痛に伴う心情である(ヨガ・スートラ2章8節)

たとえば子供の時に厳しい父親の躾に大きな恐怖を感じていたとします。心は、同じ怖い経験をしないために、「これは避けた方が良い」と学習をします。

その結果、「嘘をついてはいけない、宿題は期限内に提出しないといけない」という本来の学びを得られる場合もありますが、「低い男性の声は危険」「背が高くて汗っかきの男性は危険」「貧乏ゆすりをする人は危険」だといった、間違った情報を意識の深い部分に記憶してしまう場合もあります。

そのような記憶は嫌悪感に繋がり、仕事の取引先の人の声が低いだけで「生理的に無理」だと感じてしまうことがあります。

そんな嫌悪感も、自分を守るための心の働きなのですね。

私たちを苦しめる5つのクレーシャ(煩悩)の弱め方

まずは自分の心にしっかり向き合うことで克服する

心の中にネガティブな感情が生まれたら、その不快感から少しでも早く解放されたいと思います。

その結果、根本的な問題に向き合わずに対処療法的な解決をしがちです。

例えば先ほどの嫌悪感の例えであれば、汗っかきの男性に対して感じる不快感を解決するために、「汗っかきの男性には近づかない」という選択をしてしまうでしょう。

しかし、仕事などで人間関係を避けることができない場合、ストレスばかりが増幅します。

「できるだけメールでやり取りをして関わらないようにする、対面するときは顔ではなくてネクタイを見る」など、その場しのぎの方法はなかなか上手くいかないかもしれません。

やはり、根本的な自分の心に向き合う方が良いかもしれません。

ヨガでは自分の心を客観視して、心の問題の原因を探していきます。または、嫌悪感を抱く対象が、本当に自分にとって悪いものなのかを考えます。

自分の心に向き合っていく中で「分かっていてもこれを受けられない自分の心は欠陥品だ」と自己否定をしてしまいたくなる時もあります。そんな時は、心は私という存在を守るために一生懸命なだけだと理解しましょう。

怖がりな自分の心を、小型犬に置き換えて考えてみても面白いかもしれません。

なかなか人になつかない臆病な小型犬は、知らない人に対して必死に吠えて威嚇したり、急に近づこうとすると強く噛みついたりしてしまいます。

そんな臆病な犬と仲良くなるためには、距離を取って、少しずつ慣れていかないといけません。手間のかかる犬ほど、慣れてきたときには愛おしさが溢れてくるでしょう。

自分の心も、様に受け入れて、時間をかけて向き合ってあげたいですね。

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