増田拓さんご自身とサッカーチームの円陣と一人の選手がヨガをする写真

【増田拓さんインタビュー後編】スポーツ選手とヨガとの関係とは?

前回に引き続き、日本車いすテニスナショナルチームトレーナーの増田拓(ますだ ひろし)さんのメディカルトレーナーのお仕事に、ヨガがどのように活かされているのか聞いていきます!

前編のインタビューはこちらの記事をご参照ください。

【増田拓さんインタビュー前編】メディカルトレーナーが語るパラスポーツとヨガ

メディカルトレーナーがヨガと出合って気づいたこと

増田さんはどのようにヨガと出合ったのですか?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
ある日、串本くんの家に行った時にヨガの本がたくさん置いてあって、興味本位で数冊借りました。

あっ!僕がきっかけだったんですね(笑)
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
元々自分のヨガの認識は「東洋医学寄りで、古くからあり、身体を動かすもの」という感じでした。

本を読んでみたら、ヨガは身体を動かすだけでなく「心」も大事にしていることがわかり、ヨガの精神世界ってとても良いものだと思いました。

実際に色々ヨガレッスンを受けられたんですよね。
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
「ヨガはポーズを真似するだけではダメなんだ」「ポーズだけでなくメンタルもコントロールする必要がある」と気づきました。

インストラクターの方々はヨガの世界観を伝えるのが非常に上手で、「スポーツで身体を動かした後の達成感」とは違う達成感がありました。

ヨガマインドで「いかに自分と向き合うのか」を考える

ヨガマットに座る男性の後ろ姿

ヨガの気づきを現場で活かしたりはしていますか?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
ヨガのマインドを患者様や選手に伝えるようにしています。いかに自分と向き合うのが大事なのかと。
運動指導の仕方が変わったというよりかは、考え方が変わったという感じ?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
そうですね。自分の立ち位置が変わったと思います。

「理学療法士と患者」「トレーナーと選手」という関係なので、以前は自分が前に出て引っ張るという立場でしたが、現在は同じ立ち位置で一緒に進むという考えになっています

ヨガに出合うまでは、僕が患者様や選手へ「教える」という感覚でした。ヨガのマインドを参考にすることで、患者様や選手に自分自身のことを考えてもらうように促して、僕がそれをサポートするという考えに変わりました。

スポーツ選手がヨガをする目的・意味とは

テニスラケットにボールを乗せる車椅子の選手

テニスの世界大会でもヨガを取り入れていたと聞きましたが、選手の反応は?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
まず背景としてコロナ禍というのがあります。テニスは各国で行われる世界的スポーツで、コロナ感染拡大地域を渡航する度に、選手を一定期間隔離せざるを得ない状況にある。その為、大会側が選手に対して健康管理やメンタルヘルスの指導をしており、その1つにヨガがありました

選手によっては一定期間の隔離は相当な精神的なストレスがかかります。そのような状態でヨガをすると身体のコンディションを整えられますし、特に精神面のコントロールができていると実感しました

大学サッカーの選手達はどうですか?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
こちらから促しているわけでもないのに、選手自らが練習外でヨガのレッスンを受けています。

有名なサッカー選手もヨガを取り入れているのが認知されつつあり、スポーツ選手がヨガをする時代になっているのだと思います。

これまではパフォーマンス向上のため筋力トレーニングやフィールドトレーニングなどで「身体を鍛えること」に目を向けられていましたが、ヨガで「自分と向き合う、自分を振り返る」ことの重要性が浸透してきているのではないでしょうか

なのでこの記事を読んでいるヨガ指導者の先生方も、アスリートを指導する機会がこれから増えてくると思います。

スポーツ選手にとっての理想の環境とは

一人でテニスコートに佇む車椅子の選手

有名選手が行うことで、情報が広まってヨガが浸透しますよね!

増田さん自身は、ヨガによって選手との向き合い方がどのように変化しましたか?

串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
テニス選手は、コート上では誰にも頼ることなく一人で競技しなくてはなりません。なので送り出す側としても、選手には試合に集中するために不安や雑念など何も持ち込まない環境を作ってあげたい。

ただ試合をするだけの精神状態を作るように心がけています。何か不安なことがあるとそちらに意識がいってしまいそれがプレイに影響が出てしまう。

ヨガでいう「無心」に近い状態を作って試合だけに集中してもらう?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
できるだけ「無」の状態を作って雑念を無くすようにしています。これはヨガの考えが影響していますね。

僕は、選手に普段から自分自身と向き合うように話をしています。こうすることで大一番の試合でも平常心を保つことができると考えています。

スポーツ選手がヨガを行うメリットですね。
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
普段から余計なことは考えずに自分に集中することで、試合で最高のパフォーマンスが出せるようになります

特に大会になると、観客もメディアも入るので目から耳からいろんな情報が入ってきます。それをシャットアウトして自分に集中できるかがポイントです。

ヨガの資格を取りたい人や現在ヨガを指導している人へ

コブラのポーズをとる男女と指導するヨガインストラクター

最後に、ヨガの資格を取りたい人や現在ヨガを指導されている人へ、身体のスペシャリストである増田さんからアドバイスをいただけますか?
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
リスク管理をする上で、解剖・運動学を必要最低限学ぶことも大事です。しかしそれ以上に、ヨガの世界観を学んで実践練習もしたほうが良いと思います。

以前レッスンを受けた先生は、解剖学の言葉を使わずに上手に指導されていました。僕は筋肉や骨の名称を使わずに指導するほうがなんか好きでしたね。

だから、最低限の解剖学を学んだら、いかに参加者にわかりやすく伝えるかキューイングの練習をしたほうが良いと思います

理学療法士だから解剖学を学んで欲しいというよりかは、より深くヨガを学んだほうが良いって感じなんですね。
串本操プロフィール画像

増田拓プロフィール画像
増田拓プロフィール画像
解剖学を深く学んでも良いと思うんですけど、身体に特化したら理学療法士とかと被りますからね(笑)

ヨガ指導者にはもっとクラシックなヨガを参加者のみなさんに提供してほしいと思います。

僕もいまサポートしている選手とともに色々な目標があります。ぜひ一緒に頑張りましょう。チームの応援もよろしくお願いします!

いつもは解剖学をベースに「身体」のことをお伝えしていましたが、今回は車いすテニストレーナー増田さんのインタビューをお届けいたしました。

増田さんのお話が皆さんのヨガライフの新たな気づきとなりましたら幸いです。