ヨガのクラスで前腿を伸ばすポーズをとる人々の後ろ姿

怠けていても疲れは取れない?~なぜヨガはリラクゼーションなのか~

「ヨガにはリラックス効果がある」と多くの人が感じていることでしょう。

ところで、“リラックスする”とはどのような状態なのでしょうか?
リラックスしたい時、疲れを取りたい時には何をすればいいのでしょうか?

ヨガはリラクゼーションのツールとして効果的だと体感している人は多いのですが、ヨガでリラックスすることが、どういうことなのかを考えてみましょう。

怠けることがリラックスではない。疲れた時こそ行うべきこと

リラクゼーションが必要な状態はどういった時でしょうか?

仕事でストレスを抱えている時、寝る時間もないくらい忙しい時、悩みや不安があって心が落ち着かない時などが考えられます。

では、その時に人はどのように自分を癒しているのでしょうか?

極端にダラけてみて疲れは取れる?


平日の仕事が忙しいからと、「休日は何もしたくない。ベッドの上でずっとダラダラし、スマートフォンを適当に眺めて気が付いたら何時間も時間が過ぎている。」という経験がある人も多いと思います。

怠ける行為、ダラダラ怠慢に過ごす行為は、ヨガではタマシック(鈍質)であると考えられます。

疲れが溜まっている状態もタマシックな状態であり、心と体がタマシックな時には、さらにタマシックな行為を求めがちです。

例えば、だらだらとスマートフォンやテレビ画面を見ること、スナックやお酒を摂取することです。

しかし、これらのタマシックな行為は、効果的なリラクゼーションとは言いにくいです。

休日にベッドから1歩も出ずに寝すぎて余計に疲れてしまったり、身体が重たくなってしまったりする経験がある人も多いと思います。

睡眠はとても大切ですが、過度な睡眠はかえってタマス性を上げてしまいます。

忙しかった週の最後には、ダラダラと過ごす時間が至福だと感じる人も多いと思いますが、節度を持って休むことが大切です。

食べすぎる者にも、全く食べない者にも、睡眠をとりすぎる者にも、不眠の者にも、ヨガは不可能である。(バガヴァッド・ギーター6章16節)

忙しい人ほど、さらにアクティブに動いてリラクゼーションを感じる


面白いことに、社会的な責任が重たく、忙しく仕事をしている人ほど、さらにアクティブに行動して自分をメンテナンスしている傾向があります。

ニューヨークや東京などの都心で多くのビジネスマンが早朝から激しいランニングやスイミングを行い、忙しい人ほどアシュタンガ・ヨガのようなアクティブで厳しいヨガに没頭するのです。

もともと忙しいはずなのに、わざわざさらに疲れるような激しい運動を行うのはなぜでしょうか?

科学的にはセロトニンの分泌などで精神状態が良くなることが言われていますが、ヨガ的にも考えてみましょう。

リラクゼーションのコツは心の休止にあった

多忙な時に、わざわざ運動やヨガを行うことで疲労が解消されると感じるのはどうしてでしょうか。

ヨガでは思考の習慣を変えることがリラクゼーションの鍵だと考えます。

ヨガとは心の働きを止滅することである。(ヨガ・スートラ1勝2節)

教典『ヨガ・スートラ』でも、ヨガは思考の働きを止めることであると定義しています。

私たちの思考は、無意識に働き続けていますが、不安や恐怖などの感情を抱くとそこに意識を集中して興奮状態が収まらなくなってしまいます。

その結果、身体はベッドの上で横になっていても神経は休まることがなく、疲労が続いてしまいます。

ヨガでは、思考の働きのパターンを断ち切ることによって、ストレスからの解放に導くことができます。

これは、ジョギングなどのワークアウトをしている時にも同じです。

とてもアクティブでヨガとは別物のようですが、心の切り替えという意味では同じような効果があります。

わざわざ思考を止めようとは考えていなくても、ランニングなどの激しい運動中には日常考えているような思考のパターンは休止しています。

特に社会的な責任が重たい人には心的なプレッシャーが強くのしかかりますが、仕事上のトラブルがあっても24時間そのことについて考え続けていては思考が休まりません。

思考がアクティブになっている時には、休もうと思ってもなかなか心が穏やかになりませんが、ランニングやウエイトトレーニング、スイミングなど、呼吸が制御され考え事ができないような運動を行うことで、ダラダラと働き続けていた思考をストップすることができます。

