いまこそ心のエネルギーを補充し、ストレスマネジメント術を身につけよう

いまこそ心のエネルギーを補充し、ストレスマネジメント術を身につけよう

オンラインで診療をしている様子
オンラインで診療をしている様子

新型コロナウイルス流行を機におこった大きな環境変化のうちの一つが遠隔(リモート)コミュニケーションの増加でしょう。

ヨガインストラクターの先生の多くがリモートでヨガのレッスンを行っています。医療業界もオンライン診療が増えてきました。子どもの幼稚園の授業ですら、Zoomで行うところが出てきたり、飲み会もオンラインで開催する人が増えていますね。

新型コロナウイルスの流行の影響で、これほどまでにリモートが進むとは1月には予想もしていなかったことです。新型コロナウイルスはまさにゲームチェンジャーなのです。ゲームチェンジャーとはこれまで当たり前だった状況を大きく一変させるような人や企業、出来事などを指しますが、新型コロナウイルスの流行はこれまでの状況を一変させたといっていいでしょう。

オンライン診療については政府の強い後押しにより一気に風穴があきました。これまで初診でのオンライン診療は認められていなかったのですが、新型コロナウイルスの流行により解禁されたのです。

筆者は先日沖縄の離島の方を診察しました。離島という遠方の方とお会いできたことに素直に驚きましたが、規制緩和のおかげで普段出会えないような方にも会えたのです。

筆者もオンラインでヨガクラスを試してみました。ニューヨークから先生がリアルタイムで教えてくれる。こんな素晴らしい機会が得られるとに感動です。

音声も全く問題ないですし、先生の自宅と思われる場所が映っているのもなんだかほっこりします。

リモートでは埋まらない“寂しさ”とどう向き合うか

パソコン作業中に物思いにふける女性
リモートでは埋まらない“寂しさ”とどう向き合うか

一方で、リモートの限界を感じることが多いのも事実です。オンライン診療では当然触診ができないことが致命的な欠陥です。さらに全身が見えないことや、詳細な表情を感じ取ることができないもどかしさを感じています。

オンラインのヨガクラスを受けているときはどうでしょう?スタジオで感じる周囲との一体感や、マットが隣あって自然と生まれる会話から友達になるといったセレンディピティのような感覚は当然ありません。

このままヨガは自宅で!という方向で、このように人と繋がる感覚がなくなるのだろうかと一抹の寂しさを感じました。人はそれほどまでに人との関係性を求めている存在なのでしょう。

クリニックで寄せられる様々な相談のなかで多くの方が訴えられるのが「寂しさ」です。

緊急事態宣言が出される中、単身赴任で東京に在住し家族が住む関西に帰りたくても帰れない男性は、テレワークでたくさんの人とビデオ会議や雑談をしているにも関わらず、ふとした瞬間に寂しさを感じると話されていました。

また、家族は近くにいるけれど、外国人のフィアンセと直接会えない寂しさを訴えられる女性もいらっしゃいます。会社に出社しても同僚との席が遠く離れ、食事も独りでとることで余計に寂しさを感じるという方もいらっしゃいました。

寂しいとはどういった感情でしょうか。

寂しいという感情は「こころのエネルギーが不足している」というサインなのです。こころがエネルギーを必要としているのですから、エネルギーを補給してあげれば寂しさはじきになりやみます。ではエネルギーはどのように充電すればよいのでしょう?

寂しさは、安全な関係性によって解消される

それは安全な関係性からのみ得られるのです。信頼する人とお互いに慰め合い、励ましあったり、他愛のない愚痴をいったりする関係です。たまにしか充電できなくても、その関係で心のエネルギーがたくさんできれば充電は長引きます。

筆者も友人や先輩の顔が頭に浮かびました。本当に大切な数人です。自分で書いていて気づきますが、大切な関係性にどれだけ「こころのエネルギー」を補給してもらっていたのか。そのことに気づきハッとしました。困ったとき、しかも深夜に電話をかけられるか、そんなことが安全な関係の目安になるのかもしれません。

いっぽうで、たとえ300人とSNSでつながっていたとしても、安全な関係があまりないのであれば、投稿に“いいね!”がついても寂しさは膨らむばかりでしょう。安全で気のおけない仲間がいることが「こころのエネルギー」の補給につながるのです。

家にいる時間が長くなった今、ご自分にとって本当に大切な数人を思い浮かべ、彼らと電話やインターネットを介して会話をすることを優先してみてはいかがでしょうか?

一人の時間をSNSの投稿に費やすのももちろん有意義ですが、返ってくる反応が多ければ多いほど、投稿に気を取られ“いいね”の数に執着し結果として“こころのエネルギー”が枯渇する原因にもなるでしょう。今こそ“こころのエネルギー”の補給が必要なときなのです。

以前新型コロナウイルス流行下の過ごし方について書かせていただきました。そちらも併せて、チェックいただければと思います。

猛威をふるう、新型コロナウィルスとの向き合いかた

オンライン朝ヨガの習慣が、ストレスをケアしてくれる

オンラインでヨガを受ける女性
オンライン朝ヨガの習慣が、ストレスをケアしてくれる

筆者は精神科医をしているのでストレスマネジメントについてお問い合わせをいただく機会も多いのですが、先日広報番組のディレクターの方とお話する機会がありました。

筆者としてはストレスマネジメントについて大真面目に語っているわけですが、「早寝早起き」・「お酒を飲みすぎない」「運動をする」など、正直いってあまりコンテンツとしては面白くない話が続いていることに、ディレクターさんと話していて、気がついてしまい……(笑)。ではどうやったらストレスマネジメントが一般の方に向かって刺さるようになるのか?などについて議論しました。

おそらくヨガインストラクターの先生は生徒さんからストレスマネジメントについて問われることが多いと思います。

今、コロナウイルス流行下のストレスマネジメントに筆者が問われたときには、端的にこう答えています。

「毎日決まった時間に、同じ事をすること」

付け加えるのであれば
「朝外にでなくてもいいから光に当たること」

こころのバランスが取れるセロトニンや夜眠りを誘うメラトニンが脳内で出るからです。

そういった意味でヨガクラスのオンライン化が始まって、朝ヨガのクラスが増えたのは素晴らしいことだと思います。とくに働く人々が参加できる6時台や7時台のクラスが自宅で受けられるのは画期的です。

「毎日決まった時間に同じ事をすること」は一人では苦しいし、何よりもつまらない。でもいつもの先生がPCのむこうから明るく迎えてくれたらどうでしょう?きっとその生徒さんは早起きが嬉しくなり習慣化できます。これ以上のストレスマネジメントはないと思います。

まだまだ新型コロナウイルスの流行は予断を許しません。この難局をヨガのちからを信じて、乗りきって参りましょう。

参考資料

  1. 堀越勝『感情の「みかた」』(田畑書店、2015年)
  2. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、 こころの健康維持のコツ
  3. ※国際双極性障害学会:時間生物学・時間療法タスクフォース ・光療法・生物リズム学会 が出している新型コロナウイルスが流行しているときの健康維持のコツを解説しています。日常の生活リズムの維持の重要性について書かれており、参考になります。