食事もヨガの一部。ハタヨガの考え方で食生活を意識しよう

食事もヨガの一部。ハタヨガの考え方で食生活を意識しよう

ヨガの効果を高めるには、ヨガマットの上の練習だけではなく、食事にも気を使うことが大切です。

自分自身に向き合うためにヨガの練習を行っているのであれば、アーサナを行う時以外にもヨガの知識を応用してみましょう。そうすれば、ヨガの恩恵を何倍にも感じることができます。

今回は、人の人生の中でも非常に重要な食事について、ハタヨガの考え方を基に説きます。

ハタヨガの食事に対する考え方

人生において食事はとても大切なものです。しかし、私たちは日常どれだけ食事に意識を向けられているのでしょうか?

現代の都会型の生活スタイルでは時間を効率的に使うことがとても大切なので、食事は外食や出来合いのもので済ませてしまう方も多いのではないでしょうか。

ハタヨガの教典では、食事について以下のように書かれています。

バターと甘未をもって味付けされた食事、胃の四分の一を空けておくこと、ただ生命への愛だけから食事をすること、これが節食といわれるものである。(ハタヨガ・プラディーピカー1章58節)

この1節でとくに学べることは食事とは生命への愛であるということです。(この部分を翻訳本によっては「シヴァ神の歓びのため」と訳す場合も多いです。)

私たちは人間として生命を与えられて、この身体であらゆる体験をします。ヨガの実践を通して自分自身の本質を知ること、本当の幸せについて知ることも、全て生命の維持を土台に叶います。

自身の生命に対して感謝して、愛をもって良質な栄養を捧げることが食事です。そのように思うと、自分たちが日常生活の中で口にするものへの意識も大きく変わってくるのではないでしょうか。

ヨガの食事は腹5分目

ハタヨガの実践者は、胃の1/2の質量だけしか食しません。つまり、腹5分目です。

  • 食べ物:1/2
  • 水:1/4
  • 空気:1/4

また、食事の直後に水を飲むこともよくないと考えられています。食べたものを消化しないといけない時に水分を取ってしまうと、消化液が薄まって未消化の原因となってしまうからです。

ヨガでは、食べたものをきちんと消化することが重要です。消化しきれなかった食べ物はアーマ(毒素)となって胃腸にとどまり、身体の不調の原因となってしまうからです。

胃腸に溜まったアーマ(毒素)
消化しきれなかった食べ物はアーマ(毒素)となり、身体の不調の原因に。

全てのヨガの実践は、身体の純粋さを高めるために行います。食事も、アーマを溜めないように消化に良いものを適量頂くことがヨガでは大切です。

ヨガ実践者は栄養の高いものを選ぶ

ヨガ修行者に「もっとも良し」と考えられている食材
ヨガ修行者に「もっとも良し」と考えられている食材

食事に対して意識の高い方は驚くかもしれませんが、ヨガ修行者に「もっとも良し」と考えられている食材は、バターや砂糖を使って調理されたものです。

その代表格のものがキールと呼ばれる米・砂糖・牛乳を煮込んだ甘粥です。ブッダが悟りを開く直前に召し上がった食事としても有名ですが、インドではお祝い事の時に頻繁に食べられるポピュラーなスイーツです。

現代では砂糖はあまり良くないと考える人も多いかもしれませんが、伝統的なヨガ修行者は厳しい修行に耐えるために、短期間で消化吸収できて、持久力があり、腹持ちの良い食材を好みます。

すぐにエネルギーに代わる糖質と一緒に良質の油を摂ることで持久力も養われます。実際のインドでは、バターよりも純度の高いギー(精製バター)を食べることが多いです。

このような油分や糖質は、適量を摂取することでヨガの鍛錬に必要なエネルギーを与えてくれます

ハタヨガで良しとされる食材、避けるべき食材

ハタヨガ教典で実際に良くないと書かれている食材をみていきましょう。

辛い物、酸っぱいもの、刺激性のもの、塩からいもの、熱いもの、葉っぱ、ビンロージュの実、ごまの油、ごま、からし、酒、魚、羊肉等の獣肉、凝固した牛乳、水でわったバターミルク、クラタ豆、ジュジュベの実、油で揚げた菓子、ヒングウ樹脂、にんにく等は行者には不適切な食べ物といわれている。(ハタヨガ・プラディーピカー1章59節)

