積み重ねられた石がバランスと保つ様子

調和のとれた生き方を目指す~ヨガ的に生きるため人生の目標「プルシャールタ」~

どんな人生を生きたい?

そう考えることは、とても難しいことですね。

ヨガの生まれた国インドでは、プルシャールタという4つの人生の目標について説かれています。

「こんな職業に就きたい」「年収はこれくらい欲しい」などの具体的な目的ではなく、”そもそも幸せに生きるとはどういうことなのか?”を考えるのに参考にしてみてください。

ヨガ的な生き方を知るのにもとても良い教えだと思います。

4つのプルシャールタの説く良い人生とは

プルシャールタとは人間が人生で追及するべきものです。

プルシャには「魂・原始人・真我」といった意味があり、アルタには「目的、意義、欲望の対象」といった意味があり、プルシャールタは2つの単語を合わせたものです。

インドでは4つのプルシャールタが説かれます。

  • ダルマ:職務、道徳的成就、倫理、秩序
  • アルタ:繁栄、経済的な成功
  • カーマ:喜び、愛、快楽
  • モークシャ:解放、精神的成就

ヨガを学んでいる人であっても、人間としての身体を持って生まれて、社会生活のなかで生きるのであれば、現実的な人生を着実に歩む必要があります。

瞑想だけして生きてゆくわけにもいかないですよね。

プルシャールタは、現実的な人生の指針としてヨガを行っている人にもおススメの考え方です。

それぞれを見ていきましょう。

全体との調和を保つダルマ

積み重ねられた石がバランスと保つ様子
ヨガを勉強している人にとってダルマとは、「自分に与えられた職務・義務」のようなニュアンスで考えられることがあります。

しかし、広くヒンドゥー教の思想でダルマを考えると、「秩序・調和」といった意味でつかわれることが多いです。

また、現代インドのヒンディー語では「宗教」という意味で知られています。

ダルマという言葉は、多くの意味を含んでいるので少し混乱してしまうかもしれませんね。

全体の調和を大切にするダルマ的な生き方

プルシャールタの中でのダルマについて考えてみましょう。

ダルマに従う生き方とは…

  • 世界に生きるあらゆる生命を愛して、平等に幸せに生きられるバランスを見つける。
  • 全体が正しく未来に進むために自分が行うべきことを遂行する。
  • 自分1人のためではなく、周囲と一緒に幸せになる。

ダルマは、全体の調和をとても大切にします。

自分1人だけが幸せならいい、富を自分1人に独占したいという考え方は、ダルマに最も反する考え方です。

例えば、商品を提供してお金を得ることは真っ当な行為です。

しかしお客さんを騙して不当に利益を得てはいけません。商品を受け取った人が幸福を感じられるような、お金を支払った人にも感謝されるような仕事がダルマに従った商売です。

