元製薬会社勤務のヨガインストラクターが考える“薬”のあれこれ

元製薬会社勤務のヨガインストラクターが考える“薬”のあれこれ

この記事への私の想い

この記事を書くに至った経緯をまずは、お話させて頂きたいと思います。ヨガジェネレーション代表のMIKIZOさんとオンラインミーティングをしていた時のことです。お互いの自己紹介をし、あれこれお話させて頂いているうちに、「私にしか書けない記事を書いてほしい」というお話を頂いたのです。

ライター尾賀絵里さんプロフィール写真
ライター尾賀絵里さんプロフィール写真
私にしか書けない記事???

なんだろう?

と、「?」マークがいっぱいでしたが、やはり元製薬会社勤務という少し珍しい経歴がヒントになるのではないかと思いました。

  • 製薬会社を辞めて、ヨガ業界に転職した。
  • 薬だけでは補えきれない“心と身体”を整えるのにヨガが役に立つと思った。

といった私の経歴や、転職に至った想いをお伝えすると、誤解を受けることがあります。それは、“私が「薬=悪、ヨガ=善」と思っているのではないか?”と思われることです。

実は、私はそうは思っていません。今回の記事では、私が考える薬のあれこれを率直にお話したいと思っております。

そして読んで頂くにあたって、最初にお伝えしておきたいことがあります。それは、私は医師でもありませんし、薬剤師でもない、ということです。ただ、製薬会社での勤務経験がある他の人よりほんの少し薬に対する知識がある“素人”の一意見、として捉えて頂けたら幸いです。

ヨギーニに多い?「薬は飲みたくない」という考え

製薬会社からヨガ業界に転職して、最初に感じたのは「ヨガに携わる人が薬にあまり良いイメージを持っていない」ということです。ヨガインストラクターや生徒さんからこんなことを言われるからです。

写真がない女性のイラスト
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病院に行ったらこの薬を処方されたんだけど、なんか怖くて飲めない

体調悪くて市販薬を買ったんだけど、これって飲んでも大丈夫?

女性のアイコン2
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担当者のイメージイラスト
担当者のイメージイラスト
昨日、体調悪くて薬を飲んじゃった

薬を飲むなんて、私ダメよね?

女性のアイコン3
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こうした声には、大きくわけて2つの不安や感情が込められているような気がします。

  1. 薬の安全性に不安がある。
  2. 薬を飲む私=ダメな私

私は、過度に薬を不安に思う必要はない、と製薬会社勤務の経験を通して感じています。薬は必要としている人がいるから開発され、発売や処方に至っているのです。ですから、必要な時に必要な薬を飲むということは、全くダメな行為ではないと思います。むしろ、“ダメ”と思うことで、効果のある薬も悪い方向に作用してしまうのではないか、と心配しています。

こうした不安や感情に対する私の想いや、あまり知られていない製薬業界のお話を出来る範囲でお伝えさせて頂きます。

発売されている薬は、全て安全性の試験を行っている

意外と知られていないのが、発売されている全ての薬において、安全性の試験が行われていること、そして発売後も安全性についてモニタリングされていることです。

皆様ご存じの通り、薬には効果(ベネフィット)以外に副作用がでる場合(リスク)があります。このことが、薬を不安に思う第一の理由かと思うのですが、リスクに対してベネフィットが上回ると臨床試験において示された薬のみ発売、処方されているのです。

ですから、製薬会社は臨床試験の段階で、ベネフィットに対してリスクが上回ると示されれば、その新薬の開発を諦めざるを得ません。とても高い効果が見込めそうで期待されている新薬であっても、どれだけ多額の研究費用を投じていても、諦めざるを得ないのです。私が勤務していた数年間でも、期待されていた新薬が開発中止になった場面を何度も見てきました。

こうしてベネフィットがリスクを上回ると判断された薬が、晴れてその薬を必要としている方に届くのです。

自分で出来る「薬をより安全に服用する方法」

ご紹介してきたように、これだけ安全性に対して科学的に検証されていても、副作用が出る場合もあります。これは残念ながら、事実です。

ただし、ちょっとした心がけで、副作用を予防もしくは軽減することもできるのです。

一般の方向けに薬の情報を発信しているくすりの適正使用協議会では、「リスクを少なくかつベネフィットを最大限にする方法」を発信しています。まずは、その内容を見てみましょう。

  1. かかりつけの医師、薬剤師等と話をする
  2. 普段つかっている薬について知っておく
  3. 薬のラベルをよく読んで指示に従う
  4. 相互作用を避ける
  5. 薬の効果をモニターする

引用:くすりの適正使用協議会 (一部改変)[1]

この内容からもわかるように、医師・薬剤師から言われた“用法・用量”をきちんと守る、というのがとても重要です。食べ合わせや飲み合わせ、薬を飲むタイミング等で薬の吸収率等が変わってくる場合があるからです。

そして、普段から自分の身体に興味を持ち、些細な体調の変化に耳を傾けてみましょう。薬の効果を実感できるかもしれませんし、逆に副作用に早い段階で気づくきっかけになるかもしれません。そして、何か気になること、疑問点がある場合は、かかりつけの医師・薬剤師に相談し、“安心感をもって服用する”ということが重要だと思います。

また、服用している薬についてもっと知りたいという方は、くすりの適正使用協議会ホームページにて情報を得ることができますので、参考にしてみてください。

重要なのは、“自分を愛する”ということでは?

重要なのは、“自分を愛する”ということ
重要なのは、“自分を愛する”ということ

さて、ここまで薬のリスクとベネフィットにどう付き合うのか?ということをお伝えさせて頂きましたが、それ以前に私が大切だと思っていることをお伝えさせて頂きます。

それは、“自分を愛する”ということです。

「喉が渇いた時に、飲み物を飲む」「休息が必要な時に、休息をとる」という当たり前のことも自分を愛することだと思います。それと同様に、「必要な時に、薬を飲む」「薬を飲んでいたが、どうも自分の身体には合わないので、主治医と相談の上、薬の変更や服用を中止する」という選択も自分を愛することなのではないでしょうか。

「薬を飲んではダメ」もしくは「薬を飲んでいる自分なんてダメ」と決めつけるのではなく、その時その時、自分の心と身体が本当に必要としているものを受け入れることが、真の心と身体の健康に繋がるような気がします。

参考資料

  1. 一般社団法人くすり適正使用協議会(参照日:2019年11月4日)