腸内細菌

知っておきたい!腸内細菌の種類と働き

知っておきたい! 腸内細菌の種類と働き

腸内環境は、便秘やダイエットだけではなく、免疫系や精神状態にも大きく影響を及ぼし、腸内環境を整えることは心身の健康状態に直結する。

そんな腸内の状態を左右するのが腸内細菌。腸内細菌は100種類以上あり「善玉菌」、「悪玉菌」、「日和見菌」の3種類に分類される。これら3つのバランスが2:1:7の割合になっているのが理想的だ。

「善玉菌」には消化吸収を助けて悪玉菌の増殖を防ぐ他、悪玉菌が作り出す腐敗物質を分解して腸内の動きをよくする、ビタミンを合成する、悪玉菌の侵入を防ぐなどの働きがあり、私達の健康維持に欠かせない存在。代表的な菌はビフィズス菌や乳酸菌だ。

一方、ブドウ球菌やベイヨネラに代表される「悪玉菌」は腸内を腐敗させたり、細菌毒素や発がん物質を作り出したり、ガスを発生させたりと健康を阻害する。

反面、肉類などの消化吸収しにくいタンパク質を分解したり、善玉菌を刺激して活性化させる役割もあるので、なくてはならない存在でもある。

そして一番多い「日和見菌」は、健康な時は何もしないが、体が弱った時に悪玉菌として体に悪い働きをし始める。その悪玉菌が増殖すると下痢や便秘になったり、増えた有害物質が腸から吸収されて、全身に巡りがんや生活習慣病の原因になったりする。

腸内細菌の中でも特に重要なのは、食べた物を発酵するために腸内を弱酸性に保つ乳酸菌。足りなくなると発酵ではなく腐敗が起こり、毒素として体にたまってしまう。

ここからは、3種類の菌それぞれの代表的な例とその働きを紹介していく。

【善玉菌】

ビフィズス菌

強い殺菌力のある酢酸や乳酸を作り出し、悪玉菌の増殖を防いでいる。特に、病原性大腸菌O157の予防効果が高い。すべてのヨーグルトに含まれているわけではなく、ビフィズス菌を加えたヨーグルトにのみ含まれているので、購入する時にチェックしよう。

乳酸菌

腸内を弱酸性に保ち、腸に入ってきたものを腐敗ではなく、発酵させる環境を作り出す。悪玉 菌の増殖や毒素の発生を防ぎ、腸のぜん動運動をよくする働きがある。ヨーグルトやフレッシュチーズの他、味噌やぬか漬け、キムチや塩麹などの発酵食品にも含まれる。

フェカリス菌

乳酸菌の一種。乳酸菌は生きて腸まで届くことで効果が得られるのに対し、フェカリス菌は加熱殺菌で死滅していても効果が得られる。乳酸菌同様に腸内環境を整えるが、特に免疫力を高める効果が高く、花粉症の症状を緩和する働きもあると言われている。

アシドフィルス菌

乳酸菌の一種。熱や酸に強いので胃で溶かされることなく、生きたまま腸に届くことで注目されている。他の乳酸菌同様、体内を酸性に保ち悪玉菌の増殖を抑え、アレルギー性皮膚炎に効果があるビオチンというビタミンの生成を助ける働きもある。

【悪玉菌】

クロストリジウム

クロストリジウム菌は、軽い下痢からひどい腸炎まで引き起こす可能性のある細菌。中でもクロストリジウム・ディフィシル菌は抗生物質の服用によって腸内バランスが崩れると増殖すると考えられている。院内感染しやすいので注意が必要。

ブドウ球菌

顕微鏡で見るとブドウの房のように菌が集まっているのでブドウ球菌と呼ばれる。健康な時には害はないが、免疫力が低下している時には食中毒の原因となったり、ニキビや水虫などの化膿性疾患を引き起こすきっかけにもなる。

ベイヨネラ

歯周病の原因菌と言われる菌の一つで、歯肉の奥深くに潜んでいる。治療をせずに放っておくと、すべての歯が抜けてしまうこともある。ベイヨネラを含む歯周病菌は血管内に入って全身を循環し、血管の壁をもろくしたり、血栓を作る原因の一つとも言われている。

【日和見菌】

大腸菌

大腸菌には病原性と非病原性大腸菌とがあり、前者は悪玉菌、後者は日和見菌に分類される。非病原性大腸菌は毒素を作らないので、腸に定着していても食中毒を起こさない。腐敗物質を生み出す一方、ビタミンKを合成したりと、人に有益な作用ももたらす。

バクテロイデス

便の8割を占める菌。バクテロイデス菌が作り出す短鎖脂肪酸が脂肪の吸収を抑えるので肥満を予防すると言われる。痩せている人と比較すると、肥満の人はバクテロイデス菌が少ない傾向にある。善玉菌が多いと自然に増えるので、腸内環境を整えるのが大切。

毎日の食事で取り入れよう

いい腸内環境を作るには、最も重要なのが食生活だ。味噌や漬物、醤油、納豆など日本人の食生活には、本来善玉菌を摂取できる発酵食品は欠かせない存在。

しかし近年、食事が欧米化していることもあり、日常で発酵食品を食べる機会があまりないという人もいるかもしれない。

腸内環境改善に有効な善玉菌を含んだヨーグルトや、納豆、豆腐などは気軽にスーパーで買え、調理もほとんどいらない。いきなり頑張って食生活を変えることは難しいが、簡単に取り入れられる食品の力を借りて、腸活を始めてみては?きっと続けていけば心身ともに変化を感じられるはず。

教えてくれた人=山坂元一
やまさかもとかず。ストレングス&コンディショニングトレーナー。VIDO代表取締役。アメリカの最新情報を加えた独自の理論により、プロゴルファーやプロ野球選手、オリンピック選手など100人以上のトップアスリートを指導。著書に『美しい身体を作る教科書』(小社刊)など

文=Yogini編集部