ヨガの健康増進効果を倍増させる、腹圧の高め方

ヨガの健康増進効果を倍増させる、腹圧の高め方

健康ブームの昨今、ヨガやピラティスなど様々なエクササイズがブームになっています。楽しく効果的に、健康増進効果を得られるものが増えていますが、望む変化を得たいなら、どのエクササイズであっても、腹圧を高めて、機能的かつ効果的に身体を動かすことが重要です。

そこで今回は、腹圧の解説と、簡単な腹圧トレーニングを紹介したいと思います。

腹圧とは何か?

腹圧とは、腹腔内にかかる圧力のこと。横隔膜、骨盤底筋群、多裂筋群、腹横筋で構成された、いわゆる体幹部の筋肉が働くことにより高まります。これらの筋肉は身体の中心部である胸郭、脊柱、骨盤に付着していますので、身体を安定させる役割があります。

腹圧でよく表現されるのがバルーンです。空気が完全に入らずショボショボになってしぼんでいる状態が、腹圧が低い状態。空気がしっかり入りパンパンに膨れている状態が、腹圧が高い状態となります。

もし、バルーンの上に座ることになった場合、空気がしっかり入っている方が、安定感がありますよね。一方、もししぼんでいたとしたら、その上に安定して座ることはできないでしょう。

同様に、腹圧が低いと腹部より上にある胸郭や頭部の位置が安定しないのでアライメントが崩れてしまうでしょう。適正なアライメントを保つには、腹圧が高くないといけないのです。

四肢を動かす時、動かす部位の筋肉が働いているように見えますが、実は四肢を動かす前に腹圧が高まり、身体の中心部を安定化させているのです。身体の中心部が安定することで四肢を自由に動かすことができます。

対して腹圧が低い状態では、先にも解説したとおり、アライメントが不安定です。その状態で四肢を動かすと腰や肩、ヒザなどの部位にストレスが加わり、いつか痛みを生じさせてしまうでしょう。また、身体の中心部が安定してないと筋力も上手く発揮できません。

たとえば、大きな大砲を搭載した船が2隻あるとします。ひとつは戦艦のような大きな船で、もう一方は数人乗れる程度の小さな船です。大砲を発砲した場合、大きな船は海上で安定しますので大砲の機能を思う存分発揮できます。

しかし、小さな船だと発砲した時に船体が大きく揺れてしまい本来の機能を発揮することはできません。かつ船体自体も発砲による反動で大きなストレスを受けます。

これと同じで身体の中心部が安定していないと四肢本来の筋力を発揮できないばかりか、身体のどこかに余分な負荷がかかることは容易に想像がつきます。

これらの機能以外にも腹圧は排泄のコントロールという非常に重要な役割があります。腹圧が機能していないと排泄したい時にうまく排泄できないだけでなく、腹圧が高まった時に尿失禁してしまう可能性も……。女性の場合だと分娩時に腹圧が高まらないと上手く出産できないこともあるようです。

ヨガにおける腹圧の重要性

ヨガにおいてももちろん腹圧は非常に重要です。

腹圧が高まった状態でアーサナを行うことで、身体の各部位にかかる余分なストレスを軽減することができます。私が勤務する、整形外科には、ヨガで身体に痛みが生じたという患者様が来院されます。

痛みの背景には様々な要因があると思いますが、腹圧が低下した状態でアーサナを行ったことも原因のひとつだと十分に考えられます。

ただ、レッスン中は指導者による声かけで、坐を組んで呼吸に意識する時間があると思います。これにより、アーサナ中にも丁寧に呼吸をできているなら、腹圧を高めて取り組めているはずです。

腹圧を高める練習

腹圧を高める練習として2種類ご紹介します。

腹圧を高める2種類のトレーニング法
腹圧を高める2種類のトレーニング法

呼吸で腹圧を高める

これは、次のステップで呼吸法により腹圧を高める方法です。

  1. マットに仰向けに寝て両ヒザを立てる
  2. 時間をかけてお腹を絞るようにしながら息を吐きます。この時、鼻、口どちらでも構いません。ポイントはお腹の前面だけでなく側面も絞るように意識することです。
  3. 鼻から息を吸いながら、絞ったお腹を膨らましていきます。この時も前面だけでなく側面も膨らむように意識します。
  4. 次はお腹を膨らませたままで息を吐きます。指を立てて、お腹に当て、腹部に力が入っていることを確認します。腹圧が高まっていない場合、指がズブズブとお腹に入ります。指がお腹に入り込まないようにお腹に力を入れてください。
  5. お腹を膨らませたままであとは呼吸を繰り返します。

目的は腹圧を高めたままで、いかに自然な呼吸ができるかどうかです。呼吸をして腹圧が抜けるようだと当然動作においても腹圧が抜けてしまいます。

トレーニング用の砂袋を使う

トレーニング用砂袋(リスト・アンクルウエイト)を使い、次の手順で腹圧を高める練習をしていきます。

  1. マットに仰向けに寝て両ヒザを立てる
  2. トレーニング用砂袋をお腹の上に置く。この時、おへその上を中心にお腹全体に砂袋が乗るようにしてください。重さは1〜2kgくらいが良いでしょう。
  3. 腹式呼吸を行います。息を吸う時はお上に乗っている砂袋を押し返すように、お腹を膨らませます。吐く時は砂袋の重さを利用してお腹を凹ませます。
  4. 1〜3を繰り返す

お腹に何も乗っていない状態だと呼吸の時に腹部がどのように使われているのかわかりにくいですが、砂袋をお腹の上に置きその重みを利用することで、腹部への意識を高めることができます。

ポイントは吸う時も吐く時も砂袋に抵抗する意識を置くことと、腹部の前面だけでなく側面を引き締まるように軽く力を入れることです。

力が入ってないお腹の部位は指を当ててみるとたるんでいて力が入っていないことがわかります。その場合は、お腹に指を突き当てたままで、その指に抵抗するよう、お腹に力を入れる練習をしましょう。

以上2つの練習は、腹圧を高める基本的な方法になります。ヨガの呼吸法とは少し違いますがレッスンの始めに取り入れても良いでしょう。