身体と対話:股関節内転筋群の機能を解剖学的に解説!

身体と対話:股関節内転筋群の機能を解剖学的に解説!

これまで、股関節の筋肉のうち大臀筋、中臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、腸腰筋について解説してきました。それぞれの作用は下記のとおりです。

大臀筋
ハムストリングス
股関節伸展
中臀筋股関節外転
大腿四頭筋(大腿直筋)
腸腰筋
股関節屈曲

今回は、股関節の内転を司る、股関節内転筋群という複数の筋肉について、見ていきたいと思います。

股関節内転筋群の基礎知識

起始大内転筋
恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節
長内転筋
恥骨結節の下方
薄筋
恥骨結合下方の恥骨下枝
停止大内転筋
大腿骨粗線内側唇、内側上顆の上方の内転筋結節
長内転筋
大腿骨粗線内側唇中1/3
薄筋
脛骨粗面内側
作用大内転筋
股関節内転、伸展(繊維によって屈曲)
長内転筋
股関節内転、屈曲
薄筋
股関節内転、屈曲/膝関節屈曲、内旋

股関節内転筋を構成する筋肉は大内転筋・小内転筋・長内転筋・薄筋・恥骨筋ですが、今回は、このなかより主な機能を司る大内転筋・長内転筋・薄筋について解説します。

それぞれ股関節を内転するという共通の作用のほか、大内転筋は伸展を。長内転筋と薄筋は屈曲を担います。

大内転筋

大内転筋
大内転筋

大内転筋は名前に「大」とつくことからも想像がつきますが、内転筋群のなかでもっとも大きな筋肉です。名称に「内転」とつきますが、主な作用は股関節伸展

そのパワーは大臀筋やハムストリングスなみで、走る時に活躍します。さらに、部位によって股関節伸展だけでなく股関節屈曲の作用があることも覚えておきましょう。

また、大内転筋の一部に、大腿四頭筋のひとつである「内側広筋」が付着していることから、内側広筋の収縮を促通するべく大内転筋にアプローチすると、内側広筋の収縮効率が向上します。

例えばヨガで「山のポーズ」をする際、身体の中心軸をイメージするために、折り畳んだタオルを太ももに挟むことがあるでしょう。この時、タオルが落ちるか落ちないかくらいの弱い力で挟むと骨盤底筋群が働き、強めに挟むと大内転筋を通じて、内側広筋が収縮。その結果、身体の中心軸をイメージしやすくなるのです。

ちなみに、内側広筋は変形性膝関節症や前十字靭帯再建術術後の治療をする上で重要な筋肉になります。

なお、大内転筋の下には神経が通っており、大内転筋の柔軟性が低いと神経を圧迫し膝の内側に痛みを誘発することがありますので適度な柔軟性も必要です。

長内転筋

長内転筋
長内転筋

長内転筋には股関節屈曲の作用がありますが、股関節を60°以上曲げると股関節伸展の作用に切り替わります。

長内転筋は非常に見つけやすい筋肉です。次の方法で、誰もが簡単に、把握できます。

  • 仰向けになり両膝を立てる
  • 両膝を外側に開く

そのときに見える、太ももの内側のスジ、それが長内転筋です。サッカー選手にとって、非常に重要な筋肉で、力強くボールを蹴る際、この筋肉のパワーが必要になります。

薄筋

薄筋
薄筋

大内転筋、長内転筋とは違い、膝関節屈曲の作用もある二関節筋です。薄筋の停止部位は脛骨にあります。

薄筋のオーバーユースにより、付着部の脛骨内側(膝関節の内側)に痛みが出現する疾患を、鵞足炎(がそくえん)といいます。補足情報として、この筋肉は前十字靭帯再建術後の再建靭帯として活用されるケースが多ことも覚えておきましょう。

股関節内転筋群を鍛えれば、O脚も改善

股関節内転筋を鍛えることで、骨盤や下半身を安定化することができ、かつO脚改善にも非常に有効になります。もし生徒さんのなかに、O脚に悩まれている方がいたら、股関節内転筋群へのアプローチを教えてあげるとよいでしょう。

股関節内転筋群を使うアーサナは、次のとおりです。

股関節内転筋群を強化

股関節内転筋群を強化
股関節内転筋群を強化
  1. 鷲のポーズのような股関節を内側に締めるアーサナ
  2. イスのポーズや捻ったイスのポーズ

2は、股関節を内転位にはしていませんが、脚が開かないように股関節を閉じていますので、股関節内転筋群を使っていると言っていいでしょう。

股関節内転筋群をストレッチ

股関節内転筋群をストレッチ
股関節内転筋群をストレッチ
  1. 開脚前屈のポーズ
  2. 三角のポーズ

……などのような股関節を開くポーズです。

この他、高難度のアーサナでは、股関節内転筋群だけではなくハムストリングスの柔軟性も非常に重要になります。また、安楽座、蓮華座などの坐法も股関節内転筋が硬いと安定して座ることができません。ベーシックのアーサナから、しっかり伸ばしていきましょう。

今回は股関節内転筋群について解説しました。股関節内転筋群の役割を知り、アーサナの質を高めていきましょう。