コロナで孤立・運動不足:シニアの悩みにヨガでトータルケアを

コロナで孤立・運動不足:シニアの悩みにヨガでトータルケアを

感染予防のための社会的距離は、高齢者の孤立や運動不足といった問題を引き起こしています。

これらによる精神的・身体的ストレス・不調に対してヨガが有効であると、インドの統合医療研究センターがオススメしています。その根拠やシニア世代がヨガをやるにあたって注意することをご紹介します!

コロナで深刻化?シニア世代の孤立と運動不足

転倒や発作を起こす高齢者
コロナでシニア世代の孤立と運動不足が深刻化

最近、高齢者施設では家族の面会が制限されるなどの感染対策が行われており、これは新型ウイルスの脅威から高齢者を守る一方、シニア世代の孤独、心理的ストレス、認知機能の悪化に繋がるのではと懸念されています。

更に、外出自粛が続くことで高齢者の運動不足も問題となっています。国立長寿医療研究センターの調査によると、新型コロナウイルスの感染予防による外出自粛のため、高齢者の身体活動量は3割も減少1)しているそうです。

同センターでは、「感染予防のためには、外出を控えることが重要だが、高齢者の場合、身体活動量が減少することで転倒・骨折しやすくなるなど、要介護状態に至りやすくなる」として、感染予防と身体活動のバランスを適正に保つことが重要と呼びかけています。

どのような世代でも多かれ少なかれ新型コロナウイルスの影響を受けていますが、特に高齢者でその影響が深刻になりかねないことがわかります。

高齢者のケア:ヨガとマインドフルネスの重要性

こうした問題に直面しているのは日本だけではありません。インドの統合医療研究センターでは、これらの問題に対してマインドフルネス・ヨガなどのマインドボディプラクティスが有効である、とオススメしています。その根拠を見ていきましょう。

疲労の軽減と転倒リスクを減らす2)

シニアヨガは、筋力と持久力、姿勢の安定、バランスをもたらし、疲労の軽減と転倒リスクを減らす効果がある。

不安感やうつ気分を減らす3)

ヨガの中でも特に、呼吸法・瞑想・リラックスすることが不安やうつ症状に効果的である。

呼吸器感染症のリスク軽減4)

マインドフルネスヨガや運動を行うと通常の生活を送っている人に比べて呼吸器感染症にかかるリスクが減る。

認知機能を高める5)

シニアヨガは、学習や記憶、認知能力などを高め、60歳以上の認知症予防に効果的である。

また、上記以外にも、心血管疾患・糖尿病・慢性腰痛など、高齢者が抱えやすい持病に対して、ヨガには好ましい効果があると示唆されています。だからこそ、インドの統合医療研究センターはマインドフルネス・瞑想を組み合わせたヨガをシニア世代にオススメしているのです。6)

ヨガのトータルケア力

ヨガや瞑想、呼吸法で心身を整える高齢女性
日常生活にヨガを取り入れて、心身のケアを。

これまで見てきたように、ヨガの大きな特徴はピンポイントで何かの不調に効果があるというよりは、心や身体の不調に多面的な効果が期待できることです。

高齢者は60〜80%が何らかの疾患を抱えているとも言われており、身体的な問題を抱えやすくなります。また、高齢になるに従って睡眠が浅くなることや、社会的交流が減ることなどから精神的な問題も抱えやすくなる世代と言えるでしょう。

ヨガは身体を動かす“アーサナ”に加えて、呼吸を制御する“プラーナヤーマ”、心に向き合う“瞑想”と多面的なアプローチがあります。これらを組み合わせて心身を整えていくことによって、最終的には“心と身体を結びつける”というのがヨガの醍醐味です。

心や身体がたくさんの歯車によって動いていると想像してみましょう。西洋医学は、壊れた歯車を見つけ、その歯車を交換・修理していくイメージです。一方、ヨガは錆び付いて動きが鈍くなった歯車に油をさしていって、全体がスムーズに動くようにしてあげるイメージではないでしょうか?

高齢者に限らず私たちにとって、どちらも必要なアプローチです。ただし、コロナによる孤立や運動不足からなる身体的・精神的な不調は、「どこかの歯車が急に壊れた!」というより「歯車の動きが全体的に悪くなってしまった」という状態だと言えるでしょう。だからこそ、トータルケア力があるヨガがオススメされているワケです。

安全に気をつけながらシニアヨガを

コロナによる高齢者の孤立ストレス・筋力低下の予防ため、ヨガによるケアはオススメですが、注意点もあります。それは、高齢者は持病を抱えている確率が高いということです。

ヨガは比較的安全な運動だと知られていますが、まれに怪我や病気の悪化のきっかけとなってしまう場合もあります。特に注意が必要な持病を2つ紹介します。

骨粗鬆症

骨量が減少し骨折しやすくなる病気です。ヨガ中、無理に前屈したことで、椎体(腰骨)を骨折してしまった例があります。女性では特に注意が必要です。

緑内障

眼圧が上昇し、視神経に損傷を与える失明の恐れもある病気です。心臓より頭を下げるポーズで急性緑内障になった例、慢性緑内障の悪化が報告されています。緑内障がある方は、心臓より頭を下にするポーズは避けましょう。

これらのリスクを理解し、プロップスや椅子を活用しながら“無理せず”シニアヨガを取り入れたいですね。

参考資料

  1. 感染予防と身体活動(参照日:2020年7月14日)
  2. J.M. Kraemer, et al, J. Psychol., 143 (2009), pp. 390-404
  3. M. de Manincor, et al, BMC Complement. Altern. Med.,15(2015), p. 85
  4. B. Barrett, et al, PLoS One, 13 (2018), Article e0197778
  5. Y. Zhang, et al, Int. J. Environ. Res. Public Health, 15 (2018), p. 2791, Mohanty. S, et al, Asian J psychiatry, 2020 Jun 13;53:102199
  6. Cramer H, et al, PLoS One, 8(10),2013