ヨガインストラクター田村佳世さんのクラス風景

クラス内容は毎回変える?同じ?地方少人数クラスのシークエンス問題

皆さん、こんにちは!
私は東京都出身→2012年に岩手県に移住し、現在はヨガ講師兼スタジオオーナーとして活動しています。岩手で指導を始めて8年目に突入し、私1人で全クラスをこなすスタジオ「yoga journey」には年間延2000人以上の生徒さんが訪れ、岩手県唯一のRYT200認定校として指導者育成にも携わっています。

指導者としての歴も長くなってきたため、指導者養成講座を卒業したばかりの新人ヨガ講師から悩みや相談を受けることも多く、その度に自分が指導し始めた頃の葛藤をよく思い出します。

地方にはすぐに相談できる先輩ヨガ講師も身近にいないことも多いですし、ワークショップや勉強会なども都内での開講が多くスケジュール的にも金銭的にも参加するのが難しい。自分の無力さをどうカバーしていったら良いか答えが見つからずにたくさん悩んだ経験があります。

今回はその中でも質問を受けることの多い「クラスの度にシークエンスを変えるか変えないか」について、皆さんと一緒に考えていこうと思います!

悩み:クラス内容のネタ切れ…毎回違うシークエンスを考えるのが苦痛

ヨガ講師としてクラスを担当する時、会場からの指定がない限り、自分自身でクラス内容を考えますよね。

クラスの時間帯や集まる生徒層、そして会場で使えるプロップスなどを考慮して、クラスの中で行う呼吸法やポーズを決めます。ですが、毎週通って来てくれる生徒が少しずつ増えると次第にこんなことを不安に思っていませんか?

「毎回同じようなポーズばかりで、生徒に飽きられてないか?」

特に地方の自主クラスで少人数制だと、その生徒は自分のクラスだけに定期的に通ってくれているケースが多いと思います。その場合、講師にとっては嬉しい反面、

  • 生徒に新鮮さを与えられていないのでは?
  • 飽きられてしまうのでは?

と不安を感じてしまうかもしれません。

その不安からほとんどの講師が毎回違うシークエンスに取り組もうとしますが、だんだんネタ切れになってきて、シークエンスを考えることが苦痛になってしまう。

そんな負のスパイラルに苦しむ前に、生徒にヨガの何をどう感じて欲しいのかを整理して、シークエンスを変える・変えないについて選べるようになりましょう。

答え:「生徒とヨガの関係性」を長期的に考えてみよう!

ヨガインストラクター田村佳世さんのクラス風景
「生徒にとってのヨガとの関わり方」を考えてクラスを提供していますか?

皆さんは、自分のクラスに参加してくれる生徒さんに、ヨガとどんな風に関わって欲しいと考えていますか?まずは「生徒とヨガの関係性」について今一度自分なりの考えを整理してみましょう。

例えば私はこんな風に考えています。

  • 5年、10年と長期的にヨガを練習し続けて欲しい
  • クラスに来た時だけでなく、日常にもヨガを取り入れて欲しい
  • 生徒自身が自宅でセルフプラクティスできるようになって欲しい
  • スタジオに来た時は自主練より少しチャレンジして欲しい

講師全員が思いを込めてクラスのテーマと内容を考えていると思いますが、それ以外にも「生徒にとってのヨガとの関わり方」まで考えてクラスを提供することで、シークエンスを見直すヒントになると思います。

「生徒に飽きさせない」こと以上に、生徒にヨガとどう付き合っていって欲しいかを考えていくと、毎回シークエンスを変えることだけが正解では無いと私は思うのです。

ではここから、クラス内容を毎回変える場合と変えない場合のメリット・デメリットについて考えてみましょう。

クラス内容を変える・変えない、それぞれのメリット・デメリット

黒色のヨガマットの上で両手足をマットにつけている写真
クラス内容を変える・変えない、メリット・デメリット

クラス内容を変えない場合

ヨガには毎回ほぼ同じシークエンスを練習し続けるアシュタンガヨガやシヴァナンダヨガなどの伝統流派もあります。伝統流派だけに留まらず、同じシークエンスを繰り返し練習することで多くの気づきが生まれます。

メリット

  • 同じ練習を繰り返すことで、日々の繊細な違いや変化、成長に気が付きやすくなる
  • 少ないポーズの練習でも1つ1つの練習量が増えるので理解が深まる
  • 自分の得意・不得意に気付きやすい
  • 頭ではなく体がシークエンスを覚えるので、ヨガの知識がなくても自主練しやすい
  • 講師が生徒の成長の過程を観察できる

デメリット

  • 同じ練習に慣れすぎると集中力を維持しにくい
  • 講師の指導スキルが停滞しやすい

クラス内容を変える場合

現代ではバリエーション豊かなヨガクラスがたくさん開講されており、いつもと違うポーズや呼吸法にチャレンジするのは刺激があって楽しいですよね。練習に変化を入れることは良いスパイスになり、ヨガを楽しむモチベーションも上がると思います。

