肩を動かすメカニズム〜ヨガのアーサナでも意識したい「肩甲上腕リズム」とは?〜

肩を動かすメカニズム〜ヨガのアーサナでも意識したい「肩甲上腕リズム」とは?〜

今回のテーマは肩関節。肩関節は胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、第二肩関節の複合したものを指します。肩関節は他の関節に比べて可動域が大きい関節です。

例えば膝関節は曲げ伸ばしの一方向にしか動きませんが、肩関節は前後に動かしたり、横に開いたり、捻ったりと3Dで動きます。この性質を理解し、ヨガを指導する際に生かす方法について解説していきます。

肩関節の種類と特徴

肩関節はいくつかの関節が組み合わさり複雑に作用することで動いています。この関節の中でヨガ指導者のみなさんにとくに覚えてもらいたいのが肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節です。

肩甲上腕関節

肩甲上腕関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節で、一般の方がイメージする肩関節の部位です。

よく例えられるのがゴルフのボールとピンです。上腕骨の先端はボールのように丸くなっており、肩甲骨はゴルフのピンのように窪みがあります。上腕骨の先端は丸くなっているのでジョイスティックのように自由度が高く動かせます。

肩甲胸郭関節

一方、肩甲胸郭関節は、肩甲骨と胸郭で構成されています。この関節は少しイメージしにくいと思いますので図を用意しました。肩甲骨は肋骨の後ろ側に位置しています。

肩甲胸郭関節
肩甲胸郭関節

図にあるように、肋骨の上で各運動方向に滑るようにして動きます。この肩甲骨の動きは肋骨(胸郭の一部)の上で行われているので肩甲胸郭関節という名前が付けられています。

肩甲上腕リズムという考え方

上で説明した「肩甲上腕関節」と「肩甲胸郭関節」ですが、手を上げる動作を行う時に2つの関節が上手く連動するようになっています。手を上げる動作を見てみると、肩甲上腕関節だけで動作を行っているように見えますが、肩甲上腕関節だけでは手を上げる動作は行えません。

脊柱や肩甲胸郭関節脊柱や肩甲胸郭関節も共同して動くことで手を上げる動作が行えているのです。この時の肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が動くリズムを肩甲上腕リズムと言います。

肩甲上腕リズムを簡単に説明すると「肩甲上腕関節が2°動けば肩甲胸郭関節が1°動く」という肩関節のメカニズムです。

手を垂直に上げる動作は「肩関節の屈曲180°」という表現になるのですが、手を垂直に上げる動作は、肩甲上腕関節屈曲が120°、肩甲胸郭関節が上方回旋60°動くことで行われているということになります。

肩甲上腕リズムを知ればヨガで活かせる?

ではこの肩甲上腕リズムを知っていたら指導の現場でどのように役に立つのでしょうか?

これはシンプルに「手が上げにくい」という訴えのある方がいた時にどのようなアーサナがオススメなのか説明できるようになります。
例えば、「手が上げにくい」という動作は肩甲上腕リズムのメカニズムから

  • 肩甲上腕関節が動いていない
  • 肩甲胸郭関節が動いていない

これにプラスして「胸椎の伸展が出ていない」という要素があります。手が上げにくいという訴えから上記の3つの考えられる問題点に対してアプローチしましょう。

ヨガ指導での具体的なアプローチ方法

手が挙げにくいと訴える人に対しては、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、胸椎、それぞれの部位にアプローチして反応を見ます。そして動いていない箇所を見極められたら、適したアーサナを提案していきましょう。

手が挙げにくいと訴える人に対して効果的な指導方法
手が挙げにくいと訴える人に対して効果的な指導方法

まず肩甲上腕関節をよく動かすために効果的なアーサナは、チャイルドポーズです。チャイルドポーズは比較的難易度が低く、肩甲上腕関節の可動域が気になる人にぴったりです。チャイルドポーズをすると肩の後方が伸びる感じがわかると思います。

ここが硬いと肩甲上腕関節の可動域が制限されます。少し長めにポーズをキープして伸ばすと肩が動きやすくなるはずです。

肩甲胸郭関節には猫と牛のポーズをするのが効果的です。以前腰椎骨盤リズムを改善する目的で紹介しましたが、このポーズは万能で肩にもいいのです。

行い方は基本的に同じなのですが、猫のポーズの時には、胸椎の屈曲と肩甲骨外転を意識します。背骨を丸めて肩甲骨同士を引き離すイメージです。

牛のポーズではその逆で胸椎の伸展と肩甲骨内転を意識します。背骨を反らして肩甲骨を引き寄せるイメージですね。そうすることで肩甲骨がしっかり動き肩甲胸郭関節の可動域が改善されます。

これらのアーサナを行う前後に手を上げてもらい、どのくらい変化があるか見て効果判定を行います。1番しっくりくるアーサナをホームプラクティスに入れてもらうと良いですね。

今回は肩甲上腕リズムについて解説しました。肩だけでなく肩甲骨にも着目して指導を行いましょう。