海辺でヨガのねじりのポーズをする女性

ハタヨガの説く心と身体の関係

ヨガ哲学では、心や自己の本質について学びます。では、どうしてヨガの練習ではアーサナをするのか不思議に思ったことはありませんか?実際にアーサナの練習をすると、心が軽くなると感じる方も多いですよね。確かにアーサナは心にも効果があると感じる方が多いです。

身体のエネルギーをコントロールするハタヨガでは、身体を整えることで心も整うと考えられています。今回はどのようにアーサナが心に働くのか考えてみましょう。

心も身体もプラーナと呼ばれるエネルギー

まずは、ヨガ理論で心と身体がどのようにとらえられているのかを見ていきましょう。

ハタヨガの考えでは、私たちが物質世界で目にしているものは全てプラーナと呼ばれる生命エネルギーによって働いていると考えられています。人間は3つのエネルギーによって成り立っていると考えられています。

3つのエネルギーを表す女性

  • イダー:女性的なエネルギー、心
  • ピンガラ:男性的なエネルギー、身体、
  • スシュムナー:均衡のとれたエネルギー、霊性

この3つのエネルギーのバランスを制御するヨガをスワラ・ヨガと呼びます。

それぞれのエネルギーの特徴

イダー チッタ(心)
精神的
ネガティブ
女性的

直感
ブラフマー神
ピンガラ プラーナ(エネルギー)
身体的
ポジティブ
男性的
太陽
理論
ヴィシュヌ神
スシュムナー クンダリニー(潜在能力)
超意識
均衡
中性的
宇宙
気づき
ルドラ(シヴァ神)

このように、イダー・ピンガラ・スシュムナーの3つにはそれぞれ異なる特徴がありますが、全く別で存在しているものではありません。

身体的なピンガラは粗大なプラーナの様子で、イダーはとても微細なプラーナの様子です。プラーナそのものに個性があるわけではなく、その時の形状によって働きが変わります。

心と身体、意識を整える―ハタヨガの語源からヨガの本質を考える

音の波動に例えてプラーナを理解する

プラーナの粗大な状態と微細な状態は、音の波動に例えられることが多いです。

粗大な音とは、ドアを乱暴に閉めた時に「ドン!」となってしまうような音です。音の波動をグラフにすると、急に大きく線が動きますね。それに対して微細な音とは、蚊が飛んでいる時のような音です。一定の振り幅で規則正しく音が振動しています。

音の振動は振り幅が大きいほど低くボリュームが大きい音になります。逆に蚊の羽音のように高い音になると、振動数が増えて振り幅が小さくなります。周波数が一定よりも細かくなると、人間の耳では聞こえなくなってしまいます。

しかし、音の振動そのものは存在しているため、私たちの身体や心に影響を与え続けています。

このように、身体と心のエネルギーとひとくくりに言っても、粗大なプラーナは物質的な身体を動かすので認識しやすく、微細なプラーナは心を動かすので認識しにくくなります。

しかし、身体のプラーナの状態を整えることによって、心のプラーナも一緒に整えることができます。心と体が全く別のものでないことを理解していると、自分の身体も心も両方大切にできますね。

粗大なプラーナと微細なプラーナ

ヨガ理論では「粗大」、「微細」という言葉を頻繁に使います。

大きく分けると、身体のプラーナの様子は粗大、心のプラーナの様子は微細、あまりに微細になり過ぎて認識できない(動きがなく見える)様子は宇宙と一体になった状態(アートマン)です。

しかし、3種類で分けられるほど単純なものではなく、それぞれのプラーナに様々な形式や働きがあります。

粗大な体の働きと微細な体の働き

身体のプラーナでいうと、最も粗大で大きな動きは、自分で筋肉を動かすような動きです。つまり、アーサナで行っているような動きです。

しかし身体には、自分自身で動かせない微細なプラーナの働きもあります。それは、不随意筋の動きや分泌系、ホルモンバランスや内臓筋などです。直接的には動かすことはできませんが、間接的に働きかけることはできますね。

