横から見た瞑想をする女性

「マインドフルネス」とは?初心者にもわかる意味や効果の解説

はじめまして、山口伊久子です。今回、マインドフルネスについて記事を書かせていただくことになり本当にうれしく思っております。

お声をかけてくださったMIKIZO先生の大地のようなパワーとヨガジェネレーション編集部のこまさんの心からのサポート、ありがとうございます。コラムを通じてマインドフルネスについて皆さまにご紹介できればと思っております。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

自己紹介とごあいさつ

“Mindfulness&Yoga Network”を主宰し、現在ではオンラインと対面でマインドフルネス瞑想やマインドフルネスヨガの実践会やワークショップ、リトリートを開催しています。そのほか、企業や学会などの研修、市民講座や大学の授業、矯正施設などで講師などもおこなっています。(よかったらHPをご覧ください)

活動を始めたころは、マインドフルネスが心理や医療関係の方々の間で知られるようになってきた頃で、まだまだ一般的な認知度は低く、「マインドフルネス?」「マインドコントロール?」なんか怪しい?などと言われたりもしました。

そこで、気軽に参加できる実践会を開き、マインドフルネスの良さを皆さんに知ってもらいたいという思いからMindfulness&Yoga Networkを2012年より始めました。

その頃は「マインドフルネスもヨガのように、スポーツクラブやフィットネススタジオでクラスができ、皆さんに知られるようになったら嬉しいけど、たぶん、そんなことは無理」と、遠い先の話だと思っていました。

ところがこの10年で雑誌やテレビなどで紹介されたり教室が開催されたりと、様々なところでマインドフルネスという言葉を目にするようになりました。

マインドフルネスはヨガのように、長い時間をかけて日本社会に根付いていったものとは違い、この10年で日本に知られるようになったばかりです。そこで、まずはマインドフルネスの基本を一緒に学んでいきましょう。

今回マインドフルネスの記事を書くにあたって、打ち合わせをしている時に「ところでマインドフルネスと瞑想の違いって何なんですか?」と編集部のこまさんから聞かれました。

おっ、これ重要なことですね。それではコラムはここから始めましょう・・・・

マインドフルネスと瞑想の違い


実は、マインドフルネスも瞑想の中のひとつです。なので「マインドフルネス瞑想」ということになります。マインドフルネスを直訳すると、「Mind=マインド」が「full=満たされた」「ness=状態」となります。

ところが、マインドフルネスが注目を集め様々な場面で使われるようになったことで、この「マインドフルネス」という言葉は、瞑想法や心理療法プログラム、こころのトレーニング法など様々な意味合いを持つようになってきているんですね。

もともとの語源は、仏教の教えである“八正道”の中のひとつ「サティ(sati)=正念」を英語の「Mindfulness」という言葉に置き換えたものといわれています。漢語では「念」と訳します。

念は「今に心」と書くように、まさにマインドフネスそのものを表す言葉ともいえるのではないでしょうか。

他の瞑想に比べてマインドフルネスが拡がりをみせている理由

それでは、マインドフルネスはなぜこのような拡がりをみせたのでしょうか?

まず、ベトナム中部生まれの禅僧、ティク・ナット・ハン師がご自身の仏教の教えを「マインドフルネス」として世界に紹介したことがひとつのきっかけとして挙げられます。

その後、マサチューセッツ大学の名誉教授ジョン・カバットジン博士がマインドフルネス・ストレス低減法※1という8週間のプログラムを開発して、慢性疼痛をはじめとしたの患者に臨床実践をしたところ、痛みやそれに伴う不安、抑うつ状態が改善されるなどの科学的な効果が実証されました。

さらに、第三世代の認知行動療法※2の中核として、いくつかの心理療法にマインドフルネスが取り入れられ、うつ病などの精神的な悩みを抱える方々を対象に臨床実践をおこなった結果、症状の軽減効果が得られ、医療分野の専門家の間で注目を集めるようになりました。

その後、マインドフルネスはさらなる拡がりをみせ、脳科学の世界でも注目を集めるようになってきています。また、教育研修プログラムのひとつとしておこなう企業も増えてきました。欧米でGoogleやインテルなどが研修プログラムとしてマインドフルネスを導入されていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。

最近では学校教育や福祉関係の施設で、そして矯正施設などでも実践されるようになってきました。少年院では再犯防止プログラムのひとつとしてマインドフルネスをおこなっています。私も少年院で研修をおこなっていますが、入院している少年たちは毎日マインドフルネス瞑想の実践をしており、依存症や衝動的な行動への変容が少しずつ現れてきている少年もいます。

このように、マインドフルネス瞑想は医療分野の実証研究をもとに発展を遂げ、効果が認められたことで様々な分野で応用されるようになりました。ここでひとつお話しておきたいのは、“マインドフルネスだけが特別ではない”ということです。

瞑想には多くの種類があり、それぞれに違った特徴と良さがあることは皆さんもご存知のことでしょう。その前提のうえでマインドフルネスの良さは、それぞれの置かれている立場や状況に合わせた実践法があるため、だれもが日常的に実践しやすいという点だと思います。

特定の方々の中で実践・修得することを目的として継承されてきた「on the坐布の瞑想」に対して、マインドフルネスはだれもが日常的に実践できることを目的として各分野の専門家が工夫した「生活瞑想」といえるでしょう。どちらも大切で、どちらも必要といえるでしょう。

マインドフルネスの定義


だれかが生み出した技法と異なり、マインドフルネスは特定の概念や定義が存在していません。そのため、何かと問われた時にひと言では語りにくいのがマインドフルネスです。

その状況やアプローチにあわせて、それぞれの専門家がマインドフルネスについて紹介をしていますが、その中でも多くの方がジョン・カバットジン博士の定義を引用されています。

「意図的に、現在の瞬間に,評価をせずに注意を払うことであらわれる気づき」(Kabat-Zinn,2003)

この定義が何を語ろうとしているのかについては、次回以降でお話をしたいと思いますが、マインドフルネスもヨガと同じように、なにかの定義を当てはめるのではなく、私たち自身が体験や経験から学び得た中で見極めていくものなのではないかと思っています。

一生かけて自分に問いかけ、探求をする。それがヨガでありマインドフルネスでしょう。

参考

  1. マインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction; MBSR)
ジョン・カバットジン博士が開発したストレス対処法。1979年、マサチューセッツ大学医学部に創設された「ストレス低減クリニック」にて、当時慢性疼痛に悩む患者を対象に実施され、その効果が実証されている。

  2. マインドフルネス認知療法、弁証法的行動療法、ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)などがある。