身体と対話:広背筋の機能を解剖学的に解説!

身体と対話:広背筋の機能を解剖学的に解説!

広背筋は骨盤から上腕骨に付着している筋肉。以前、解説した僧帽筋と同様に背部を“大きく”覆っている筋肉のため、発揮するパワーも強大です。

身体との対話:僧帽筋の機能を解剖学的に解説!

骨盤・脊柱・上腕骨に付着しているので脊柱や肩関節の動きと密接に関与。今回はそんな広背筋の解説をしたいと思います。

広背筋の概要

広背筋の概要
広背筋の概要
起始
[筋肉の付着部位(支点)]
  1. 下位6個の胸椎棘突起・腰仙椎棘突起
  2. 腸骨稜外唇
  3. 下部肋骨
  4. 肩甲骨下角
停止
[筋肉の付着部位(作用点)]
上腕骨小結節稜
作用
  • 上腕を上から下に引き下げる(伸展)
  • 上腕を内側にひねる(内転・内旋)

広背筋は肩関節伸展の作用があり、特に肩関節屈曲位(手を上げた状態)から伸展する時に大きなパワーを発揮します。動作で言えば物を自分の方に引き寄せる際に広背筋は強く働きます。

広背筋を鍛える代表的なトレーニング「懸垂」は、手を支点にして、まさに肩関節を伸展させることで大きなパワーを発揮しながら身体を引き寄せる動作です。

さて、まずは広背筋の主な作用である、肩関節の伸展・内転・内旋を、その場で感じるために、脱力した姿勢で立ってみましょう。

すると、腕は身体より前に出て猫背のような姿勢になるかと思います。これが、肩関節が内転・内旋した状態です。

次は、背すじを伸ばすようにして綺麗な姿勢で立ちます。

腕は身体の前には出ずに真横にきますね?腕を前から後ろに引いた姿勢、つまり肩関節を伸展方向に動かしているということになります。

このことからもわかるとおり、広背筋は姿勢に関与しているので、「抗重力筋(姿勢を支える筋肉のこと)」の一種とされています。

広背筋を使う、主なスポーツ

柔道やレスリングのような、相手を掴んだり、力強く引き寄せることが重要な競技。また、サッカーやバスケットボール、ラグビーなどのコンタクトスポーツにおいては、相手に負けない強い身体を作るうえで広背筋が必要になります。

たとえばサッカーで、ボールを取られないよう、相手を身体の背後にキープして手で押さえている場面では、広背筋のパワーが不可欠です。

また、レスリングの選手が天井からぶら下がったロープを手の力だけで登るトレーニング姿をテレビで見かけたことがあると思いますが、あれは手で強く握りながら登ることで広背筋を鍛えているのです。

広背筋が働くアーサナ

広背筋が働くアーサナ
広背筋が働くアーサナ

<上半身を支えるポーズ>

  • 東のストレッチ
  • 賢者のポーズ
  • チャトランガダンダーサナ

<健康骨を引き寄せるポーズ>

  • コブラのポーズ
  • 橋のポーズ

広背筋がストレッチされるアーサナ

広背筋がストレッチされるアーサナ
広背筋がストレッチされるアーサナ
  • ダウンドッグ
  • チャイルドポーズ
  • 牛の面のポーズ

広背筋の伸長性が低下すると手を上げる動作を制限します。

そのため、ヨガの動作においては、たとえばダウンドッグをする際、手のポジションを上手くキープできなくなるので脊柱のアライメントが崩れたり、肩がすくんだりと、適正フォームを維持しにくくなりますので、あまりにも広背筋の伸張性が低い場合には、上記アーサナのほか、専用のアイテムを使って筋膜リリースすることも有効です。

私の主観ですが、ハンドスタンド、ピンチャマユラーサナをする場合、広背筋の伸長性を促してから行うと肩が上がりやすくなり姿勢をキープしやすいイメージがあります。

今回は広背筋について解説しました。広背筋は肩関節の動きや良い姿勢を保つのに関わる筋肉です。これを機会にぜひ覚えておきましょう。