ここに書かれている食材は、ラジャス(激質)やタマス(鈍質)の性質をもった食材です。

ラジャス的な食べ物とは、私たちの心と身体をアクティブにする食べ物です。特に避けられるべきと考えられているのは、唐辛子・にんにく・玉ねぎ・からしなどの刺激性の食材です。

ヨガの実践では心の穏やかさを高めていくことが大切ですが、刺激的な食材を摂取してしまうと心が乱れやすくなってしまいます。

また、揚げ物やアルコール、肉類はタマス的な食べ物であり、摂取することによって自分の内側に不純性を取り込んでしまいます。

ビンロージュの実など聞きなれない食材も書かれていますが、これはインド人が噛みタバコとして愛用している嗜好品で、パーンと呼ばれる葉っぱに包んで頂きます。当然、たばこも同様に避けるべきですね。

食べ物の状態にも気を付ける

また、次のようなものも不健康な食物と心得るべきである。いったん冷えたものを温めた食物、油気がなくて乾いた食物、過度に塩辛いもの、酸味をおびたもの、不消化なもの、野菜、ウトカタ等は避けるがよい。(ハタヨガ・プラディーピカ1章60節)

インドでは特に、何度も調理し直した食べ物を嫌がります。多くの一般家庭では、その日に作った食べ物はその日に食べきって、次の日には残しません。食べ物は何度も過熱することによって栄養が壊れてしまい、不純な食べ物となってしまいます。

野菜に関してはハタヨガ・プラディーピカでは詳しく書かれていなく、真意は不明です。他のハタヨガ教典を参照すると、野菜には食べるべき野菜と避けるべきものがあり、好ましくない野菜もあることを意味しているのではないかと思われます。

本場インドのヨガ修行者が好む、サットバな食事

自分に何が必要か考えて食事をする

サトヴィックな食事を提供するリシケシのターリー・アシュラム
サトヴィックな食事を提供するリシケシのターリー・アシュラム

ここまで読んで、おかしいな?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。現代で一般的に言われている健康食と違う部分も沢山あります。

マクロビ・菜食主義・ビーガン・グルテンフリーなどを実践されている方、そうでなくても、糖質などに気を付けている方は多いですよね。

教典に書かれた食事は、あくまでも厳格なヨガの修業に適した食事方法です。伝統的なフルタイムのヨガでは、修行の初期は特に体に疲労が溜まりやすくエネルギーが必要なため、即エネルギーになる食材を好み、消化に時間のかかる食材を避けます。

それは、食事の目的がヨガの達成を助けることであるからです。ヨガの修業が進み、消化の火の強くなったヨガ行者は、あらゆる食材を消化できると言われています。

社会の中で、生活の一部としてヨガを取り入れているのであれば、出家僧と同じ食事をする必要はありません。その人のライフスタイルや目指す健康の形によって選ぶべき食材は変わってきます。

人によっては、朝のコーヒーや、仕事後の1杯のお酒の時間が快適な生活のリズムに必要と感じるかもしれません。自分が何を求めていて、それに適切な食事の形はどのようなものかを考えましょう。

食事を見直す時間の大切さ

今回は教典に書かれた食事の考え方についてご紹介しましたが、「これを食べるべき」という教えではありません。大切なことは自身の食事に意識を向けることです。

特に毎日忙しく働いている人は食事について考える時間もなく、毎日決まったものを無意識に食べがちになってしまいます。

今、エネルギーを注ぐべき職務がある人は、そこに意識を集中させることが大切ですが、だからこそ、パターン化した食事であっても適切なものを摂取できているのか見直す時間も必要です。1度時間をとって毎日の食事を見直すことで、今後の活動をサポートしてくれる食習慣が分かってきます。

心に余裕のある方は、毎日の食事を観察して、食べたものが自分の心と体にどのような効果を与えるのか観察する習慣を身に付けましょう。

食事もヨガの一部です。ぜひ楽しんで、愛のある食事をしてください。

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