自分ではなかなか断ち切れない思考のパターンを、身体を動かすことで切り替えることができます。

忙しく沢山の仕事が与えられている人ほど、思考のオンとオフの切り替えがとても大切です。働き続けて電源を切り忘れた思考は、かならず疲労の蓄積で問題が出てきてしまいます。

同じヨガをしていても心が定まっていないと余計に疲れる


ところで、ヨガや運動によってリラクゼーションを得るために最も大切なことは、自分が楽しんで行っているかです。

ヨガでは「何をするか」ではなく「どのように行うか」が最も大切です。

例えば、仕事のストレスが大きい人がリラックスしたいからと陰ヨガのクラスを受けたとします。

ポーズのホールド時間が長いヨガを行っている時に、身体はヨガのアーサナを行っていても、心の中で仕事の心配事が忘れられず考え続けていたら、身体はストレッチされても心は休まらないままです。

そのように思考のパターンが忙しすぎる人は、ヴィンヤサのように呼吸に合わせてポーズを変化し続けるヨガの方が、かえってリラックスできる可能性があります。

逆に、睡眠不足で身体が疲れていて動くのが本当にシンドイと思っている時にハードなヨガを行い「早く終わらないかな」と考え続けていれば、それは無理をしているだけになってしまいますね。

大切なのは、自分が楽しんでヨガに集中できているかです。

ヨガは日常の生活に休止を設ける時間です。職場や家庭のことを忘れて、没頭できるヨガを行えると、それが最高のリラクゼーションになります。

ヨガのクラス中には「このポーズ難しい」と必死になっていても、終わった後に頭の中が爽快だと感じることができれば、ヨガの恩恵を充分に受けることができています。

心のパターンを変えるのには呼吸が効果的

具体的に、どのようなヨガのアプローチがリラクゼーションに繋がるのでしょうか。

心の中に緊張や不安や恐怖、怒りなどのストレスがある時には呼吸を使ったヨガが効果的です。

気が動くと心も動く。気が動かなければ心も動かなくなる。ヨーギーは不動心に達しなければならない。だから、気の動きを制止すべきである。(ハタヨガ・プラディーピカ2章2節)

私たちの心の働きと呼吸はリンクしています。

例えば、怒りなどの粗い感情が激しくなっている時には呼吸も粗くなりますし、緊張して思考が上手く働かない時には呼吸も浅くなり、止まりがちです。

心をリラクゼーションするためには、呼吸を深く穏やかにすることが効果的です。

呼吸をコントロールするプラーナーヤーマ(調気法)の実践では、自然に恐怖心なども弱まります。

梵天を初めとする神々も、死に対する恐怖から、調気法の修練に没頭したのである。(ハタヨガ・プラディーピカ2章39節)

恐怖心が無くなることで初めて安心して休むことができます。

心が穏やかにならない時には、深い呼吸をしてからベッドに向かうことで、睡眠の質も格段に良くなります。

座って呼吸だけを行うプラーナーヤーマが苦手な人も、ポーズの練習のときに深い呼吸を意識すれば同じような効果を得ることができます。

楽しんで心の疲れを解消しましょう

すでに述べたとおり、疲れたからと週末にダラダラとベッドの上で過ごしたり、お酒を飲んだりしても疲れは取れにくいです。

アルコールを飲むと一時的にストレスの原因を忘れることでリラックスできた気がしますが、一時的に嫌なものに蓋をしているだけでは根本的な解決にはなりません。

心のリセットをするヨガの時間で、しっかりと思考を休めて、深いリラクゼーションを感じる時間を楽しむのがおすすめです。

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