更科有哉が旅先の店先でヨガポーズをしているところ

更科有哉+アシュタンガヨガ [マイソール日記Vol.10『Santosha(知足)』]

2009年2月5日 木曜日。

Ashtanga Yogaの教えに、Santoshaというものがあります。知足。足るを知るということなんですが、これは大切なことですね。

人間の欲は、計り知れず天井知らずです。『七つの大罪』でも”強欲”というのがあったはずです。僕も色々、身に覚えがあります。欲深いところが多々見受けられます。

もっと行ったことがないところに行きたかったり、もう少し快適な場所や家で暮らしたかったり、お洒落な洋服を着て、最高に美しく味の良い料理を食べてみたかったり、挙げればキリがありません。

今、僕はインドにいます。インドの人々の暮らしが見えます。嫌でも眼に飛び込んできます。カーストは無くなったというが、現実は違います。形式的には無くなったのかもしれないが、それは “残っている”。

インドの路上に立つ少年
インドの路上に立つ少年

今日も『1ルピーくれ!食べ物をくれ!』とせがまれた。充血し瞳孔が開いたような眼で。生まれたばかりの赤子を抱きながら迫ってくる。まだ17歳くらいの女性だ。おそらく赤ん坊は栄養失調だろう。

Santoshaが頭を過る。僕は我に返る。

僕は日本人として生まれて良かった。日本で生まれ、更科家で育ち、ほんとうに良かった

これはもう、運を使い果たしたと言ってもいいくらいだろう。日本という世界で最も裕福な国で生まれ、しかも五体満足であり、健康そのものだ。

何を食べようか?なんていう選択肢まで用意されている。僕はすでに完璧だ。僕は恵まれている。これ以上、何を望むべきか?

僕はどうすればいいんだろう?この先どのように生きていくべきだろう?こんなに恵まれた31歳、日本人の男の世界にたいしての役割はなんだろうか?

真面目に考え、答えを出そうと思う。

今日はSantoshaが主題なのだが、着地場所はこんな感じなのだ。まだ書くべき段階ではないのに書いてしまったようだ。読み物ではない。

記録として残しておこうと思う。何年後かに僕自身がこれを読み、真面目に考えた結果、良い答えが出たなと笑えればこの上なくSantoshaである。

文・更科有哉