ヨガ哲学と児童文学『モモ』から考える「時短」

効率よく動く=時短

ビジネスにおいて「効率がいい」というのは大事なことだ。ムダな時間を使わずに、必要なことを正確にこなして、結果を出す。タイム・イズ・マネー。1分1秒もムダにしないことで、損をしないですむ。最近では、プライベートを大切にするという意味でも仕事を効率よくこなし、時間をプライベート用に回したい。

時短は八支足の実践

キーワードは「時短」。いかに短く働き、コストを下げるか、ということになる。つまり効率だ。

しかし、効率よく時短で働くのは、結構難しい。気持ちいい時短に必要な要素は、こんな感じ。

・スケジュール管理(適切なスケジュールを考え実行することで、時間を盗まない)
・周囲との適切なコミュニケーション(お互いを思いやり、正直に伝え合い、きちんと聴く)
・確認する(自分で考えてもわからない時は、延々と考えるのではなく確認する)
・集中力(懸命に仕事をし集中することでミスを起こさない)
・必要なことを見極める(ムダなものを手にしない)
・客観視(自分を観る、周囲を観る目を持つことで、テンポやリズムを合わせる。時にはリードする)
・働きやすい環境(机の上や部屋などの環境整備。用意を怠らない)
・手持ちをうまく生かす(今ある能力を生かすためにも、自分が何を持っているかを知る)
・最後はゆだねること(自分だけで何とかできないことも多い)

そう! 実はヤマ/ニヤマの要素だったのだ。こんなところにもヨガって生きている。また、マットの上で心地よくアーサナを取ることも、時短につながる。心地よく安定しているということは、動き方、そして在り方にムダがないということだからだ。つまり、ヨガをしている人は、時短も理解しやすく行いやすいということになるだろう。

『モモ』は時短がテーマ

『モモ』の作者であるミヒャエル・エンデは、禅の実践者だ。そのため、小説には随所に禅的なエッセンスが入っている。それはヨガそのものでもある。

時間泥棒が出てくる『モモ』は、まさに時短がテーマだ。時短は行きすぎると、人の心は壊れていく。心身ともに不健康になってしまう。でも一つのことに集中し、今のことだけを考えて適切に働くことで、時間はちょうどよく使えて、疲れもしない。そして笑顔でいられる。『モモ』はそんな精神が大事だと言う。

印象的な言葉を挙げてみよう。

時間をケチケチすることで、ほんとうはべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。じぶんたちの生活が日ごとにまずしくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていることを、だれひとりみとめようとしませんでした。

一度に道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎの掃きのことだけを考えるんだ。いつもただ次のことだけをな。(中略)するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくかはどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。(中略)ひょっときづいたときには、一歩一歩すすんできた道路が全部おわっとる。どうやってやりとげたかは、自分でもわからんし、息もきれてない。

時間とのつき合い方は生き方

時間と仕事とのつき合い方。現代人にとって忙しさは良薬であり毒薬でもある。どうやってつき合うのかは、結局自分次第だろう。誰かにコントロールされるのではなく、自分で自分をコントロールする。それが上手な時間とのつき合い方。つまり、自分とのつき合い方、生き方だ。