紅葉の木々の中でハンモックに横たわり口元からマスクを外す女性

五行で紐解く心と身体のケア~秋は浄化に最適な季節~

燦々と太陽が照る季節から、月が皓皓(こうこう)と輝く季節へと移り変わり、徐々に陰のエネルギーが高まる『秋』。木の葉が色づき、そして落ち葉となり、朽ちていく季節です。

何となく寂しさを感じる人も多いのではないでしょうか。

『秋』は、木、火、土、金、水の中で『金』に属します。

五臓六腑では『肺』と『大腸』が『金』に属し、五志の中で『憂』が『金』に属します。

『肺』が弱くなると、元気がなくなり、風邪をひきやすくなったり、乾燥しやすくなったり、悲しくなったり、憂うつになったりします。

この時期は、『金』に属する『肺』と『大腸』を元気にしてあげることが、健康維持に繋がります。

浄化の季節

『金』の特性から考えると、『秋』は、浄化に最適な季節です。

『金』には、「従革(あらたまる)」という特性があり、変革や革除の意味があります。

自然界を見てみると、広葉樹は、『秋』になると、必要なものを葉から幹に取り込み、そして、余分なものを葉に含ませて、落ち葉として外に出し、冬に備えます。

不要になったものをそぎ落とす、浄化を行っているのです。

自然界の一部である私たちにとっても、『秋』は、ヨガのポーズや瞑想を通して、心と身体の浄化を行うのに最適な季節です。

『金』の特性と『肺』と『大腸』

グレーのTシャツを着た女性と肺と大腸のイラストのクロスイメージ
『肺』には、「宣発」という働きがあります。

「宣発」は、広くいきわたらせる「宣布」と、外へ散らす「発散」という意味で、この「宣発」の働きによって、気や水分が上へ、外へと巡っていきます。この「宣発」の働きが弱くなると、汗が出なくなったり、皮膚が乾燥したりします。

さらに、外界との境目となる皮膚から外邪が入らないように守る、「衛気※1」が皮膚まで届かなくなり、邪が身体に入りやすくなります。

また、『肺』には「粛降」という働きがあり、不純なものを取り除き、清める「清粛」と、金属のように重く沈む「下降」を意味します。

呼吸によって清い気が体内に取り込まれ、気を下降させる働きによって深い呼吸になります。

「粛降」の働きが弱くなると、気が上がり、咳が出たり、深い呼吸ができなくなったりします。

「宣発」と「粛降」の働きがお互い協調して働くことで、吸う息、吐く息のバランスが保たれ、このバランスが崩れると、喘息や息切れなどが起こります。

また、「粛降」の働きが弱くなると排泄物を下に降ろす力が弱くなり、便秘になってしまいます。便秘になると、肌が荒れやすくなることは、五体の中の『皮』が『肺』と『大腸』と同じ『金』に属していることからも納得できます。

また、便を作り排泄する『大腸』の働きは、呼吸の働きによって助けられているので、『肺』と『大腸』は、経脈を通して連絡し、お互いに支え合っています。

  • ※1 衛気:衛気とは、皮膚や鼻・気管支などの粘膜細胞を強化し、免疫力を整え、外的刺激から体を守ること。体表を保護する気。

『金』に属する『皮』『鼻』『憂・悲』『辛』

『皮』

『皮膚』、体毛、汗腺などの組織を合わせて『皮毛』と言います。

『皮毛』は、『肺』によって運ばれた「衛気」という守る気と水分によって、外邪が侵入するのを防ぎ、体温の維持や水分の調節を行っています。

『肺』の機能が正常であれば、『皮膚』の状態が良く、外邪の侵入に抵抗する力が強くなります。一方で、『肺』の機能が弱まると、『皮膚』の乾燥、かゆみがおこります。

また、汗腺は、汗を排泄するだけでなく、体の外と内の気を交換しているため、「気門」とも言われています

『鼻』

『鼻』は、『肺』と体外をつなぐ器官なので、『肺』の機能が弱まると、鼻づまりや鼻水が出やすくなり、呼吸や嗅覚にも影響を及ぼします。

『憂・悲』

『悲しみ』や『憂うつ』な気持は、気の停滞をおこし、気を全身に巡らせる『肺』の働きに影響を与えます。また、『肺』の気が少なくなると、『悲しみ』やすくなります。

『辛』

『辛味』は、発散させる働きがあるので、適度に摂取すると、『肺』と『大腸』の機能に良い影響を与えます。

心と身体に潤いを与えよう

蓮根と梨と柿
『肺』は、臓器の中で1番上にあるので、外邪の影響を受けやすく、とてもデリケートであり、乾燥を嫌い、潤いを好みます。

乾燥による邪、「燥邪」に攻撃されると、咳や痰、喘息などの症状が起きてしまうので、心と身体に潤いを与え、乾燥しやすい季節を快適に過ごしましょう。

秋の始まりは、まだ身体に夏の熱が残っているため、その熱と乾燥によって、喉が痛くなったり、鼻血が出たりします。

熱を清め、『肺』を潤す食材、蓮根、松の実、白ごま、黒ごま、柿、梨、豆腐、貝類を食べることがおすすめです。

参考資料

  1. 中医学基礎理論 上海中医薬大学附属日本校
  2. 臨床に役立つ五行理論ー慢性病の漢方治療ー 土方康世著/東洋学術出版
  3. 新版 東洋医学概論 教科書検討小委員会著/公益社団法人 東洋療法学校協会編/医道の日本社
  4. 実用 中医薬薬膳学 辰巳洋 著/東洋医学術出版