バクティヨガ2:日々の生活の中で献身の心を養う

バクティヨガ7:ハヌマンの心

ヨガの世界の猿の王様、ハヌマン

ハヌマン
ハヌマン

ハヌマンの心の内面を想像してみましょう。お金や名誉、肉体的安楽、他の何にも関心はなく、ただひたすら神性を追い求めたのです。

今日、街を歩いていて通りがかった店内のテレビで、古い日本のテレビ番組「西遊記」をやっているのに気づきました。子供の頃に見たことがあり、わんぱくな冒険やいたずら行為の傍ら、最終的には善行を成し遂げる主人公の猿に子供心に感心していたのを覚えています。

ヨガの世界にも猿の王様がいます。その名はハヌマン、バクタの理想的姿だと考えられています。ハヌマンは叙事詩ラマヤナに出てくる英雄ラマに奉公し、邪悪な悪霊王ラヴァナからラマの妻シタを救出する任務を命じられました。

ある時シタから首飾りをもらったハヌマンは、その玉を木の実のように割り始めます。何をしているのか問いただすシタに、ラマを探しているんだ、とハヌマンは答えます。なぜ?とシタがさらに聞くと、「ラマに会いたくてしょうがないからです、彼のためにはどんな事でもします」と答えました。

ハヌマンには2人の父親がいました。偉大なるヨギであるシヴァと風神ヴァユです。シヴァの精子をヴァユが雌の猿に植えつけたと信じられています。

ハヌマンが得た特別な力とは?

インド神話の絵
インド神話の絵

ハヌマンは若い頃いたずらが大好きでした。ある日、太陽を熟れた果物だと思い込んだハヌマンは太陽を追いかけ始めます。ちょうど同じ日にラフという名の竜も太陽を追いかけていました。

言い争いになった2人は大騒動を繰り広げます。それを見た稲妻の神インドラはハヌマンのあごを稲妻の光で打ちました。息子のハヌマンが痛んでいる姿をみたヴァユは怒り、空気を全部吸い取ってしまい、地球上の生命が危機にさらされました。

生きるために空気が必要不可欠であるとデヴァタ達は知っていたので、ヴァユの怒りを収めるためにハヌマンに特別な力を与えました。超人的パワーやスピード、長寿、怪我や火を避ける能力などです。

しかし、そこには落とし穴があったのです。他者のために良い行いを尽くした時にのみ、この自分の力を知り、発揮する事ができるのでした。ハヌマンがラマのシタ救出の手助けをすることを誓ったとき、彼はこれら全てのパワーを手にしましたが、乱用することはなく、与えられた使命を果たすために必要な力のみ使いました。

太陽礼拝はハヌマンからの贈り物

赤と黄と白の花
赤と黄と白の花

ハヌマンは私たちの内で多くのものを象徴します。勇気であり、強さ、愛と献身の行為、遊び好きな猿の心などです。何か新しいことにチャレンジする時や誰かを守ってあげたいと思う時、内なるハヌマンを呼び起こします。

ハヌマンは完全な人間ではないため、社会の規定に縛られることはなく、自由です。自分の意思で好きに遊んだり、奉仕したり出来ます。また、呼吸の力も象徴しています。呼吸をコントロールし、伸ばすことが出来れば、瞑想において集中力を養うことができ、神経系をなだめることが出来ます。

ハタヨガにおいて、ハヌマンから得た素晴らしい贈り物の一つとして太陽礼拝があります。ハヌマンは太陽を師としてあがめ、スーリヤ・ナマスカーラを行いました。

バクティヨガにはシタとラマ、そしてハヌマンに捧げる美しいチャントが数多くあります。さらに「ハヌマン チャリサ」という彼のための歌もあり、これはハヌマンがもつ素晴らしいパワーを思い出させる歌であり、同時に私たち自身のもつ特別な才能を思い出させてくれるものです。

ハヌマンと繋がる瞑想法

ハヌマン
ハヌマン

バクティヨガは心のヨガであり、ハヌマンは心・ハートそのものでした。彼は最愛なるラマを守るためにその愛を尽くしました。あなた自身のハート、心臓は毎日、毎時間私たちを生かしてくれている強力な保護の力を持っています。そんな自分の力強い心臓、心の力を感じ、ハヌマンの強さと献身の心と繋がるために毎日実践できる瞑想法を紹介します。

  1. 楽な姿勢で座り、しばらくお腹を出入りする呼吸を観察します。次に、鼻の穴を通って入り、抜けていく呼吸の感覚に意識を向けます。この技法はアパジャパと呼ばれるもので、呼吸観察の実践法であり、集中する手助けになります。
  2. 心が落ち着いて、集中し、リラックスしてきたら、手を重ねあわせ心臓にあてます。吸う息、吐く息とともに胸の上部が上がり下がりするのを感じましょう。
  3. 心臓の鼓動、そのリズム、力強さを感じます。
  4. 息を吸い、腕を広げながら、心臓の力強さが胸の中心から体を包み込むように広がっていくのをイメージします。
  5. 息を吐き、手を心臓に戻しながら、その力強さとエネルギーが心臓の中心に戻って集まってくるのをイメージしましょう。
  6. 吸う息とともに、周りを包みこむように自分の強さを広げ、吐く息とともにその力を心臓に戻してきます。意識を現在に戻し集中して続けましょう。
  7. 何度かこれを繰り返した後、手を心臓の上に戻し、腕を動かさないまま、心臓の広がりと収縮を感じます。勇気、愛、信念の波の中心にいます。何でも出来ますし、何にでもなれるのです。
  8. 瞑想から出る心の準備ができたら手をおへそにすべらせ、さらに恥骨まで下ろし、股関節の付け根、脚、そして足の裏、親指から小指までもみほぐします。数分間、横になり、ハートのエネルギーが体を癒し、活性化してくれている感覚を味わいましょう。
花
レイチェル・ジンマン バクティヨガ
レイチェル・ジンマン

文:レイチェル・ジンマン

世界でも有数のパワースポットと呼ばれるオーストラリア・バイロンベイに拠点をおき、日本をはじめインド、バリ、ヨーロッパと世界中で活躍するヨギーニ。ヨガ歴20年以上指導歴18年のベテラン講師で、毎年バイロンベイにて日本人向けヨガインストラクター養成コースを開講、今年で9回目を迎える。彼女の実践するバクティヨガは「愛」のヨガ。ヤントラ(形)やマントラ(音)、ムドラ(印相)を用いてヨガに深みを与えることで、アーサナに偏りがちなヨガからホリスティックなヨガへと導いていく。近年ではヨガインストラクターとして更に成長していきたい方のための上級者向けリトリートをバリにて開催するなど、継続的な指導に力を注いでいる。