メリット

  • 新しいことにチャレンジすることで集中力が高まる
  • 色んな体験ができるので楽しさを感じやすい
  • 新鮮さを感じる

デメリット

  • 毎回違う練習なので、成長しているかどうか気付きにくい
  • 1つ1つのポーズや呼吸法を生徒自身が深く理解できない
  • 講師の長期的な実践経験が必要。ヨガ歴の浅い講師には難しい

いかがでしたか?シークエンスを毎回変えても変えなくても、それぞれメリットとデメリットはあります。皆さんが生徒さんに伝えたいことは、どちらだと実現しやすいでしょうか?それに合わせて選んでみてください。

一番大切なのは、「毎回シークエンスを変えなくてはいけない!」という思い込みから講師が解放されること。

同じシークエンスを繰り返し練習することから得られることもたくさんあります。「これしか選択肢が無い」ではなく、目的に応じて選べるようになると良いですね!

ちなみに私は、初心者向けクラスは「同じ内容を繰り返す」、経験者向けクラスは「変化をつけたチャレンジングな内容」に分けて提供しています。

初心者には基本のポーズや呼吸法を繰り返し練習させることで、頭ではなく体にヨガを記憶させることを優先しています。

その日に集まった生徒の体力やレベルで少し違うポーズを取り入れることもありますが、変えたとしても2−3ポーズ位で、全体の流れはほぼ同じです。そうすると生徒自身が率先して自宅で自主練ができるようになりますし、生徒にも「自分自身である程度ケアできる」という自信がついてきます。

そして経験者には、基本のポーズのバリエーションと、新しいポーズにもチャレンジしてもらっています。そうすることで新たな自分を発見してもらい、いつもより高い集中力を引き出していきます。

指導できるポーズや呼吸法が少なくても、クラス内容に変化をつける方法

ヨガインストラクター田村佳世さんのクラス風景
1つ1つのポーズや呼吸法について、ティーチングのバリエーションをたくさん持つ

シークエンス作りに悩む講師のほとんどが、「指導できるポーズや呼吸法の数が少ない」と考えています。もっと色んなポーズや呼吸法を知っていれば、バラエティに富んだクラスを提供できると考えがちですが、たとえ指導できるポーズや呼吸法が少なかったとしても、クラスの内容を工夫することができます!

オススメは、1つ1つのポーズや呼吸法について、ティーチングのバリエーションをたくさん持つという方法です。

例えば「戦士のポーズ2」というポーズについて、皆さんはどれだけティーチングのバリエーションを持っていますか?

ポーズの入り方のバリエーション

「戦士のポーズ2」の入り方にも色々ありますよね。例えば戦士のポーズ1→2という流れのように前後の動きから左右の動きに切り替える方法もあれば、左右の動きのポーズの流れで入ることもできます。

ポーズの入り方の違いで土台の感覚やシークエンスの難易度などにどんな違いがあるかご自身でよく練習し、クラスの内容に反映させることもできます。

ポーズ自体のバリエーション

またポーズ自体のバリエーションを増やすことも良いと思います。背骨の動きは変わりませんが、四肢のポジションを工夫することで難易度を調整することができます。

同じく「戦士のポーズ2」の場合、基本の足のポジションから、骨盤の高さや足幅を調整することによって土台の難易度がどのように変化するでしょうか?そして腕の使い方も、手を腰に置く、胸の前で合掌する、両手を上に上げるなど様々に変化させることで難易度や感覚がどう変化するか試してみましょう。

このようなバリエーションによる難易度の差を講師が理解していると、「戦士のポーズ2」を1つとっても指導のバリエーションをたくさん持つことができ、生徒のレベルに合わせてクラスの中で調整することができます。クラスにいつもと違う変化をつけることもできますし、生徒に新鮮さを感じてもらうこともできます。

同じように、呼吸法も姿勢を変えて試してみるとたくさん発見があると思います。例えば完全呼吸法の場合、安楽座だけでなく、正座、椅子に座る、仰向けの状態など色々試してみてください。難易度やそれぞれ感覚の違いを感じるはずです。

こんな風に、それぞれのポーズや呼吸法についても様々なバリエーションを考えてみてください。できれば、1つのポーズにつき5〜10の指導バリエーションを考えられるようにしておくと、ティーチングに幅が出てきますし指導力も向上します。

このようなトレーニングを講師が日常的に研究し続けることで、その先生ならではのクラスが次第に出来上がっていきますよ。

今自分の指導できる技術を最大限に活かそう!

ヨガマットの上で胸に手をあてる生徒さんたちの写真
「サントーシャ=知足」の視点で「無い方」ではなく「有る方」に目を向けて

指導できるポーズや呼吸法をたくさん持っていると、生徒に多くのことを与えられるのではないか?と私たち講師はつい考えてしまいますが、こんな時こそヨガの哲学を思い出しましょう。

「サントーシャ=知足」の視点で現状を捉え、「無い方」ではなく「有る方」に目を向けていくと、たとえ指導できるポーズや呼吸法が少なかったとしても、自分の実践から感じた経験を元に様々な指導をすることができます。

無いもの探しではなく、今自分の手の中にあるものをもう一度見直してみてくださいね。きっと見落としていた大切な発見が見つかるはずです。