ヨガインストラクター田村佳世さんのクラス風景

出張クラスに強くなる!プロップスに頼らないクラスの作り方

皆さん、こんにちは!
私は東京都出身→2012年に岩手県に移住し、現在はヨガ講師兼スタジオオーナーとして活動しています。

日々の私の活動の多くは自身のスタジオでのレギュラークラスですが、その他にも様々な環境で出張クラスを担当させていただくことも多いです。野外、会議室、和室、体育館、病院など、ヨガができる可能性がある場所であればどこへでも出向くようにしています。

何より地方にはまだヨガスタジオが少ないのが現状です。ヨガ指導者養成講座を卒業していざ「クラスを開催しよう!」と決めても、ヨガスタジオでの指導を担当できることは稀でしょう。そうなると、ヨガ専用のプロップスの揃っていない施設での指導も自ずと多くなります。

指導者養成講座での学びではプロップスを用いた指導法を学んだ方が多いと思いますが、実際に地方で指導をする時、プロップスが揃っていない環境で指導をしなければならず、戸惑っている方も多いのではないでしょうか?

悩み:会場にプロップスがない!クラス内容に制限を感じる

体育館でヨガクラスをしていて、生徒さんが両手を挙げている写真
プロップスが無いとき、どうしていますか?

スタジオクラスと出張クラスの大きな違いとして「プロップスに限りがある」という点が挙げられると思います。

通常ヨガスタジオであれば、ブロックやボルスター、ストラップなどヨガの練習を深めてくれる道具が揃っていますが、出張クラスにはそのようなヨガ専用の道具が揃っていることはほとんどありません。

私が最初に学んだ指導者養成講座はプロップスを一切使わない流派だったので、ヨガ講師デビュー後に困った場面はなかったのですが、その後受けた指導者養成講座はプロップスを活用する内容だったので、その効果と実用性には本当に感動し、その後の日々のスタジオクラスではプロップスをたくさん活用するようになりました。

現在私は”プロップスを使わない指導”と”使う指導”の両方が可能なので、環境に応じてクラス内容を調整することが可能です。

大切なのは、「〇〇がないからできない」ではなく「〇〇がなくても工夫すればできる!」というポジティブな視点で問題を解決する力を持つこと。環境に合わせて臨機応変にクラスを行うことができれば、ヨガ講師としての活躍の場も広がります。

ということで今回は、プロップスが無い環境でもより柔軟にクラスを展開していく方法をまとめていきたいと思います!

解決法1:身近なアイテムをプロップスの代用として使う

ヨガインストラクター田村佳世さんのクラス風景
プロップスがなくても、アイデア次第でクラスは可能

ヨガスタジオ以外の場所でクラスを行う場合、ヨガ専用のプロップスがない環境だからといってクラス内容が制限されてしまうのは悲しいですよね。どんな環境でもヨガの素晴らしさを体験してもらえるように、工夫とアイデアで課題を解決していきましょう!

1:どんな会場にも揃っていることの多いアイテムを代用する

「ヨガを行う会場にプロップスが何もない!」とパニックを起こす前に、一呼吸おいて冷静に会場を観察してみましょう。アイデア次第でプロップスの代用が可能な道具がある場合も多いですよ。

私が出張クラスでよく使わせていただく道具をいくつかご紹介しますね。

座布団

ブランケット代わりにあぐら座でお尻の下に敷くほか、半分に折ってボルスター代わりに使います。

主に姿勢の支えとして活用します。壁に背を付けてあぐら座やタダーサナを行い背骨のまっすぐな感覚を養います。ほかにも、立位のポーズの要となる後ろ足の踏み込みをサポートする道具として使います。ヴィパリタカラニーなど逆転のポーズの支えとしても有効です。

椅子

パイプ椅子など安定感のある椅子があれば、特にシニアや体力の少ない初心者などでは指導法に幅を持たせることができます。椅子に座ることで負担なく呼吸法や簡単なポーズの練習が可能です。また、背もたれを掴んでダウンドッグや、立位のポーズでの転倒防止に活用するなど、座る以外の方法でも椅子は大いに活躍してくれますよ。

2:家にある身近なアイテムを生徒に持ってきてもらう

プロップスをヨガ講師が全て揃えられたら一番理想ですが、予算的にも難しいですし管理も大変、そして何より出張クラスの場合持ち運べる量にも限りがあります。

そんな時、自宅にあるものでプロップスの代用ができるものは、生徒さん自身に持ってきてもらうよう協力を呼びかけましょう。生徒さんにとって参加の負担にならないアイテムであれば問題ありませんし、家でもヨガを取り入れるヒントを与えることもできますよ。

