地方ヨガ生徒あるある?車移動での“脚力低下”に対応するクラスの作り方

地方ヨガ生徒あるある?車移動での“脚力低下”に対応するクラスの作り方

皆さん、こんにちは!私は2012年に出身地の東京から岩手に移住。現在はヨガ講師兼スタジオオーナーとして活動しています。指導を始めて8年目、私1人で全クラスをこなすスタジオ「yoga journey」には年間延2000人以上の生徒さんが訪れ、東北では数少ないRYT200認定校として指導者育成にも携わっています。

東京から岩手県に移住し、環境の変化はもちろんのこと、生活スタイルも激変。一番大きく変わったのは移動手段でした。東京ではバスや電車や徒歩での移動がメインでしたが、地方だと自家用車での移動が中心です。

地方では、公共交通機関の選択肢が少なく、時刻表もびっくりしてしまうような少ないダイヤです。ちなみに私の住まい周辺の現状だと、コンビニですら歩いて20分以上かかりますし、徒歩圏内に駅やバス停もありません。そして何より東北の厳冬期は、外を出歩くと滑って転んで骨折など怪我のリスクもあり、季節によっては、散歩やジョギングなど難しいのが現状です。

一番便利で安全な移動手段が車なので、私ももちろんほぼ毎日車に乗っていますが、そんな地方という環境でヨガを教え始めて見えてきた、生徒さんの中で一番目立った特徴が、「脚力の低下」と「足先の冷え」です。

特に車での移動が多い地方にとっては、「脚力の低下」とその延長線上にある「冷え」は止むを得ない部分もありますが、せっかくヨガを行なっているのであれば、この地域性に対応できたら良いなと思い、これまで私はクラス内容を工夫してきました。

今回は、私と同じような地方環境でヨガを指導している講師の方達に、私が取り組んできた工夫をシェアできたらと思います。そして、目の前の生徒さんたちに寄り添い、その地域の生活スタイルを知っているからこその有益なクラスを提供できるヒントになったら嬉しいです。是非最後までお読みくださいね!

車社会という地方の現状と、体と心への影響

地方では車移動も多く、なかなか歩くことが少ないのが現実
地方では車移動も多く、なかなか歩くことが少ないのが現実

東京で生活していると、バス停や駅まで歩く、電車に乗っていても混んでいるので立っていることが多いなど、脚を使う機会が多いです。でも地方だと、家を出たら車で職場まで一直線。職場では座り仕事が中心で、帰宅時は再び車…というように、ほぼ一日中座ったまま過ごす方が多いのではないでしょうか?

もちろん地方の方にとっては、車の方が安全で便利で確実ですし、その生活スタイルを変えることはほとんど不可能です。私も生徒さんたちに「車移動をやめて歩きましょう!」とは言えません。私も車に乗らない生活は考えられないですし、地方での生活自体が破綻しかねません。

でも、人間に備わっている脚は、必要だから存在しているのです。もう一度その脚の役割について一緒に考えてみましょう。

肉体的な役割としての「脚」

人間の体の中の筋肉のうち、下半身が約70%を占めているという事実は、ヨガ講師であれば知っている方も多いと思います。昨今のブームである腹筋や体幹など、上半身に注目する機会も多いかもしれませんが、実は筋肉を活性化するメリットを考えるのであれば、大半を占める下半身の筋肉を無視することはできません。

筋肉の役割は実に多岐に渡りますが、ヨガの実践面で考える時に主に以下の3つに注目したいと思います。

  • 体を動かす
  • 姿勢を維持する
  • 熱を生み出す

つまり、筋肉が活性化するとこの機能が上がり、筋肉が弱るとこの機能が下がる、とシンプルに考えてみると、その重要性を改めて理解することができると思います。

以上のことから、体全体の筋肉量の約70%を占める下半身が弱ることで、体力や体温維持などに大きな影響を与えることは予想できると思います。

また、実は脚力が上がると上半身の姿勢維持や体幹にも良い影響を与えてくれるのです!脚力を上げることのメリットは本当にたくさんありますよ。

精神的な役割としての「脚」

脚が極端に細く踏ん張れない方は、体力も乏しく自分を保つことができない
脚が極端に細く踏ん張れない方は、体力も乏しく自分を保つことができない

私はよく人間の体を、以下のように「木」に例えます。

  • 下半身=根っこ
  • 体幹(胴体)=木の幹
  • 腕と頭=枝葉

以上から、下半身のテーマは「グラウンディング=力強く大地に根を張る」ことだと考えることができます。「地に足をつける」という、ことわざがあるように、脚力が弱ると、何と無く地に足がつかない、方向性が分からず漂流しているような不安感を感じやすいかもしれません。

実際に生徒さんたちを観察していると、脚が極端に細く踏ん張れない方は、体力も乏しく自分を保つことができません。一見明るそうに見えても、目を合わせて見ると何となく不安そうで、周囲の意見や情報に流されやすい方が多いです。

他のパターンとしては、脚全体が太く固まってしまっている方もよく見かけます。脚全体にメリハリがなく、筋肉が硬直してしまっているような場合、その場に留まりたがる現状維持を重要視し、新たな一歩を踏み出すことに抵抗を感じて、フットワークの重い方が多いかもしれません。