例えば、心臓の筋肉は意識的には動かせませんが、運動をすることで通常よりも早く動かすことができます。

粗大な心の働きと微細な心の働き

同じように、心にも粗大な働きと微細な働きがあります。心の粗大な働きは自分で働かせることができる思考や感情です。

一方、心の働きにはより微細で、意識的にコントロールができないものもあります。このような「無意識に働いてしまう思考」の土台には、過去の記憶やトラウマなどがあります。

見えていないけれども存在する潜在的な心の働きは、人格を形成する大きな要因となりますが、自分とじっくり向き合う時間を設けないと気が付きにくいです。

最も微細な状態は「無」

微細な心の働きをさらに細かくしていくと、最後には動きがない「無」の状態に到達します。それは、瞑想で心の働きが止まった状態です。

ヨガにはサマディ(三昧)と呼ばれる深い瞑想状態がありますが、これにも段階があります。最初は瞑想の対象物のイメージが残っている有種子サマディ。その後、さらに微細な状態に進むにつれて記憶や自我までも消えていきます。

最終的には、あらゆる心の働きが無くなった無種子サマディという状態に到達します。それは純粋なアートマン(個の根源)やプルシャ(真我)の状態だと考えられています。

瞑想でたどり着けるサマディ(三昧)の意味とその種類を理解する

アーサナで微細な心まで変われるしくみ

すでに説明した通り、身体の状態も心の状態も、その時のプラーナの働きの様子です。ヨガではできるだけ微細は動きでバランスが取れた状態状態を目指します。

例えば、バランスの良い身体の使い方を知らなければ、椅子に座っているだけでも不調の原因となり、痛みや機能不全を招いてしまいます。不快感や痛みがあれば、当然感覚や思考は乱れてしまいますね。

アーサナの実践によって快適な身体の状態を作り出すことで、精神的なプラーナの働きを阻害しなくなります

また、身体全体のバランスが整えば、体内を流れるプラーナの流れはスムーズで調和のとれた状態になります。その快適なエネルギーの流れは当然精神的なプラーナの流れにも影響を与えます。その結果、身体が軽くなるのと同時に心も軽く感じられます。

心の中にストレスや恐怖心、不安などがある時には、それが滞りを作って正しくエネルギーが流れなくなっています。心のエネルギーの不調和は身体の働きにも影響します。

  • 人前での発表に緊張して声がうまく出ない
  • 上司への不満を我慢していたら頭痛になった
  • ストレスが溜まって胃が痛くなった
  • 緊張感が続いたら肩こりになった

精神的な不調は身体の働きにも作用してしまいますね。

アーサナで正しいプラーナの流れを作ることは、身体的にも精神的にもエネルギーを整えてくれます。反対に精神的にリラックスすることで身体の不調が緩和されることもありますが、目に見えにくい心よりも身体を使ってアプローチする方が簡単です。

ヨガでは通常、先にアーサナを行うことで心の働きにもアプローチします。

アーサナを行っている時は意識の向け方に気を付ける

ヨガによって様々な情報から解放される女性
アーサナで身体の調子を整えるためには、ポーズを行っている時の身体の使い方に意識を向けて、自分の動きのクセを認識し、意識的に調整を行っていきます。

そのためには、自分の身体への意識が向いていないと、どれだけ練習をしても変わることは難しいです。

同じように、心の状態を整えるためには、自分の心の働きを観察し、思考のクセを知ることが大切です。これを理解して初めて、自分の心を変えることができます。

日常生活では、意識は常に自分の外側にあります。ニュースやSNSで見る情報、周りの人の発言や行動……。いつの間にか自分について意識を向けることが後回しになってしまっていませんか。

一気に自分の深層心理や本質に到達することは難しいのですが、アーサナによって物質的な自分から徐々に意識を内側に戻して、調和のとれた状態を作ると、自分自身への意識づけが習慣化されます。

それは自然に起こることです。アーサナを行っていれば「心が軽くなった」という感覚は誰でも必ず見つけることができます。その感覚を積み上げながら心の変化も楽しみましょう。

ヨガジェネレーション講座情報

4時間で腑に落とす!ヨガ哲学講座

関連タグ