自分も周囲も誰も犠牲にしない。そんなバランスを追い求めましょう。

他人から搾取しない、自己犠牲もしない、この2つを守るバランスが大切です。

ヨガの教え 自分に与えられたダルマ(義務)が何かを考える

  • ヨガの教え 自分に与えられたダルマ(義務)が何かを考える

富や財産を得るアルタ

硬貨を積み重ねる人の手元
アルタは一族の反映や財産、経済的な価値を得ることです。

ヨガをしている人は、どうしてもお金への欲を「悪」だと考えがちですよね。

しかし、お金そのものに問題があるわけではありません。お金に対する執着や大きすぎる欲望、独占欲が問題になってしまいます。

プルシャールタで説かれるアルタ(財産)は、私たちに安全や安心をもたらしてくれるものです。

すでに出家したヨガの修行僧なら、托鉢(寄付)だけで生活できるので、金銭は所有する必要はないでしょう。

しかし、ヨガを教えながら子育てもしているお母さんなら、綺麗ごとだけでは生きていけません。自分と家族を守るために必要な分の富は受け取るべきです。

ダルマに従い、適切な方法で得られた財産は人生を豊かにしてくれます。

ヨガを行っていれば、身体を健康に保つための健康的な食事も必要です。新鮮なお野菜やお米を手に入れるためにもお金は必要です。

夏の暑さをしのぎ、冬の寒さから守ってくれる安全な住居も必要です。豊かな時間を過ごすために、友人と会ったり、余暇を過ごしたりと、人生を楽しむことも大切です。

過度な贅沢は必要ありません。質素であっても心の安定を守れるアルタを目指しましょう。

生きる喜びを感じるカーマ

自分自身をハグしながら嬉しそうな表情を浮かべる女性
カーマは喜びや快楽、愛といったものです。

カーマは依存性が強く、執着をしてしまうと苦しみの原因となってしまうことがあるので少し注意が必要です。

だからと言って、せっかく人として生まれてきたのに、人生の喜びを感じないで生きるのはもったいないですね。

ダルマに従いながら、適切な喜びを受け取ることは人生を豊かにしてくれます。

どれだけ素晴らしい喜びであっても、固執してしまうと苦しみの原因となります。だから、ダルマ(調和・バランス)に従いながらカーマを受け取りましょう。

例えば、自分の健康のために食材は全てオーガニックの野菜にすると決めます。それ自体は素晴らしいことです。

健康的で美味しい食事は誰もが得るべきカーマです。しかし、何かを期待してまで求めると危険です。

農村部ではともかく、都会で健康的な食材はとても高価です。

あらゆる食品の原材料や産地を調べて身体に良い最上ものを摂取するのは素晴らしい試みですが、生活コストが高くなりすぎ、将来のための貯金が全くできないと、家族からの不満が出てしまうかもしれません。

子供は、友達の誕生日パーティーのケーキや、給食にまで「悪い食材が入っている」と母親に反対されてしまうと、かえってフラストレーションが溜まってしまいます。

自分は納得のできる素晴らしい食事ができても、それによって自分の大切な家族が不安や不満を抱えてしまえば、本末転倒ですね。

カーマにはバランスと調和がとても大切です。極端な完璧や、最上を求めすぎると苦しくなることがあります。

良い塩梅での喜びを見つけられると良いですね。

最終的な人生の目標モークシャ

夕日を背に瞑想する人のシルエット
幸せな人生のための最終的な目標は、モークシャ(解脱・解放)であり、あらゆるしがらみからの解放です。

モークシャはヨガの最終目標でもあります。

人間として生まれると、物質的なしがらみは手放すことができません。そのため、私たちは精神的なモークシャを目指します。

モークシャに到達するためには「執着の放棄(サンニャーサ)」が必ず必要です。、

例えばカーマ(喜び)に対して、たまたま手に入れた喜びに幸せを見出すことは良いのですが、そこに執着して快楽を手放さないようにすること、さらに大きな喜びを求めることは苦悩の原因となります。

モークシャ(解放)は何も感じなくなることではありません。

その時々与えられたことに満足し、無いものに固執しないこと、サントーシャ(知足)的な生き方が精神的なモークシャに繋がります。

心が自由になった時、私たちはもう苦しむことがありません。身体が老いること、病気をすること、大事な子供が独立して離れることも恐れず受け入れることができます。

ヨガによって、終わりのない幸福を手に入れることができます。

プルシャールタを意識して生きてみよう

今回はインドで説かれる人生の目的プルシャールタをご紹介しました。

普段ヨガ哲学としてご紹介している内容よりも、かなり現実的な教えだと感じて頂けたのではないでしょうか。

ヨガ哲学を真面目に勉強すると、お金が欲しいことを口に出してはいけないと思ったり、質素な生活をしないといけないと考えてしまったりするう人も中にはいます。

だけど、何でも極端になってしまうと息苦しいですね。

全てはバランスと調和です。エゴが高まってもいけないし、自己犠牲になってもいけません。

自分らしい調和のとれた生き方の参考にしてみてはいかがでしょうか。

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