これはあくまでも私の経験則なので、もちろん例外もあると思います。しかし心と体が繋がっているということは、現代では皆が実感していると思います。体の状態は、心にも必ず影響を与えます。

だからこそ脚力の大切さを再度見直し、幹の安定感と枝葉の広がり、そして実りを支える強さを育てるために、脚力をつけ、地に足をつける練習を提案することも、精神面を大切にしているヨガにおいて大切なアプローチだと私は考えています。

ヨガクラスで脚力を上げるための3つのステップ

ヨガクラスで脚力を上げるための3つのステップ
ヨガクラスで脚力を上げるための3つのステップ

では実際にヨガクラスの中で、脚力を上げるためにできる工夫を考えてみましょう。ここでは単に脚の筋肉を鍛える筋トレを取り入れましょう、ということではなく、段階を踏んで自らの力で脚力のコントロールができるようになることを目的に、最終的には立位のポーズを安全に取り組めるような方法を考えていきたいと思います。

ステップ1:自ら触れて足の感覚を取り戻す

脚を使う機会が少ない生徒さんにとって、そもそも脚を動かすという感覚自体を忘れてしまっている方がとても多いです。

例えば私の経験だと、「足指でマットを掴む」と言っても、そもそも足の指が動かせない。他にも、「膝頭を引き上げて」と伝えたところ、生徒さんの身体感覚が乏しく「どういうことですか?」と言われてしまうこともありました。

そんな時はまず、生徒さん自身に自分の体に触れてもらうように促しましょう。足の指ひとつひとつを手で動かしたり、ふくらはぎや太ももを触るなど簡単なことから始めて、まずは自分の体のパーツそれぞれの存在感覚を思い出してもらいます。その練習から、体に対しての繊細な感覚を取り戻します。

体の感覚が鈍感な方ほど、クラスでヨガ講師の発する言葉を、自らの動きに変換させることが苦手です。焦らず一つひとつのパーツにおいて、生徒さんの体の存在感覚を育てていきましょう。

ステップ2:シンプルな動きを繰り返す

少しずつ「脚の感覚」が芽生えてきたら、次に「脚の動き」に集中できるシンプルな動きを繰り返していきます。全身を大きく扱うようなポーズに進む前に、脚だけを何度か繰り返し動かして、その感覚を目覚めさせることに注力してみましょう。

例えば、

  • シャバーサナ(仰向け)の姿勢で両足のつま先を開いたり閉じたりし、股関節の動きを感じる
  • ダンダーサナ(長座)で足首を直角に動かしながら太ももや脛の動きを感じる(実際に太ももに触れたり、目視を促すのも◎)
  • ターダーサナ(直立)からウトゥカターサナ(通称チェアーポーズ)で膝の曲げ伸ばしやカカト重心を感じる
  • 脚を腰幅にしたターダーサナ(直立)で、ブロックを内ももに挟んで締める練習をする

できるだけ慣れている姿勢からシンプルな動きを行っていくと、生徒さんも不安にならずに「足を動かす」ということに集中しやすくなると思います。

ステップ3:土台を重要視した立位のポーズに取り組む

ヨガには立位のポーズがたくさんあります。クラスの中で取り入れていく機会が多いと思いますが、この時も「足幅はこうで、つま先の向きはこうで…」とざっくりした指導だけでなく、「先ほど練習した感覚を思い出しながら…」と一言添えて、

「足指でマットを掴む」
「前ももの筋肉が強くなっているかな?」
「内ももを締める意識を思い出して」

など筋肉の動きを感じてもらうようなインストラクションをしてみましょう。

このようなインストラクションの工夫は、まずポーズの安定感が増すという大きなメリットがあります。全てに言えることですが、土台がしっかり安定していれば、その上に積み重なるものも安定します。

特に立位のポーズでは、土台である脚の安定感が、ポーズ全体の安定感を左右します。脚力でポーズを下支えすることによって、上半身も余計な力を使わず楽に安定し、ヨガで大切な呼吸もしやすくなるでしょう。

そして生徒さん自身にとっても、事前に行った基本的な練習がポーズに活かされていることに気が付け、単にポーズという形を練習するヨガから、「自分の力で自分をコントロールするヨガ」へと感覚が変わる可能性を促すことができます。

地方のライフスタイルに寄り添ったクラス内容を提案してみよう

自分の活動する環境や生徒さん達に本当に必要だと思うクラス内容の考える
自分の活動する環境や生徒さん達に本当に必要だと思うクラス内容の考える

以上のことを私はこれまで工夫して取り組んできましたが、このような指導法を取り入れてみよう!と思えたのは、岩手県という地方に移り住み、その地域に長年暮らしている地元の方々の生活スタイルを観察したり、悩みや不調をヒヤリングしてきたからです。

指導者養成講座で学んだことを、教科書通りではなく、これまでの学びを参考にしながら、目の前に集まってくる生徒さんたちをよく観察し、生徒さんたちの交流の中で感じたことや、ヨガ講師としてできることをクラスに反映していくことが、その地域に寄り添ったクラス内容へと昇華させる大きなポイントだと思います。

私の活動する環境と集まってくれる生徒さんから導き出したクラステーマは「脚力」でしたが、読者の皆さんの活動する環境や生徒さん達に本当に必要だと思うクラステーマは何でしょうか?改めて考えてみても良いかもしれません。皆さんのクラスの質がより良くなるヒントが眠っているかもしれませんよ。