ヨガにも好転反応ってある?それともない?

ヨガにも好転反応ってある?それともない?

健康食品のお店や、マッサージサロンなどで良く聞く言葉“好転反応”。これはヨガにもあるのでしょうか?

そもそもの好転反応という言葉の起源や意味、法律との兼ね合いとは?また、ヨガ後の一時的な体調不良をどのように捉えるべきでしょうか。今回は、そんな好転反応にまつわる気になること、全てお答えします!

そもそも好転反応とは

好転反応って何?
そもそも好転反応って何?

「ヨガ」、「好転反応」と検索すると、実に様々な情報がヒットしてきます。それらのサイトを見ていると、「ヨガ後の一時的な体調悪化は、体調が良くなる前の好転反応です」と書かれているものがほとんどです。

そもそも好転反応とは、東洋医学での概念であり漢方薬の教科書では下記のように記載されています。

服薬後に出現する予期せぬ症状の悪化で、その後に顕著な症状の改善が現れる時、この悪化を一種の好転反応と考える。出現期間は経験上、服薬開始から3〜4日以内が多く、1週間程度持続することもあり、その後は劇的に病態が改善する。1)

気をつけなければならないのは、副作用を好転反応と誤認することです。服薬を中止すべき副作用が出ているにも関わらず、好転反応だと思い継続することがないよう、漢方医学ではどの時期に、どの程度の頻度で、どんな症状の好転反応が出るのか、科学的に検証がされています。

一方で、いつしか健康食品や民間療法にまで“好転反応”という言葉が使われるようになりました。漢方以外で使われる「好転反応」という言葉には注意が必要です。それに科学的根拠はあるのか?商品を売るためのセールストークではないか?きちんと考える必要があります。

ヨガの好転反応、あるの?ないの?

最初にお伝えしたいのは、漢方医学のようにヨガの好転反応は、どの時期に、どの程度の頻度で、どんな症状がでるのか、科学的に検証されていないということです。

つまり、科学的根拠がありません。だからと言って「ない」とも言い切れないのです。検証されていないのですから、「わからない」というのが一番正確でしょう。

ただし、現在あるヨガの科学的検証の結果から推測することはできます。私は様々なヨガの文献を読んできました。文献には、ヨガの効果を検証するために行った実験について記載されていますが、合わせて予期せぬ反応(有害事象と言われる)についても必ず記載がされます。

もしもヨガの好転反応が一般的であるならば、私が読んできた多くの文献で「実験開始直後になんらかの有害事象が現れた」などと記載があるはずです。ですが今まで、私はそうした記載に出会ったことはありません。

こうしたことからも、ヨガにおける好転反応が起きる可能性は0%ではないが、一般的な症状だとは言えない、と考えるのが良いのではないでしょうか?

言葉に惑わされないで

周りの人の言葉に惑わされる女性
「好転反応」という言葉に惑わされないで

“好転反応”という言葉の怖いところは、健康被害が発生しているにも関わらず、「体から毒素が出ている証拠」「良くなる前の前兆です」などと言って、商品・サービスを継続してもらうためのセールストークに使われることです。

また、法律的観点から言えば、承認された医薬品以外で好転反応の説明を行うことは禁止されています。

インストラクターの方が、ヨガ後、頭痛や怠さなど体調不良が起きた生徒さんに「それは好転反応です」と言うのは厳密には法律違反になる可能性があります。また、生徒さん側の方は、仮に先生に「好転反応だ」と言われるなどして、ヨガ後の体調不良を我慢する場合、十分気をつけなければなりません。

本当に一時的に収まる症状ならば大事には至りませんが、一部には重篤な体調不良の前兆にも関わらず見逃される危険性があるからです。このようなことがないよう、漢方では好転反応の経過について検証されていますが、ヨガではされていないのですから、尚更です。

自分に正直に、ヨガと向き合おう

とはいえ、「ヨガ後に好転反応を経験した」というブログ等もネットでは散見されます。私は、こうした経験を否定しているわけではありません。ただ、「それが他の人にも当てはまるのか?」という疑問に対しては、前述の通り「可能性0%ではないが、一般的な症状だとは言えない」と考えています。

私自身もヨガ後に頭痛や怠さを経験したことがありますが、その際には「好転反応だ!」というより「自分の体・心の声を無視して、頑張りすぎちゃったかな?」と反省します。

ヨガの練習は、体調を無視して決められた練習内容をこなすことや、美しいアーサナをとること、長く呼吸法・瞑想をやることが目的ではありません。自分の身体・心と向き合うこと、そして安定した状態へと導く練習です。

ヨガを行うと心身共にエネルギーに満たされる感覚がありますが、同じ練習でも身体や心の声を無視して行うと、不健康に繋がる場合もあることを覚えておきましょう。

そしてヨガ後、体調不良に見舞われた際には“好転反応”と決めつけることなく、今一度「自分の身体・心の声に耳を傾けていたか?」と自分自身に問いかけてみるのが良いと思います。言葉に惑わされることなく、自分に正直に、ヨガと向き合いたいですね。

参考資料

  1. 日本東洋医学会学術教育委員会編集,漢方専門医のための漢方医学テキスト,日本東洋医学会,東京2009, 55