ヨガの呼吸法が体にいい秘密は「鼻」にあった!科学が証明する効果

ヨガの呼吸法が体にいい秘密は「鼻」にあった!科学が証明する効果

ヨガを行っている人なら誰でも、呼吸に意識を向けていると少しずつ心が落ち着いてくることを実感しているのではないでしょうか。ヨガが私たちの心と体にもたらす恩恵には、この呼吸、つまり「鼻呼吸」が深く関わっていることも、すでに広く知られています。

鼻呼吸の重要性を改めて示す研究結果は、これまでにいくつも発表されてきました。どのような効果があるといわれているのか、そして専門家はどのような鼻呼吸法を勧めているのかについて、いくつかご紹介したいと思います。

呼吸に関する様々な研究結果

呼吸と病の関係

アメリカの経済誌フォーブスに掲載された記事によると、シカゴ大学の研究者チームは一昨年、認知機能が正常でも匂いを識別するのが難しい高齢者は、5年後までに認知症と診断される可能性がその他の人に比べて2倍高いことを初めて確認しました。

また、ミシガン州立大学のチームは昨年、嗅覚検査の結果から10年以内にパーキンソン病を発症するリスクが予測できるようになるとの研究結果を発表しています。匂いがよく分からない人が発症する可能性は、そうではない人に比べて5倍近く高いそうです。

呼吸と記憶力の関係

さらに、スウェーデンのカロリンスカ研究所の神経科学者らのチームによれば、記憶力は、鼻呼吸をすることによって強化されていると考えられています。

実験では参加者たちに2回に分けて12種類の匂いを覚えてもらった後、1時間にわたって口呼吸か鼻呼吸かのどちらかを続けてもらいました。

そして、記憶してもらった匂いとその他12種類の匂いを嗅ぎ、それぞれが記憶したものか、初めて嗅ぐものか答えてもらうテストを行いました。その結果、鼻呼吸をしていたグループの方が、より多くの匂いを正確に記憶していたことが分かりました。

呼吸と脳波振動の研究

一方、英紙ガーディアンによると、米ノースウェスタン大学の研究者が行った実験では、匂いと記憶、感情を司る脳の3つの領域全ての脳波振動が、息を吸った直後に最も明確に同期していることが確認されました。鼻から息を吐いているとき、口呼吸をしているときには、脳波振動の同期の程度は大幅に低下したということです。

口呼吸のときは、脳波振動の同期は大幅に低下

呼吸はただ脳と体に酸素を供給するだけでなく、人間の複雑な行動を調整するため、複数の脳領域の細胞の活動を体系化している可能性があると考えられるそうです。

不十分な呼吸が「病気の原因」?

米国のプロバスケットボール(NBA)やプロフットボール(NFL)、メジャーリーグ(MLB)などのトップチームのコーチを務めるグウェン・ローレンスは、著書「Teaching Power Yoga for Sports(スポーツ選手のためのパワーヨガと教え方)」の中で、私たちの体は本来、鼻で呼吸するようにできていると述べています。

ほとんどの人は呼吸機能の10〜20%程度しか使っておらず、しっかり呼吸ができていないことが呼吸機能の大幅な低下につながり、それが体のエネルギーレベルを下げているといいます。

(吸い込む息で取り入れる)酸素は私たちの生命の源であり、息を吐き出すことは、私たちの体から毒素を排出するための主要な機能です。十分に呼吸ができていないことが、高血圧から不眠症まで、さまざまな健康上の問題を引き起こす原因にもなっているのです。

鼻呼吸は「天然の心の鎮静剤」

統合医療のパイオニアとして世界的に知られ、米アリゾナ大学統合医療センターの創設者でもあるアンドルー・ワイル博士は長年にわたり、健康的なライフスタイルや加齢、医療とヘルスケアの将来に関する研究と啓発活動を行っています。

リラックスすること、ストレスを解消することのために博士が実践を勧める3つの呼吸法は、いずれも鼻呼吸です。そして、博士はそのうちの1つである「4-7-8呼吸法」を、神経系に働く「天然の鎮静剤」と呼んでいます。

ワイル博士によれば、鼻呼吸はパニック発作から消化器系障害まで、ストレスに関連した数多くの症状の改善に役立つといいます。

博士が勧める3つの呼吸法

博士が実践を勧める呼吸法は、次の3つです。

刺激する呼吸

「1秒に3回、吸って吐く」を繰り返す呼吸法であり、ヨガの「バストリカ」という呼吸法に基づいたものです。口を閉じて口元をリラックスさせ、できるだけ短い息で、鼻呼吸します。吐く息と吸い込む息の長さが等しくなるようにして、素早く、音を立てて呼吸します。

横隔膜を素早く動かす動きが、「ふいご」(火を起こすために窯に空気を送る道具)を思わせます。初めて試すときは、行うのは15秒までにします。その後、練習するごとに5秒ずつ時間を延ばしていき、1分間続けてできるまで行ってみましょう。

リラックスする呼吸(4-7-8呼吸法)

必要な道具もなく、いつでもどこでも行うことができます。どんな姿勢でもできますが、慣れるまでは背中をまっすぐ伸ばして座る姿勢で行うのがいいでしょう。

  1. 舌の先を上の前歯の裏側の付け根に当てる
  2. 口を閉じて、頭の中で4つ数えながら、鼻から静かに息を吸う
  3. 息を止めて7つ数えたら、次に唇をすぼめるようにして、「フーッ」という音を立て、8つ数えながら息を口から全部吐き出す

これを1サイクルとして、4回繰り返します。

数える呼吸(数息観)

「座禅の呼吸」とも呼ばれます。背筋をまっすぐ伸ばして少し下を向き、苦しくない姿勢で座ります。そっと目を閉じ、何度か深呼吸をした後、自然な、ゆっくりとした静かな呼吸を繰り返します。

  1. 息を吸い、頭の中で「1」と数えながら息を吐く
  2. 吐くときには「2」から始め、「5」までの4カウントの間、吐き続けます

これを1サイクルとして、次はまた「1」から数えます。

数は必ず息を吐くときに数えます。そして「5」以上は数えないようにします。それより長く続けると、集中力が続かなくなってしまいます。

以上、鼻呼吸の研究結果や効果について、いくつかお伝えしました。静かに、深々と呼吸している自分を想像すると、それだけでも何だか少し心が落ち着いてくる気がしませんか?