フェイスタオル

汗を拭くのはもちろん、シャバーサナの時に目の上に乗せることでアイピローのようなリラックス効果を高めることができます。

大判のバスタオル

ブランケットの代わりになり、汎用性が高いのが大判のバスタオルです。あぐら座でお尻の下に敷く、丸めて内腿に挟み内転筋を使ったポーズの練習に使う、丸めたバスタオルを肩甲骨の下に置き仰向けになって胸を開く、シャバーサナで体にかけるなど、活用法はたくさんあります。

手ぬぐい

ストラップの代用として、足に引っ掛けたり、両手でつかんで肩甲骨の柔軟を引き出したりと、補助として使うことができます。長さのあるフェイスタオルでも代用可能ですが、手ぬぐいの方が伸縮しない分、安定感と強度が高いです。

解決法2:マット1本でできるヨガの指導法を身につける

床の上に敷いたピンクの待ったの上であぐらをかいて瞑想をしている人の脚と手の写真
プロップスを使わないでも可能な指導力を身につけよう!

身近なアイテムをプロップスの代用として使うこと以外にも、解決法の1つとして、プロップスを用いない指導法を1つでも多く持つことも有効です。

特に伝統的な流派(アシュタンガヨガやシヴァナンダヨガヨガなど)ではプロップスを使わないで練習するので、一度体験してみるのも大いに学びになると思います。

もちろん特定の流派のみプロップス無しで指導可能なのではなく、様々なヨガを参考に良いところは取り入れ、更に自分で実践と研究をし、身1つでできるヨガの指導力をつけていきたいものです。

プロップスを使わない工夫

手足のポジションを調整する

主に手足のポジションを調整することで、道具に頼らずともポーズの強度を調整することができます。

手のポジション調整の例

トリコーナーサナ(三角のポーズ)では下の手をブロックの上にのせる補助法が多いですが、ブロックを使わずに手のポジションを変えてポーズの強度を調整することが可能です。

  • 下の手をスネや足首の上に置く(足をブロックの代用にする)
  • 下の手を太ももの上に置き、側屈の角度を浅くする(軽減)
  • 下の手を床と平行にのばし、支えを外して体幹で支える(強度を上げる)

以上のように、三角のポーズ1つとっても手の位置で様々なアプローチが可能です。

足のポジション調整の例

アルダマッツェンドラーサナ(半分の魚の王のポーズ)で、股関節が硬く土台の足が組めない場合、ブランケットやブロックをお尻の下に敷く方法がありますが、プロップスを使わない方法として、下の足を前に伸ばして軽減する方法もあります。このように土台が安定するように足のポジションを調整することで、本来の目的である背骨の捻りを深めることができます。

このように、プロップスを使わなくてもそれぞれのポーズで強度を調整する方法を日々研究することで、会場の環境や生徒の個性に合わせて指導する力もついてきます。

プロップスを使わないメリット

マット1本でできるヨガの練習は、生徒にとってもハードルを下げてくれます。

便利なプロップスがあることでヨガの練習を深めることもできますが、生徒にとっては「スタジオに行って道具が揃わなければヨガの練習ができない」と感じさせてしまうかもしれません。

ヨガを始めるには、マットを買って、ブロックやストラップを揃えて。。。となると、それだけでも生徒にとってはヨガを日常に取り入れるハードルになります。

「ヨガを始めるのに特殊な道具を準備しなくても大丈夫、身1つあればヨガはできる!」という提案をできる講師は、きっと生徒にも気軽にヨガを始めるきっかけを与えることができるでしょう。

もちろんマットやヨガウェアを購入するなど形から入ることでモチベーションが上がる方もいるかもしれませんが、お金をかけずに気軽に始められるということも、ヨガの大きな魅力の1つだと私は思います。

もっと自由に、柔軟性のある指導を目指そう!

ヨガインストラクター田村佳世さんの笑顔の写真
視野を広げれば現実世界はもっとたくさんの可能性に満ち溢れているはず

「自由」というのは、自分の都合よく好き勝手に物事を行うことではなく、制限と感じるものから解放されている状態のことを言います。

今皆さんがヨガを教えるに当たって制限と感じているものは何でしょうか?

色々なキーワードが出てくると思いますが、大切なのは、何か「制限」があったとしても、ご自身の指導が「制限されない」工夫とアイデアを自らの力で考え出すことです。

今回は「プロップスがない」という制限と向き合ってきましたが、今後もヨガ講師として様々な障害にぶつかることがあるでしょう。そんな時でも、もっと広い視野で現状を観察して、解決の糸口を見つける努力をしましょう。

不自由だと感じているのは自分の頭の中だけで、視野を広げれば現実世界はもっとたくさんの可能性に満ち溢れているはずです。