解剖学はインストラクターの「軸」になる。内田かつのり先生インタビュー【前編】

ヨガ界に溢れる「解剖学っぽさ」は危うい!

ヨガのクラスでこんな言葉を耳にした、あるいはご自身が使ったことはありませんか?

「その不調は骨盤のゆがみが原因かも」
「〇〇さんは坐骨が開きぎみだから~」
「肋骨(ろっこつ)を大きく開いて~」

この中で、解剖学的にまちがった表現はどれでしょうか?

……答えは「全て」です。

「えっ!?」と驚いた方、「なんとなくわかるけど、説明しろと言われたら難しい……」という方は、ぜひこのインタビューをお読みください。鍼灸師・ヨガ解剖学講師の内田かつのり先生に、ヨガ解剖学の重要性や可能性について詳しくうかがいました。

解剖学、東洋医学、ヨガとの出会い

内田かつのり先生
先生が解剖学や鍼灸を中心とした東洋医学、そしてヨガの学びを深めるきっかけは何だったのでしょうか?
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内田かつのりプロフィール写真
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もともと自分自身の身体があまり強くなく、さまざまな治療を受けるうちに、鍼灸についてきちんと学びたいと考えるようになったんです。それで仕事を辞めて、鍼灸の学校に通い始めて。解剖学を勉強し始めたのもその頃です。

ところが、学ぶうちに鍼の限界も見えてきたんですよ。確かに効果はある。でも、鍼はずっと打ち続けないといけない。これはどこかで自分の身体を根本から変える必要があるなと。

そこでもっと能動的にアプローチする方法として、ヨガやピラティスに興味を持ったんです。鍼灸学校は夜間だったので、日中にヨガやピラティスのクラスをあれこれ試しました。

最初は「解剖学的アプローチ」とされるアヌサラヨガを学んだのですよね。
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内田かつのりプロフィール写真
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アヌサラの先生のクラスで「はっ」とする、効果を感じる面はありました。一方で、僕自身が解剖学を専門的に学んでいくなかで、アヌサラ系に限らずヨガ全体の「解剖学っぽさ」が気になるようにもなってきたんです。

「解剖学っぽい」ヨガというのは要するに、筋肉や骨格の名前を使ってはいるものの、教えている側の知識に解剖学のベースがないんです。だから、途中まで「僧帽筋(そうぼうきん)を下げて」とか「脛(すね)を内側に寄せて」といったディレクションをしているのに、最後はふわっとした感覚的なヨガ独特の用語で説明してしまう。

残念ながら、筋肉や骨について解剖学的に正しい知識を持っているヨガの先生は、本当に少ないんですよ。

それはちょっとショックです。でも、例えばRYT200(全米ヨガアライアンス200時間)などは必ず解剖学が組み込まれていますよね?
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内田かつのりプロフィール写真
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ティーチャー・トレーニング(以下TT)の解剖学はせいぜい2、3日。それで「解剖学をおさえた」つもりになるのは大まちがいですよ!僕は解剖学の基礎講座も開催しているけど、その2日間で学ぶ内容だって、解剖学全体の知識を100m走としたら「位置について」程度でしかないんです。

ヨガの先生がみんな解剖学に精通する必要があると言いません。でも生徒さんに骨や筋肉の話をするなら、最低おさえるべき知識というものがあるはず。それを分かってほしい。

ヨガ界に溢れる「解剖学っぽさ」は危うい!

語る内田かつのり先生
「解剖学っぽい」知識でヨガを教えると、どんな問題があるのでしょうか?
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内田かつのりプロフィール写真
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筋肉のとらえ違いをしているので、ミスアライメントが起きます。的確なアジャストもできないでしょうね。押すべきじゃないポイントを押してしまうとか。

典型的な例を挙げると、「脛(すね)を寄せると太ももの骨が開きます」という説明を聞いたことはないですか? これは解剖学的にはまちがいです。太ももの骨の「遊び」なんてほんの少ししかないので、開くわけがない。むしろどちらかと言えば太ももも閉じます。こういうまちがった知識が溢れているんですよ。

「解剖学っぽい」ヨガは身体を動かす方法論やテクニックの1つとしては有効だし、いい面もたくさんあると思います。でもあくまで「解剖学っぽい」だけ。そこをかんちがいせず、自分が「知らない」ということをちゃんと認識してほしい。

「これができないと解剖学を知っているとは言えない」といったチェックポイントはありますか?
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内田かつのりプロフィール写真
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例えば、僧帽筋(そうぼうきん)の場所を「このへん」ではなくてマスキングテープで明確にふちどれるかどうか。そして実際に人の身体に触れて示せるかどうか。

骨だったら、バラバラに分解した骨格標本を組み立てられるかどうか。人の身体を扱うなら、本来このくらいの知識は身に付けてほしいです。

医療とヨガにはそれぞれ役割がある

先生は解剖学や東洋医学とヨガの関係について、どうお考えでしょうか? これまでのお話から、医学的な知識をヨガに取り入れるメリットは分かるのですが……。
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内田かつのりプロフィール写真
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ヨガには予防医療や代替医療としての可能性がたくさんあると思います。実際、リハビリの一環でとり入れられたりもしています。だからこそ、ヨガにありがちな「ふわり感」で医療の領域を侵(おか)すようなことはすべきじゃない。解剖学については先に説明しましたが、他の医療分野にしても同じです。

「ハラアーサナは甲状腺を刺激してホルモンの分泌をうながします」なんて、医療関係者が聞いたら怒ると思うんですよ。医療分野では何十年もの研究を重ねたうえでそれでも投薬や手術という手段をとるしかないのに、じゃあハラアーサナで実際に患者の数値をどれだけ変えられるの?と。

ヨガの「ふわり感」や精神性を大切にすることが悪いとは言いません。僕が言いたいのは、守備範囲外のことを「知っている」ふりをするのはデメリットしかないからやめようよ、ということです。東洋医学、西洋医学、ヨガ、それぞれの守備範囲を理解して尊重することで、互いを活かせると思うんです。

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