屋上でヨガマットを持って空を見上げる女性

無理しない・怪我しない!心地よいヨガの秘訣は○○!

ヨガ指導者のみなさん、生徒に怪我をさせそうになった経験はありませんか?安全性はヨガ指導では特に配慮すべき事柄です。例えば生徒は指導者の言葉一つで正確にアライメントを取ろうとします。また、あなたが伝える言葉とデモンストレーションの内容によっても、彼らのとるポーズは大きく左右されます。
 
思い返せば私が教科書通りのアライメントを口頭とデモンストレーションで伝えても、生徒によっては痛みを覚えたり、怪我につながりそうになったりすることがありました。
 
その経験をしたことから勉強をして、ハートオブヨガ(以下、HOY)というアプローチを身につけたことで、生徒に本当に合ったヨガを提供できるようになりました。それは安全なだけでなく、リラックスして効果的に練習に取り組んでもらうことができます
 
そこで、私が学んだHOYの秘訣をご紹介します。この通りに実践するだけで、レッスンの安全性が改善され、さらにはポーズの効果を最大限まで引き出すことができます。

ヨガで苦しい思いをさせた経験はありませんか?

今から2500年ほど前に編纂されたヨガの経典『ヨーガ・スートラ』の1章2節に、ヨガの定義が書かれています。

ヨーガとは、心のはたらきを死滅することである

出典:現代人のためのヨーガ・スートラ

この短い文を意訳するなら「ヨガとは、心の苦しみを取り除くもの」です。ヨガを通じて苦しさを感じるようなら、その人にとって適切なヨガをしているとは言えません。HOYのJ・ブラウン先生は「痛み・苦しみがあれば、それはヨガではない」と言っていました。

冒頭でも話しましたが、私が指導をしていたときに、苦痛で顔を歪めている生徒がいました。アライメントを伝え、「顔を緩めましょう」と伝えたにも関わらず、痛みを我慢しているのが伝わってきました。この場合、私はその人にとって心地よい適切なヨガを伝えられなかったということになります。

生徒に合わないヨガは怪我につながる

友人の家で開かれたパーティーや飲み会の帰りに、他人の靴を間違えて履いてしまった。そんな経験があるかもしれません。他人の靴を履いたとき、当然違和感を覚えますよね。もし仮に、そのまま家まで帰るとしたらどうなりますか?靴のせいで歩きづらく、足が痛くなり、転んでしまうかもしれません。

実はヨガでも同じことが起きています。決まった型やルールに押し込まれた人は、他人の靴を履いているような違和感を覚えます。靴と違ってヨガは目に見えにくいですから、自分に合わないヨガを続けている人も実は多いのです。

立位の開脚前屈(プラサリータ・パドッダーナーサナ)で考えてみましょう。

立位の開脚前屈(プラサリータ・パドッダーナーサナ)
立位の開脚前屈(プラサリータ・パドッダーナーサナ)

非常に極端な例えですが、「足を左右に100cm間隔で開いて」というガイドがされた場合、身長150cmの方には最適なスタンスでも、身長200cmを超える男性には狭すぎます。スタンスの狭さが原因でポーズが不安定になったり、求める効果が得られなかったりするかもしれません。決まった型に押し込むということは、個々の身体の特性を無視していることに他なりません。

人は、自分ではない誰かになろうとすると苦しみを背負います
U.G.クリシュナムルティ
宗教的指導者として有名なJ・クリシュナムルティの弟子。現代ヨガの父と呼ばれるT・クリシュナマチャリアの友人であり、ハートオブヨガ提唱者マーク・ウィットウェルの師でもある。ハートオブヨガの思想に大きな影響を与えた人物。

生徒に合ったヨガを見つけるたった一つの秘訣!それは・・・

山を臨む屋外で心地よく腕を伸ばし立位の後屈をする女性
呼吸が心地よく取れているかどうかが重要なポイント

その秘訣とは、心地よく呼吸が取れることを基準にすることです!たったこれだけで、生徒を型に押し込むアプローチから、生徒に合った型を見つけ出すアプローチへ変わります。呼吸を中心に据えて練習することで、体全体で呼吸を感じ、心地よさを味わえるようになります。
 
具体的には、呼吸が始まってから動きを開始して、動きが終わってから呼吸が終わるように、動きを呼吸が包み込むように意識します。これが呼吸を中心に据える練習のポイントです。

加えて、「レッスン中は生徒全員のペースがバラバラでもOK」と伝えます。そのメリットは体の特徴に合ったアライメントを自ら発見できることにあります。理由は、呼吸が苦しくなった瞬間が限界点を超えたというサインですから、自ずと危険を察知できるようになります。呼吸を中心に据えた練習を重ねるごとに、呼吸がその人にとって心地の良い最適なポーズを教えてくれることに驚くことでしょう。

100人いれば100通りのヨガを伝えられる指導者になろう

こうした指導を心がけることで安全なだけでなく、生徒一人ひとりがプライベートレッスンを受けているような感覚を覚えます。文字通り、100人いれば100通りのヨガを伝えられる指導者になれます。加えて、ポーズの効果を最大限まで引き出せるため、生徒には今までよりもヨガの恩恵を感じてもらえるようになるでしょう。

まずは、あなたの生徒のために、徹底的に呼吸の重要性が伝わるレッスンを行ってみてください。

文・かっしー(柏原ゆうた)
ハートオブヨガティーチャー。大学在学中に解剖学、運動生理学、運動指導などを学ぶ。「ハートオブヨガ指導者養成講座」ベーシックおよびアドバンスを修了。レッスンや文章を通してハートオブヨガを草の根レベルで広めること、伝え続けることがミッション。