生徒さんとのコミュニケーションでやってはいけないこと【話し方/聴き方】2

生徒は会話を求めている

先日、『Yogini』のストーリーでアンケートを取った。それによると、生徒がインストラクターに求めているのは、どうやらコミュニケーションだ。インストラクター側からの一方的なキューイングのみでは、生徒の満足度は得られないのだ(いろいろなアンケートの結果は、11月19日発売の『Yogini』で確認してね!)。

話を聞いてもらいたい

では、いいコミュニケーションだった。「話してよかった!」と思えるのはどんな時だろう。それは、圧倒的に「話を聞いてもらえた時」だ。

コミュニケーションは、話して、聞いて、話して…を繰り返しているように思えるが、ほとんどの人が自分の話を聞いてもらえる時間に喜びを覚える。話すという行為は、人にとって大事な自分の調整時間。思いを伝え、自分の声を聞いて思いを強くし、あるいは方向修正する。心に問題を抱えた場合、言葉にできるようになってきたら、それは少しずつ光が見えてきた兆しとカウンセリングの現場では言われているほどだ。

身につけるべきは聴くスキル

話すことがそれだけ大事だとしたら、インストラクターが身につけるべきスキルは、自分の話し方を高めることではなく、相手の話を親身になって聴くことだろう。

普通、コミュニケーションというと会話のキャッチボールを想像するが、生徒さんとのコミュニケーションに置いて、インストラクターの役割は「聴く」こと。「先生」という言葉にだまされて、教えないと、何かいいことを言わないと…と焦らなくていい。相手が思っていることを、きちんと聴く姿勢があれば、それだけで生徒さんは気持ちいい時間を過ごせる。

自分の話をじっくり聴いてもらうことは、普段あまりない人のほうが多い。病院の先生でさえ、あまりじっくり話を聴く時間を持てていないような日常なのだ。話を聴いてもらえる体験は、なかなか得ることができない。だから、インストラクターさんが話を聴いてくれたら、それは生徒さんにとって大きな喜びになる。

聴く時にやってはいけないこと

「聴く」ことは、実はすごく難しい。基本的な態度としては「共感する」ということだからだ。

共感するとは、否定も肯定もしない受け方「そうなんだね」、「そう思ったんだ〜」という程度のあいづちのみ。「そうは思わないけどな」とか「あなたがそう思ったならいいんじゃない…」、「それすごい!」みたいな受け方は避けたほうがいい。最初のは否定だし、次のは突き放しているし、最後は依存させることになりかねないからだ。

ほめるというのはよさそうに聞こえるが、使い方を誤ると相手の承認欲求を満たすだけ。何か問題が起きた時には、「先生がいいって言ったからやったのに…」と逆恨みされかねない危険な方法だということも知っておきたい。

相手の話を盗まない

受ける時の礼儀として、相手の話を自分の話にしない、も大事。

例えば「私はチーズが好きなんですよ」と相手が話してくれた時、「チーズおいしいですよね。私、この間、スーパーで○○っていうチーズを買ったんですよ…」みたいな話し方をしたら、それはもう相手の話ではなくなっているのだ。これは生徒さんにしてみれば、「聞いてもらえなかった」という印象しか残らない。これは、普段の会話でもやりがちなので、特に注意したい。

こうなりがちな人は、求められなければ自分の話をしない、ぐらいに考えていてもいいかもしれない。話すのが好きな人は要注意だ。

「その人」の話をする

無意識なうちにやってしまうのが、相手の話したことの内容に食いついてしまい、相手の話ではなくなってしまうこと。

例えば、「私はチーズが好きなんですよ」と言われたら、「なぜチーズが好きなんですか?」とか「チーズのどんなところが好きなんですか?」というのは、その人の話をしていること。一方、「どんなチーズが好きなんですか?」「○○です」「あー、○○ってフランスで作られた…」とチーズの話になってしまうのはNG。その人はチーズの話をしたいのではなく、チーズが好きな自分の話をしたいからだ。

これも話題をつなげたい時に陥りがちなミスなので注意したい。

表情も使って!

今の時代、マスクは必携品。これはある意味、コミュニケーション能力をすごく高めることができる。マスクを着けて、かつ黙っていても、相手に思いを伝えることを学べるからだ。

簡単に言えば、目で表情を作って話そう、ということ。

インストラクター仲間がいれば練習してほしい。相手の話に目だけであいづちを打つのだ(頷いたりはOK)。どのぐらい、どんな風に目の表情を作れば、相手に伝わるのか…実際にやってみるとよくわかる。

「聴く」というスキルを身につければ、コミュニケーションの幅が広がる。また、思いがけない信頼関係も作っていくことができるだろう。「聴く」を意識することから始め、徐々にスキルとして身につけていきたい。

 

Text:大嶋朋子(Yogini編集部/Lotus8)
『Yogini』編集デスク。専門学校卒業後、フリーランスライターとして健康本や医療本の執筆、高校野球誌『輝け甲子園の星』のメイン編集、ハワイ全島のガイドブック編集を経験し、ピークス株式会社を経てエイ出版社社員に。『RETRIEVER』『アロマじかん』『ハワイスタイル』編集長、『東京生活』副編集長を経験。その後は多くのトレーニング本、女性の心と体を豊かにする書籍などの編集に携わる。インタビューした数は数千人。現在は、心理カウンセリング、傾聴を学び、判断基準を「ヨガの八支則」のヤマ・ニヤマにおいて、日々、女性の心と体について知識を深めている。