もう一度、そしていつも考えてみよう「呼吸をする」ということ

一日に約2万3000回

改めて言うまでもないが、ヨガのクラスで呼吸は何より大事だ。「呼吸を意識できれば、それだけでもうヨガだ」と言う先生もいるほどで、実際にそうなのだろう。

成人では、1分間の平均的な呼吸の回数は12〜20回だという。平均的に16回だとして、1時間では960回、1日では23,040回となる。このうち、意識的に呼吸をしているのはどのぐらいだろう? 1クラス90分だったとしたら、960回(1時間)+480回(30分)=1,440回。約1,500回の呼吸を意識しているだろうか…いや、きっとそんな人はまれだろう。ヨガは呼吸だといいながら、90分のクラス中でさえ呼吸をずっと意識しているのは、かなり難しいことなのだ(ヴィンヤサはしているのかも…)。

呼吸って何だろう?

ここからが本題。さて、呼吸とは何だろう? 生理学的に言えば、それは明確にガス交換。体は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する繰り返しでできている。人気漫画『はたらく細胞』や『はたらく細胞BLACK』で、主人公の赤血球達は、常にO2とCO2を運んでいる(ご飯も運んでいるけど)。それも体中に。時に毛細血管が入りにくくて、なかなか酸素が届かなかったりして、身につまされる…。

ここでは生理的な呼吸は置いておき、ヨガ的な呼吸について考えてみよう。

■宇宙

まずは何よりプラーナだ。呼吸そのものがプラーナだし、呼吸によってプラーナを体中に巡らせる。呼吸でプラーナを体中に満たし、宇宙とプラーナを交換する。

目をつぶって呼吸をすると、自分の意識がだんだん呼吸だけの存在になっていくことがある。そして、その呼吸はどんどん体の境界線をあいまいにしていく。息を吐けば、自分の中からプラーナが出ていき、息を吸えば宇宙からプラーナが充填される。自分の中から自分が出ていき、宇宙から宇宙が入ってくる。この繰り返しで、両者が少しずつ混ざり合っていく。「呼吸とは宇宙とのコミュニケーション」とケン・ハラクマ先生も話している。

ヤマ

アヒンサー
苦しい呼吸をすることは、体への暴力。自然に穏やかな呼吸をしたい。

サッティヤ
呼吸にウソはつけない。自分の状態は呼吸に聞けば一目瞭然。呼吸は真実そのもの

アステーヤ
誰かの言葉を盗むことは、呼吸を盗むこと。時間を盗むのも呼吸を焦らせる、つまり盗むのと一緒。

ブランハチャリヤ
本当に呼吸の合う人は誰? 刹那的な関係は呼吸の奪い合いかも

アパリグラハ
欲求にまかせてものを所有するのは、息が荒く(粗く)なるもと

ニヤマ

シャウチャ
清らかで落ち着いた呼吸ができているか? ココロが濁っていない時に、それは実現する。

サントーシャ
今あるもので満足できれば、平和でいられる。「十分」な呼吸をしたい

タパス
体に熱を持てる状態を作れば、ココロも情熱的に。イキイキと生きるコツ

スワディヤーヤ
自分の内側に備わった智慧に耳を貸す。息が穏やかな時、真理の声が聞こえてくる

イーシュワラプラニダーナ
自分の中の神聖なもの、すなわち宇宙とのコミュニケーション。すべてのものの愛に気づいた時、呼吸が別次元になる。

ヨガを生きる

私達は「ヨガ」という生き方を選んだ。それは、アーサナを頑張るだけでもないし、哲学をしゃかりきに学ぶことでもない。心身にいろいろなものを受け入れられる余裕をもって、心の底から響いてくる智慧の鐘の音にのって、穏やかな呼吸で生きられること。呼吸に意識を向けて、今日一日を過ごしてみよう。

Text:Yogini編集部
出典:『Yogini』Vol.39