ソファに座って腹部を押さえる女性

五行から学ぶ心と体の整え方~月経による不調の改善~

女性の約40%に月経前症候群(PMS)が現れると言われています。

その症状もさまざまであり、頭痛、疲労感、不眠症、手足の浮腫、乳房の腫れ、お腹が張る、動悸・吐き気などの肉体的な不調から、気分が塞ぐ、気が変わりやすくなる、イライラするなどの精神的な不調まで十人十色です。

不調が現れる時期も、月経前の人もいれば、月経中の人もいます。

そこで今回は、卵胞期、排卵期、黄体期に分けて、東洋医学の考えに基づく不調との付き合い方をお伝えします。

月経と不調の関係

月経痛の原因を東洋医学の視点から見ると、冷え(寒邪の侵入)、血と気の滞り、血と気の不足、熱の影響などが挙げられます。

不通則痛(通じないと痛む)、不栄即痛(栄養が不足すると痛む)という考え方が東洋医学にあり、シンプルなことですが、しっかり栄養を与え、気と血の巡りを良くすることが、とても大切です。

思い悩んだり、憂鬱な気分になったり、感情の乱れが激しい、こういった精神面の乱れによっても、気の巡りが悪くなり、血の巡りも悪くなり、痛みを生じます。

特に、「肝」・「腎」・「脾」、この3つの臓が月経と関係してくるので、これらの臓の巡りが滞ると月経痛を生じます。

五行では、「肝」は「怒り」の感情、「腎」は「恐れ」の感情、「脾」は「思い悩む」ことと関係しています。

黄体期(排卵後から月経まで)

卓上カレンダーに赤丸を書き込む女性
排卵が終わった後の高温期が黄体期(約14日間)になり、黄体期が終わると月経が始まります。

約40%の女性が悩む月経前症候群(PMS)は、この黄体期に起こります。

この時期はプロゲステロンの分泌が増え、体温が上がります。

黄体期の前半は皮脂の分泌が盛んになり、ニキビなどの肌のトラブルが目立ちます。さらに黄体期の後半に入ると、エストロゲンの分泌が減り、プロゲステロンの分泌がさらに増加し、イライラしやすくなります。

この時期の東洋医学的セルフケアは、「腎」を補い、子宮を温める「補腎暖宮」と、「肝」の機能を高めて、気の巡りを良くする「疎肝理気」です。

血の滞りによる、肩こりや便秘、胸が張るなどの症状を緩和させます。

月経前に、物忘れが激しくなる、不安な気持ちが強くなる人といった症状が気になる人は、「腎」を強くしてあげると良いです。

「補腎暖宮」の食材は、にら、唐辛子、山椒、黒胡麻、松の実、くるみ、黒砂糖、鶏肉、羊肉など、「疎肝理気」の食材は、蕎麦、大根、かぶ、パクチー、大葉、みかんなどです。

月経前に顎の下にニキビができる人は、下腹部の血流が悪い可能性があるので、下腹部を温めましょう。特に、おへそから指4本分下の辺り、「関元」という元気を養い、月経を調節するツボを温めましょう。

また、「肝」の気の巡りをよくする為に、股関節のストレッチがおすすめです。「肝」の経絡は、太ももの内側を流れ、栄養を子宮に届けています。

四股を踏むポーズ、ヨガの馬のポーズが、「肝」の気の流れを促します。

特に、デスクワークの時間が長い方は、骨盤内臓器の血流が悪くなりやすいので、股関節のストレッチを日々のルーティンにすると良いでしょう。

卵胞期(月経の始まりから排卵までの間)

白いおりもの用パッド
卵胞期の始まりは、月経の始まりになります。

子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンの影響で頭痛、肩こり、腰痛、吐き気、胃腸の不調が起こりやすくなります。

東洋医学では、「古血」があると「新血」が生まれないと考えるため、月経期は、子宮内の「古血」をしっかりと排出することが大切です。

卵胞期は「陰」の時期なので、しっかり睡眠をとり、ゆったりとした生活を送り、体を労わりましょう。

月経期は、全身の気と血が子宮に集まる為、体表を巡り体を守る気である「衛気」が少なくなります。その為、邪が体に入りやすくなり、風邪を引いたり、内臓の機能が低下したりします。

月経の時に体調を崩しやすい人は、膝の内側、お皿の上のあたりをマッサージしたり、温めたりしましょう。「血海」という月経を調節するツボがあります。

月経が終わると、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が最も多くなります。

卵巣から分泌されるエストロゲンは、女性の体調を整えてくれる大切なホルモンで、心身ともに最も調子が良くなります。

この時期に調子が悪い場合は、ホルモンバランスの乱れがあるかもしれません。

また、月経後は、おりものの量が増えます。

おりものが、あまりにも水っぽい場合は、「脾」が弱り、水分の代謝が悪くなっている可能性があるので、脂っこいもの、甘いもの、冷たいものを控えて、「脾」を整えましょう。

レバー、ほうれん草、にんじん、ぶどう、牡蠣などの貝類 山芋 鶏肉 豚肉などを食べ、「腎」と「肝」を元気にすることが月経時の不調を和らげます。

排卵期

豚肉と卵とアスパラガスとホウレン草
排卵日は、月経の初日から数えて約14日前後になります。この時期は、陰から陽への転換期になります。

陽を生み出す為には、陰が必要になる為、陰である血や精が満たされている必要があります。

松の実、豚肉、卵、ほうれん草、アスパラガス、黒胡麻などを食べ、無理なダイエットはしないようにし、排卵日の陰陽転化がスムーズに行われるようにしましょう。

日頃からセルフケア

月経痛で悩む方は多く、自分も毎月辛いという方もいらっしゃると思いますが、鎮痛剤に頼りすぎず、日々のセルフケアで月経痛を少しずつ解消していきましょう。

1番大切なことは、足を冷やさないようにすることです。

足が冷えると、足から下腹部に繋がっている「肝」の経絡を通じて下腹部が冷え、血の滞りがおこります。特に、足首を冷やさないようにしましょう。

また、お腹を温める方は多いと思いますが、お尻も温めましょう。仙骨全体を温めてあげます。八髎穴という8つのツボがあり、骨盤内の血流を改善してくれます。

精神的な不調が特に強いという方は、胸の真ん中、ヨガでいうとアナハタチャクラの辺りにある「膻中」というツボと、足の甲、第1指と第2指の骨が交わる辺りにある「太衝」というツボを指圧してあげましょう。

「玫瑰紅花茶」という、気血の流れを抑止、ストレスによるため息、胸脇の痛み、生理痛などの改善する薬膳茶もおすすめです。

参考資料

  1. カラダを考える 東洋医学 伊藤剛/朝日新聞出版
  2. 実用 中医薬薬膳学 辰巳洋 著/東洋医学術出版
  3. 薬膳の基本 辰巳洋/緑書房
  4. ビジュアル版東洋医学 経絡・ツボの教科書 兵頭明監修/新星出版