
Atsuko/横浜~東京(パブリックジャーナリスト)
わたしのヨガはじめ~心を知るということ~
幼少の頃からあまりにもいろいろな事を体験してきた私は、「心を固くする」ことで自分の身を守っているつもりでいました。何も期待しない、何も感じない、だから私はどこも痛くない――ずっとそう自分に言い聞かせて長い長い年月を過ごしてきました。
そんなある日、季節の変わり目になると、昼夜を問わず激しく咳き込み、眠ることもできなくなってしまいました。今から10年近く前のことです。どの病院に行っても、「風邪」と診断されて、咳止めを処方されるものの、まったく咳が止まらず、ただひたすら、季節の変わり目が終わり自然と咳が止まるのを待つということを何年も繰り返していました。
数年経ち、ある病院で「風邪ではなく、喘息です」と診断され、原因はストレスであると指摘されました。でも、そのストレスの原因をつきとめることは、なぜか私には怖くてできませんでした。そして喘息の発作止めとともに発作予防薬を処方されたのですが、いくら薬を続けても、やはり季節の変わり目になるとまた一日中激しく咳き込む日々は終わりませんでした。
そのうちに、だんだん自分の体が思うように動かなくなってきていることに気がつきました。体温は35度ギリギリの低さ、全身が倦怠感に支配され、電車に乗ろうとすると動悸や眩暈に襲われ、夜は医師から処方された睡眠薬を飲んでも眠れないという毎日が続くようになりました。全身の筋肉が固まってしまい、特に背中はマッサージをしてもらおうにも指が全く入らないという、まるで鉄板のように常に硬直した状態になってしまいました。
そしてとうとう、朝起き上がることすらもできなくなり、2007年の冬、休職を余儀なくされました。体の不調は、休職中にもどんどん悪化していきました。頭や歯、皮膚など、本当に体中のいたるところにあらゆる症状が出だし、体重も急激に増加しました。いろいろな病院を回りましたが、原因は全く分からず、相変わらず夜は全く眠れない日々が続きました。
そうした中、私の中で何かを求める声が聞こえたような気がしました。その声に突き動かされるように、2008年の夏、私はあるヨガスタジオで開催されたセミナーへの参加を申し込んでいました。このセミナーで私は、ヨガとは、ただアーサナ(ポーズ)を繰り返すだけではなく、「心」の存在を認識するものであるということを学びました。そして、セミナーの講師であった方が、「『心』のわかる指導者」の養成講座を開講されるということを知り、迷わず、8カ月間にわたるこの養成講座の受講を決意しました。
講座では常に、私たちが分かっているようで実は分かっていない「心」というものの存在について学んできました。実体のないこの「心」を、ヨガでは「魂が現世における喜びや悲しみを経験するための『道具』」であると捉えています。私たちはこの「心」という道具を使って、自分自身や周囲に起こる出来事を感じているのです。
溢れるほどの情報と複雑な人間関係、そして他者からの評価の目にさらされる場面の多い現代社会に生きる私たちは、この道具にすぎない「心」に振り回され、体や魂までもがこの「心」に支配されてしまう状況に陥る傾向にあります。辛いことや悲しいことを感じた心は、時には体をも支配し、体は不調を訴え、私たちの魂は輝きを失ってしまいます。これは、心と体が直結してしまっているが故に起こる現象といえます。
こうした大きな影響力を持つ道具としての「心」の存在を認識し、「体」と区別して捉えることができれば、自分自身の身や周囲に起こった出来事に対して「辛い、苦しい」と心が感じても、それが体へ影響を及ぼすことを自分で防ぐことができるようになります。そして、「心がどう感じたから、体にどんな影響が出たのか」ということを冷静に見つめることもできるようになります。私は、「心と体は、影響しあうという意味では『繋がっている』が、それは『一体』という意味ではない。全く別のものである」というヨガの智慧により、長年苦しめられてきた喘息と、その他の原因不明の体調不良を克服することができました。
私にとってこの養成講座は、指導者としてのスキルや資質を身につけるだけのものではなく、「心」について学び、そして自身の「心の棚卸し」作業を続けていくことによって、「本当の自分」に向き合うという過酷な日々でもありました。しかし、この作業によって私は自身の「心の癖」を知り、何を「ストレス」と感じていたのか、なぜそれに向き合わずに逃げていたのか理解することができました。そして、「心」に支配されてしまった体が「不調」という形でサインを懸命に発していたということに気がつきました。
今、巷では「ヨガで健康になる」というような言葉が溢れていますが、それはただアーサナをすることではなく、「心」の存在を知り、この「心」という道具に振り回されない自分の中の真実を追究することだと私は考えます。そして、少しでも多くの人が、ヨガによって「心身ともに健やかな自分」に出会えるようお手伝いしていくことを目標に、頑張っていきたいと思っています。
この世のすべてに感謝をこめて
Atsuko
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