両手を広げて深呼吸する女性

『執着』『思い悩むこと』からの解放~五行から学ぶ心と身体のメンテナンス~

最近、思い悩むことが多い、思考がまとまらない、何かに執着している、胃がもたれる、食欲がない、重だるい….。

こんな、症状が気になる方は、『土』と関係する『脾』のエネルギーを整えましょう!

自然界の様々な現象を木・火・土・金・水の5つの性質に分類し、その関係性を考える古代中国の哲学理論、五行学説。

人は自然の一部であり、人の中にも自然が存在しています。人の心と身体は自然の影響、季節の変化の影響を受けながら、その変化に対応し、絶妙にバランスをとっています。

夏の陽の気から秋の陰の気へと変わっていくこの時期、五行で考えると『火』から『土』の季節へと移り変わっていきます

四季に、夏の終わりにかけての『長夏(ちょうか)』をプラスして五季として捉えるのが五行の考え方。『長夏』は『土』に属しています。

7月の終わりから9月の始め、大暑、立秋、処暑、白露の4つの節気間を長夏と言いますが、実際の日本の気温や湿度を考えると、9月に『長夏』が属する『土』のエネルギーを整えることが大切になります。

五行で『長夏』と同じ『土』に属するのは、『脾』、『意』、『思』、『口』、『肌肉』、『唇』、『甘』です。

『土』とメンタルと『脾』の関係


東洋医学には、五神、『魂』、『神』、『意』、『魄』、『志』という、もともと、身体に備わっているメンタルの働きと、五志、『怒』、『喜』、『思』、『憂』、『恐』という外界からの刺激に反応するメンタルの働きがあります。

『土』に属するのが、『意』と『思』です。

『意』とは、思考、推測、注意力、記憶などの精神的な活動のことをいいます。

脳に気や血によって栄養が与えられることで、この精神的な活動が正常に行なわれています。もし、『脾』の働きが弱くなると、思考が止まらなくなってしまいます。

『思』とは、思う、考えることを指します。

これは、気の動きを滞らせる特徴があるので、何かを過度に考え込むと、『脾』の働きが衰えて、食欲不振や意欲の低下が起こるのです。

また、反対に『脾』の機能が低下すると、思い悩みやすくなります。

『脾』は気・血をつくる源


では、何故、『脾』の働きが弱まると、思考がまとまらなくなったり、思い悩みやすくなるのでしょうか?

それは、『脾』が気や血をつくり、脳に栄養を与える働きがあるからです。

『脾』には、運化という働きがあり、食べたものを水穀の精微という、気や血を作る材料へと変化させているのです。つまり、全身の気の量は、『脾』の機能に左右されます。

また、水分を吸収して、水分の停滞を防ぐのも『脾』の仕事です。

この働きが悪くなると、消化力が衰え、食欲不振となり、水穀の精微が不足し、気や血が不足してしまいます。さらに、水分をうまく吸収できず、体内に停滞するので、重だるさが生じます。

『脾』と自然界の繋がりを考えてみると、長夏は、気候が変化する時期であり、多湿な時期です。

『脾』は、食べた物を気や血に変化させると共に、水分と密接な関係があり、長夏の気候変化は、『脾』の働きや特性と似ているため、『脾』の機能が影響を受けやすいのです。

統血:血をまとめる働き

私たちの身体は、気の働きによって血が脈から漏れ出ることなく保たれています。

この働きを統血と言い、『脾』の働きが弱くなると、食べた物から気を作ることができなくなってしまい、統血の働きが弱まり、血が脈から漏れ出てしまうのです。

その結果、血便、血尿、不正出血、皮下出血が起こるのです。

昇清:『脾』は上昇志向?

『脾』は、気を上へ上昇させます。気や血を作る源の水穀の精微を上昇させ、そのあと全身へと気が巡ります。

この、『脾』の昇清の働きが衰えると、頭部に栄養が行き届かず、めまいや頭痛、そして、全身性になると、倦怠感が起こります。

また、内臓下垂も昇清の働きが弱まることで起こるのです。

喜燥悪湿:乾燥を喜び、湿気を嫌う

『脾』は、水分をさばく場所なので、常に水分が多くなりやすく、陽気(燥)のサポートを受けて、正常に働いています。その為、乾燥を好み、水分を嫌う特性があるのです。

陽気が不足すると、『脾』の働きが衰え、軟便や下痢になります。冷たいものを飲んだり食べたり、雨による多湿な環境も『脾』の働きのマイナス要因になります。

『土』に属する『口』への影響

『脾』の働きが弱まっていると、口の中を十分に潤すことができず、口が渇き、味覚が鈍くなります。

『土』に属する『肌肉』『唇』への影響

肌肉とは、真皮と筋肉のことを指し、『脾』が働かないと、手足の肌肉に栄養が行き渡らず、無力感や萎縮が起こります。

また唇の乾燥も、『脾』の機能の低下で起こります。

『土』に属する『甘』

甘みは、調和させる、ゆるめるなどの働きがあるので、甘いものを程よく食べると、『脾』や『胃』の働きを整えます。

しかし、食べ過ぎると、甘味にはねっとりとした性質があるとされている為、食べ物を吸収し、気や血を作る、運化に負担をかけてしまい、『脾』を弱めてしまいます。

『脾』を調える食


『脾』を調えるには、冷たいもの、生もの、甘いものは控えめにしましょう。

また、あずき、大葉、大根、ジャスミン、とうがん、生姜などが『脾』が嫌う湿を少なめに。

いも類、椎茸、グリーンピース、とうもろこしなどが『脾』を元気にしてくれます。

次回は、『土』に属する『脾』と『胃』の経絡とツボについてお伝えします。

参考資料

  1. 中医基礎理論 上海中医薬大学附属日本校
  2. 新版 東洋医学概論 教科書検討小委員会著/公益社団法人 東洋療法学校協会編/医道の日本社