長〜い歴史に見る ヨガのバイブルとキーパーソン

長〜い歴史に見る ヨガのバイブルとキーパーソン

長い時間をかけて進化し続けてきたヨガ

ヨガの起源をたどると、始まりは紀元前4000〜5000年ごろにのぼり、その歴史の長さに驚く人もいるのではないだろうか?

今日に至るまで長い年月をかけてゆっくりと進化してきたヨガには、多くの先人達の思いや智慧が詰まっている。

今回は、長〜いヨガの歴史上のキーパーソンと、彼らの作り上げた偉大なる聖典を整理していこう。

聖者1:ヴィヤーサ(Vyasa)

何千年にもわたり『ヴェーダ』の編纂や『バガヴァッドギーター』を含む『マハーバーラタ』を口述した聖者ヴィヤーサ。

真我に至り魂を運ぶクルマ(肉体)を超越し、寿命という概念から解放された人とされており、マントラを唱えながら生まれてきたと伝えられている。

ヴィヤーサによる聖典

『ヴェーダ』

ヨガの源流をさかのぼるとたどり着くのが、この聖典。紀元前3000〜5000年ごろに作られ、後半の章『ウパニシャド』は特に有名だ。

『ヴェーダ』で説かれるのは「どう生きるか」ということで、四つの人生の目的や真理が記述されている。

どうやって使命を果たすか、どうやって富を得るか、どうやって自分の欲求を満足させるか、どんな行動をすれば意識を進化させて究極に幸せになれるかをあらゆる角度から説いている。

『ウパニシャド』

『ヴェーダ』の中で“自分の真実”について説かれたのが『ウパニシャド』。ここで言う“自分の真実”とは「あなたは真我であり、あなたの周りの人も真我だ」ということだ。

大まかに分けると『ヴェーダ』の前半は儀式や祈りの方法など、幸せを見出して成長するために日々どう行動に移せばいいのかを述べている。

後半の『ウパニシャド』は、なぜそれをやるのかを理解することを学ぶ、根源的な哲学として編纂されている。

『バガヴァッドギーター』

『バガヴァッドギーター』は、悩める王子アルジュナを導くクリシュナ神との物語で構成され、“カルマヨガ”、“バクティヨガ”、“ニャーナヨガ”の三つのヨガとそれぞれの方法論を説いた初めての聖典だ。

行為のヨガ“カルマヨガ”は真我から行動し、結果に対し平等心の気持ちでいなさいと説き、愛のヨガ“バクティヨガ”では、宇宙創造の力や自然の摂理に愛を向けようと説く。そして、叡智のヨガ“ニャーナヨガ”では、叡智=自分が真我だということを理解することを目指す。

聖者2:パタンジャリ(Patanjali)

サンスクリット語にも精通し、学者としても活躍した聖者パタンジャリ。生身の人間感が薄いヴィヤーサに対して、パタンジャリは少年時代も記録され、呼吸法と瞑想によって悟りに達した物語が残っている。

またインドには、パタンジャリが肉体という衣を脱いだと言われる場所も存在している。

パタンジャリによる聖典

『ヨーガスートラ』

『ヴェーダ』と『ギーター』を理解するために生まれた六つの学派(六派哲学)の一つ、サーンキヤ哲学をベースに書かれた名著。

第一章に書かれる基本原則は簡単に誰もが理解できる内容ではないが、第二章にはヤマ・ニヤマなど具体的な練習法が記されている。

六派哲学の中で、『ヨーガスートラ』が唯一の実践的なHow Toだからこそ広く普及したと考えられており、パタンジャリの著作自体は紀元前2世紀と言われている。

聖者3:ゲーランダ(Gheranda)

ヴィシュヌ教の聖者。弟子のチャンダカーパーリは王様で、『バガヴァッドギーター』のアルジュナとクリシュナを彷彿とさせる設定だ。

ゲーランダもまた他の古典的なヨガと同様にラージャヨガに重きを置いているが、聖典の中で、ポーズなどより実践的な方法についても説いたことが大きな特徴だ。

ゲーランダによる聖典

『ゲーランダサンヒター』

17世紀ごろに聖者ゲーランダが説いたものを弟子のチャンダカーパーリがQ&Aスタイルで綴った教典。

現代の“動くヨガ”に発展していく兆しがうかがえる実践に関する記述が多く、32のポーズが紹介されている。

呼吸法の前にまず浄化とし、目、鼻、肺、胃、大腸、小腸、合計六つの浄化法が記述されていて、ポーズや呼吸法を実践するハタヨガは瞑想のラージャヨガへ向かう段階だと説いている。

現代のヨガとの違い

現代のヨガでは、ヨガと言えばまずはポーズというように、心よりも体に重きを置いている。心と体は互いに強く影響し合っているから、もちろん体を整えることも心を整えることにつながるだろう。

しかし、せっかく長い歴史をかけて、心という目に見えない存在を科学してきたヨガの恩恵は、もっともっと奥深いものがある。

それぞれの聖典、わかりやすい解説書もあるのでまずは気軽に手にとってみてはどうだろうか? 新しいヨガの魅力に出会えるかもしれない。

教えてくれた人=キミ
「スタジオ・ヨギー」エグゼクティブ・ディレクター。ヨガと瞑想を25年間研究。訪印32回。ヨガと瞑想指導者の育成、コース開発、ディレクションに情熱を注ぎ、普及に務める。監修するスマホアプリ『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』は200万DLを超える。

文=Yogini編集部