コミュニケーションのヤマ【インストラクターのための話し方/聴き方】4

サッティアの実践は難しい

八支足のヤマには、「サッティア」というコミュニケーションに関する戒めがすでに入っている。ウソをつかない、真実を話す、誠意を持って話すなどという意味だ。この実践は実はかなり難しい

特に日本人は「察してもらえる」という文化と、忖度するという気の使い方が混ざり、奥歯にもののはさまったような話し方をしたり回りくどい言い方をすることで結果的に言いたいことを伝えられない人が多い。反対に、言葉を知らない(国語力が低い)上に、考えずにその言葉を発してしまうことで、無意識に相手を不快にさせる人も少なくない。さらに、相手の話の意図をつかめずに会話が空回りする、自分の話したいことだけを一方的に話してしまうなど、コミュニケーションが崩壊しているケースもよくある。

学生のうちにコミュニケーションを学ぶ機会がなかったことが、大人になってからも暗い影を落としているのだ。しかも、それに気づかないケースがほとんど。

対話下手が暴力になることも

言葉を知らない、表現力がない、理解力が乏しいなどは、本来は子どものうちにたくさんの本を読み、多くの人とコミュニケーションを取ることで解消し、かつ国語力、会話力とも養っていくべきところだ。しかし、その訓練の場はほぼない。

そのため、話を聞いてほしい、寂しさを紛らわしたい、自分の思いを表現したいといった時、コミュニケーションを訓練されていない子どもや大人は、いじめたり、けなしたり、ウソをついて相手の気を引いたり、時に暴力を振るうという行為に走る。「コミュ障」などと軽く言っているが、なかなかに根が深いのだ。

コミュニケーションのヤマ

「サッティア」はヤマの一つだが、コミュニケーションのヤマを考えると、会話がスムーズになっていくので提案したい。

アヒンサー
相手を傷つけない言い回し、聴き方をする。言葉をポンポン投げていいのは、言葉に自信のある人。確かに投げた球をどう受け取るかは相手次第だが、少なくとも自分の発する言葉に責任を持ちたい。ここに気を使えない人は、人から疎まれることになる。

サッティア
ウソをつかない、真実を話す、誠意を持って話す。ここから始まる。「今ここ」にきちんといて話すことも大事。相手とのコミュニケーションに100%エネルギーを注ぎたい。

アスティーヤ
わかりやすく話し、きちんと聞くことで、相手の時間や平和で明快な精神状態を盗まない。お互いに話したいことを話してスッキリ〜。今日はいい日だったね〜と言えるコミュニケーションの場合はいいが、そうでない時の会話は相手をイライラさせるもとになる。

ブラフマチャリャ
好きでもない相手にまでセクシーアピールを無意識にしている人は、意外に少なくない。本人としては何げないしぐさでも同性からはそう見えない人などは、ムダなオーラを飛ばしているのかも? エネルギーは会話そのものに使おう。

アパリグラハ
相手の言葉尻にイラッとして、そのことばかりを追求したり、会話の本筋と外れたところに執着したり、会話の内容でなく話し手を攻撃するといった会話は建設的でないし、周囲を不快にさせる。客観視して、話そのものときちんと向き合いたい。

会話とは“グルーブ”

気持ちのいいコミュニケーションにはグルーブがある。それは呼吸を合わせ、同じ“間”を共有し、同じエネルギーの中でお互いに心地よい言葉をフローさせ、理解し合うということだ。コミュニケーションは相手と一緒に作っていくもの。一緒に積み上げていくことができなければ成立しないのだ。

自分が話したいことは何なのか、相手が気持ちよく聞いて、答えてくれる話し方はどんなものなのか、一緒に作っていくという視点を持てばたやすく感じられるのではないだろうか。

 

Text:大嶋朋子(Yogini編集部/Lotus8)
『Yogini』編集デスク。専門学校卒業後、フリーランスライターとして健康本や医療本の執筆、高校野球誌『輝け甲子園の星』のメイン編集、ハワイ全島のガイドブック編集を経験し、ピークス株式会社を経てエイ出版社社員に。『RETRIEVER』『アロマじかん』『ハワイスタイル』編集長、『東京生活』副編集長を経験。その後は多くのトレーニング本、女性の心と体を豊かにする書籍などの編集に携わる。インタビューした数は数千人。現在は、心理カウンセリング、傾聴を学び、判断基準を「ヨガの八支則」のヤマ・ニヤマにおいて、日々、女性の心と体について知識を深めている。