バクティヨガ2:日々の生活の中で献身の心を養う

バクティヨガ2:日々の生活の中で献身の心を養う

君は空であり大地でもある。毎日の日々であり、夜風なのだ。この世界に生まれてきた存在全て、そして誰かが持ってきて捧げたこの花々もまた、君の一部なのだ。
ー14世紀の女流神秘主義者 ララ

バクティヨガは愛、感情、そして献身のヨガ

バクティでの献身とは愛のこもった執着(愛着)とも定義できます。これは我が子や親を思う気持ち、お気に入りのことに対して感じる気持ちです。何かに執着するのはとても自然な事。愛着心は安心感を与えてくれ、その安心感が、自信をもって世界に羽ばたいて生きていくバネの役割を果たしてくれます。日常生活の中で養う献身の心がバクティヨガの基本要素です。

伝統的なバクティにおける献身の形には9つのものがあるといわれています。それによりバクタ一人一人がそれぞれ個人に合った方法で神性と繋がることができるのです。

最愛なる人よ、あなたを愛するのにただ一つの道しかないはずだけれど、どうしたらいいのでしょう?一千もの違った形で私の前に現れるあなたを愛するには。

毎日実践できるバクティの9つの献身

レイチェル・ジンマン
レイチェル・ジンマン

以下に述べる献身の9つの形を読んでから、そのうちの一つを選び、毎日の実践を試みてみましょう。

1:聞くこと

献身の歌を聴いたり、誰かが神聖なるものについて語るのを聞くと、インスピレーションを受けます。周りを取り巻く自然界の音を聞くと、自然やその純粋な心との繋がりを感じるでしょう。オープンな心・マインドで、愛する大切な人の話に本当に耳を傾けることが出来れば、癒し、そしてハートの開放が訪れるのです。

2:唱えること

シンプルな歌、マントラや祈りの歌を歌ったり、神の名を繰り返し詠唱したりすることで、愛する人の歌を心にとどめ、喜びに満ちた姿勢を養うことができます。音楽は強力な記憶装置です。力のこもった言葉にメロディーを加えれば覚えやすいでしょう。

3:思い出すこと

神聖なるものを絶えず忘れずに思い出すことで、深く沈んで真の自分と繋がることができます。忙しくストレスの多い生活に追われていると、心配事がほとんど無かった日々を思い出すのは難しいかもしれません。バクティでは、ラクシュミやガネーシャといった神様たちの話を覚え、繰り返し語ることで、その神聖なる源に心を集中させます。自分が何者であるのかを思い出すためには、一番最初に挙げた献身の形が関わってきます。聞くこと。しっかりと聞いていれば忘れることはないでしょう!

4:御足に奉仕

師を敬うということ、これは伝統的な儀式の形で敬意を示したり、もしくは、自分の人生に知恵をもたらしてくれるものに対して身をゆだねるという降伏の態度としても表すことができます。気に入らない人や、何らかの形で傷つけられた人を通して自分について学ぶことが時折あるでしょう。その人たちに「降伏」するというのは自分のパワーをあきらめてすっかり明け渡してしまうということではありません。自分自身について発見し、学んだことに対して内なる敬意を払い、その教訓がどんな形で訪れたにしろ、感謝の気持ちを忘れないということなのです。

祭壇
祭壇

5:儀式的崇拝

インドでは毎日、特定の神様を敬う、崇拝の儀式が日常的に行われています。ヒンズー教徒ではないバクタとして私達が出来るのは、こういった崇拝の姿勢を見習って、注意深さと完全なる存在意識をもって、一つ一つの行為を行うこと。ほんの些細なシンプルな事でいいのです。

例えば、写真や神様の像、自分の心に生き生きと留めておきたいものを何か、自分の祭壇に飾って、そこにキャンドルをともしたり、お花を捧げたり。私のバクティの実践では女神ラクシュミを讃えています。私にとってのラクシュミは、思い焦がれる母親の姿。毎日、母にお花を供えるかのようにラクシュミに花を捧げています。祭壇に飾られている彼女の姿を見るだけで、喜びが湧き上がり、支えられているのだという安心感を得る事ができるのです。

6:平伏

平伏とは頭を下げてひれ伏すということ。ヨガのクラスでもよく行いますよね。クラスの終わりに、祈りと身をゆだねる気持ちを込めて両手を合わせ、ハートに頭を下げます。心の内で行う降伏の行為は、体を使って外側にむけた行為よりも深いものです。 それは手放すということ、人生の次の大事なステップに真の自分が導いてくれると信じるということ。信仰や職業にかかわらず、どんな人でも、内側に存在する神性を信じる時間をほんのひと時でも持てるはずです。

7:仕える者の気持ち

私達の存在と行為は神聖なる源から生まれ来たものだと信じれば、優美なる恵みと光に満ちた人生を生きることができる、とバクティヨガは説いています。自分自身を惜しみなく分け与え、心から他者と分かち合う時、それは全て、内なる神に仕える奉仕の行為なのです。

ハグしあう4人の女性
ハグしあう4人の女性

8:友情

神聖なるものが自分の親友だと思って献身を施しましょう。全ての人を友人のように敬い、自分自身とも友情を育みましょう。

9:自己を捧げる

完全に身をゆだね、何も見返りを求めずに神性なるものに自己を捧げましょう。この行為はパタンジャリのヨガスートラに書かれているAbhyasa(アビヤーサ/修習)とVairagya(ヴァイラーギャ/離欲)に通じるものがあります。「結果を気にせずに、実践そのものを目的として実践に励みなさい」、という教えです。内なる神性を見出せずに終わるかもしれないし、完璧な下向き犬のポーズは一生出来ないかもしれない。結果は関係ないのです。道のりそのものがあなたに力を与えてくれるのですから。

花とレイチェル・ジンマン
花とレイチェル・ジンマン

バクティヨガの究極の目的は、個人としての自己(小我)と神聖なる高次の自己(大我)との融合です。このゴールを達成するためには、

どんな形であろうと献身の道であれば完璧な道である

とバクティヨガは説いています。

愛に自己を捧げて、神聖なるものの足元に身を投げ出す者、それがバクタ!

レイチェル・ジンマン バクティヨガ
レイチェル・ジンマン

文:レイチェル・ジンマン

世界でも有数のパワースポットと呼ばれるオーストラリア・バイロンベイに拠点をおき、日本をはじめインド、バリ、ヨーロッパと世界中で活躍するヨギーニ。ヨガ歴20年以上指導歴18年のベテラン講師で、毎年バイロンベイにて日本人向けヨガインストラクター養成コースを開講、今年で9回目を迎える。彼女の実践するバクティヨガは「愛」のヨガ。ヤントラ(形)やマントラ(音)、ムドラ(印相)を用いてヨガに深みを与えることで、アーサナに偏りがちなヨガからホリスティックなヨガへと導いていく。近年ではヨガインストラクターとして更に成長していきたい方のための上級者向けリトリートをバリにて開催するなど、継続的な指導に力を注いでいる。