海辺で瞑想をする女性の後ろ姿

【東洋医学】五行の理論から学ぶヨガ的な夏の健康法

古代の叡智、五行学説を日常生活やヨガクラスに取り入れて、自然界と調和し、この夏、心も身体もより健康に過ごすためのエッセンスとする方法をお伝えします。

始めに五行のおさらい

自然界の現象を木・火・土・金・水の性質に分類し、その関係性を考える古代中国の哲学理論を五行学説といいます。

例えば、雨が降れば、植物の芽が出て、その植物が育ち、『木』になります。そして、木が燃えると『火』が起こり、火が燃えると灰となって『土』に還り、土から鉱石が出て金属、『金』が生まれます。その金属に朝露が着いて『水』となり、水が点に昇り雨となって降り注ぎます。

これが、木・火・土・金・水の流れで、この五行学説は、人と自然の関係性を説明する基礎となります。


五行説を人と自然の関係性を説明する基礎
五行説を人と自然の関係性を説明する基礎

木・火・土・金・水と臓腑、季節、感情の関係が、上の表のようになっています。夏のキーワードは、『火』、『心』、『喜』です。

東洋医学における夏と関係の深い『心』の働きとは

血脈を主る(つかさどる)

中国の古典医学書『諸病源候論』には、『心は血を主る。血の身を行く、経絡を遍く通り、臓腑を循環す。』と書かれています。

これは、『心』の働きが、血液の流れを推進し、血液循環の原動力となっているという意味です。『心』の気・血・陰・陽のバランスが整っていると、心臓が正常な拍動を保つことができます。動悸は、『心』の気・血・陰・陽のバランスが乱れていることが原因になります。

また、『心』は、血液の生成にも関わっているとされます。食べたものは、『脾』、『胃』で消化吸収され、『心』と『肺』に送られて、気の働きによって、血が作り出され、『心』は血を赤くする作用があるとされています。

神志を主る

『心が神を蔵す』と考えられており、ここでいう『神』とは、精神活動の総称を現しており、『心』が精神活動を管理しているということです。

例えば、血が不足し、『心』を養うことができないと、心神不安、精神状態は落ち着かず、不眠になるという考えです。

喜びは、心の志にある

『心』の生理機能は、精神活動の『喜』と密接な関係があります。喜びは、心身に良い刺激となり、血液の流れを促進するので、『血脈を主る』という『心』の生理機能に良い影響を与えます。

ただし、喜び過ぎると、『喜傷心』という状態になり、心神を損なうことになります。喜び過ぎて、『心』神志を主るという、精神活動を管理する機能が過度になると、笑いが止まらなくなってしまいます。

逆に喜びが少ないと、精神活動を管理する機能が低下し、悲しい気持ちになりやすくなります。

程よい喜びが『心』を整えてくれます。

古代の叡智から学ぶ夏の健康法

自然の中で深呼吸をする女性
夏は、立夏から小満・芒種・夏至・小暑・大暑の6つの節気を経た、5月〜7月の3か月をいいます。

降り注ぐ天の気と昇る地の気が交わり、天候が順調だと、植物は花を咲かせ、実をつける季節になります。この自然界の成長や実りに合わせて、人間の身体は、陽の気の成長が一番盛んな時期になります。降り注ぐ太陽のエネルギーが、アクティブになるように導いてくれるのです。

広がりの季節、新たな挑戦をするのにぴったりです。

現存する中国最古の医学書『黄帝内経』から学ぶ夏の過ごし方

自然の中でヨガをする男女
日の出から日没までの時間が長いですが、怠けないようにするのが良いとされています。冷房の効いた室内にこもるより、適度に運動をして、汗を流すように心がけることが大切です。

五行で『汗』は『心』と同じ、『火』に属し、『心』によって発汗がコントロールされています。気分的にも、内にこもるよりも発散するような気持ちで過ごしましょう。怒ると『心』の気を傷めてしまうので、穏やかな気持ちも大切です。

夏に、熱を発散しないと、胸に熱がこもり、秋になって、肺が働く季節になると、肺がその熱によって乾燥されて、痰の少ない乾いた咳が出るようになってしまいます。

夏は、胸を意識した瞑想、ポーズ、呼吸法によって、胸の滞りを解消してあげましょう。

胸にあるエネルギーポイント

胸の真ん中には、『膻中』という『心』と密接に関係するツボがあります。『膻中』は、気が会う場所なので、『気会』ともいいます。気功では、肉体と精神の通り道で、エネルギーを洗練する場所である『中丹田』にあたります。

壇中のつぼの位置を示す人体骨格のイラスト
アナハタチャクラやフリダヤマルマと同じ位置になり、東洋医学、アーユルヴェーダ、ヨガ、どの観点からも、胸の真ん中の巡りを良くすることが健康維持に大切です。

次回は、ヨガに活用できる『心』の経絡と『心』とペアになる『小腸』の経絡について詳しくお伝えします。

参考資料

  1. 中医学基礎理論 上海中医薬大学附属日本校
  2. 実用 中医薬膳学 辰巳洋 著/東洋医学術出版
  3. 初めて読む人のための 素問 ハンドブック 池田政一 著/医道の日本社
  4. 初めて読む人のための 霊枢 ハンドブック 池田政一 著/医道の日本社
  5. アーユルヴェーダとマルマ療法 上馬場和夫 西川眞知子 監訳/デイヴィッド フローリー・スバーシュ ラナーデ・アヴィナーシュ レーレ 共著/産調出版