シニアヨガがもたらす3つの効果

介護の現場より:シニアヨガが健康寿命を延ばす!指導のポイントは?

現在の日本では超高齢社会を迎えており、2025年には人口の約30%が高齢者になる見通しです。そうなってくると医療や介護の現場への負担はかなり大きくなるのは目に見えています。

この大きな問題に対し国や自治体では「健康寿命」を延ばすことに力を入れています。健康寿命とは心身ともに自立し、健康的に生活できる期間のことを言います。

なぜこの健康寿命を延ばすことに力を入れているかというと現代の医療は一昔前に比べて医療技術は格段に進歩しており、それに伴い平均寿命も延びてきたからです。ただ、これには1つ問題があり、寿命は延びても健康期間が延びていないのです。

平均寿命に比べ健康寿命は延びていない

厚生労働省の調べによると平成13年と平成22年の平均寿命と健康寿命はどちらも延びているが、平均寿命の方が健康寿命に対して長く延びていることがわかっています。

「平均寿命は延びたけど健康寿命が延びていない」ということは、自立して生活できない期間が延びてしまったということです。これだと冒頭で述べたように医療や介護の現場への負担は大きくなるだけですよね。

そのため、国や自治体は平均寿命と健康寿命の差をできるだけ埋めて自立して生活できる期間を長くしてもらいたいと考えています。現に私が住んでいる市町村では自立して生活をしている高齢者に向けて「いきいき100歳体操」と言う名の体操を推奨し、健康寿命を延ばすように努めています。

私自身が医療現場で働くヨガインストラクターであるからこその考えかもしれませんが、世論が健康への意識が高まる中、今後ヨガの役割はさらに大きくなるはずです。

では介護の現場より、ヨガがシニア層に向けてできることを3つ、まとめてみました。

効果1:本来の柔軟性と筋力を呼び戻す

女性が腕の筋肉が描かれた黒板の前に経っている写真
本来の柔軟性と筋力を呼び戻す

シニア層は加齢により様々な身体の変調が起こりやすく、ロコモティブシンドロームもその代表例です。ロコモティブシンドロームとは、運動器症候群のことで、変形性関節症や関節可動域低下や筋力低下の状況のことをいいます。

整形外科では、変形性関節症で痛みを訴える人や筋力低下により歩行が不安だと感じているシニア層の方を多く見られます。そのような人にヨガは有効だと感じています。

シニア層は総じて身体の柔軟性と筋力が低下しています。

柔軟性に関していうと、本来可動域が広いはずの肩関節と股関節、身体の中心である骨盤と脊柱の柔軟性が低下している場合が多く見られます。これらの部位の柔軟性が低下していると生活の中で中腰になるほか、高い所の物を取る動作で痛みが出てきてしまいます。

筋力低下もそうですね。少し重たい物を持ったり、長時間歩いたり立ったりしているだけで痛みが出てしまいます。

こういう人にヨガを丁寧に教えることで本来の身体の柔軟性や筋力を呼び戻すことが可能です。

指導のポイントは各関節の運動方向全てを動かすこと

例えば、脊柱ならば屈曲、伸展、側屈、回旋の動きをしますが各運動方向に動かすアーサナを組み込むとシニアの身体の反応はとても良いです。各運動方向に動かすことで筋肉の収縮と弛緩を促すことができ、運動機能は改善されやすいのです。

もちろん、レントゲン上関節の変形がある場合は完全に可動域を戻す事が困難なため、注意も必要です。

私はヨガ指導の中で「レッスンの中で少しずつ身体が変わっていくこと」「何ヶ月か前の自分から現在どのように身体が変わっているか」この2点を感じてもらうように伝えています。

理由として身体を痛めてしまう人は自分の身体機能を自覚できてないことが多いからです。結果自分の身体機能以上のことをしてしまい身体のどこかを痛めてしまうのです。

ヨガのアーサナを通じて左右の可動域や筋力の違い、バランス感覚、得意な動作苦手な動作などの自分の身体機能を知ってもらいます。

こうすることで日常生活のふとした動作の中で「あっ、これをしてしまうと腰を痛めてしまいそうだな」と身体を痛めることを未然に防ぐことが期待できます。

効果2:健康への意識を向けてもらいやすい

「ヨガ」という言葉は老若問わず世間一般に大きく知れ渡っています。

保育園の年長の園児を対象にキッズヨガを指導していますが、そのくらいの年齢の子どもでさえヨガを知っていた時は本当に驚きました。90歳代の高齢の方もヨガが何かを知っている人は多いですよね。

「シニアヨガします!」というポスターを掲載すれば、ヨガに興味を持ち参加してもらいやすくなります。あとは実際にヨガをしていただき、心身をリフレッシュして、いかに健康が大事なことなのか体験し理解してもらうのです。

今や多くの人が知っている「ヨガ」をきっかけに健康に対する動機付けを行うことができます。

効果3:コミュニティができる

シニア5人が楽しそうに話をしている写真
コミュニティができ、人と会話をすることで認知症の予防も期待

現在私は、整形外科のグループリハビリの一環としてシニアヨガを指導しています。参加者は大体20名前後ですが、回数を重ねていくうちに自然と参加者の中でグループができます。

「ヨガが終わったらご飯を食べに行こう」
「今度、花見をしに行こう」

など結構交流の場になっています。

これはとても大切なことでコミュニティができることで外出する意欲が湧き、人と会話をすることで認知症の予防も期待できます。

先日、一人暮らしになったことをご家族に心配され、他県から縁もゆかりもない私の地域で子どもと同居を始めたという高齢者がいました。このように、何も知らない地域に住むというのはかなりストレスが溜まります。

当然同年代の知り合いもおらず誰かと話すことや外出する機会が減ったと言います。ストレスのためか腰も痛めてしまい、当院に来られリハビリを始めました。

リハビリの一環として私のシニアヨガ教室にも興味を持ち参加することになりました。健康目的で始めたヨガクラスですが、定期的に参加される中で他の参加者との会話も増え、自然と仲の良いグループができたそうです。結果シニアヨガが無い日も知り合った友人と会うようになり外出する機会が増えたといいます。

ヨガは心身を調整することに高い効果が期待できますが、それ以外で人と人とが結びつく交流の場にもなるのですね。

以上の3点からこれから健康寿命を延ばすことが重要な世の中で、ヨガは大きな意味を持ちます。

心身ともに自立し、健康的に生活ができる期間を延ばす

その一端をヨガが担ってくれます。