
アメリカでは今も増え続ける乳がん患者の女性たちの間で「ヨガを始めて楽になった」「治療のストレスが緩和された」という声が増え続けています。それに伴い、医師や専門家による研究や発表も盛んに行なわれています。
医師であり、Yoga as Medicineの著者でもある Timothy McCall先生によると、ヨガが癌治療の副作用を明らかに軽減しうるという報告がなされています。
多くの医者が、自分の患者たちが副作用に耐えられないことを理由にがんの化学療法をやめたり、減らしたりせざるを得ない状況におかれています。その現実に、ヨガが今、明るい希望として注目されています。
がん患者にとってとりわけ重要なのは、本人が持つ生命力を優しく蘇らせることです。
なぜなら「疲労」こそががんによる最も深刻で典型的な副作用だからです。この疲労の度合いを大幅に軽減できるとして正式な研究が進められているのがヨガなのです。
Duke大学の研究によると病状が深刻な転移乳がんの患者さんたちに非常に軽いヨガを8週間試してもらったところ、痛みと疲労の明らかな軽減が観察されたとのことでした。事実、他の研究でもヨガが治療に伴う吐き気、うつ、不安を和らげる効果があるということが正式に報告されています。( がん治療に限らず、一般的なうつや慢性疲労症候群にもヨガが効果的であるという研究がUCLAのリサーチセンターでなされています。)
がんの中でもとりわけ乳がんとヨガの関係が今最も注目されている理由の一つに、乳がんが早期発見可能ながんであるということがあげられます。乳がんはピンクリボンなどのとても協力な支援団体に支えられ、その研究もひときわ進んでおり、人々の意識も急速に高まっています。よって、他のがんに比べ診断時の体力が十分にあり、そのことが人々にヨガに挑戦する気持ちを促せるというわけです。また、実際にヨガによって楽になったという人たちの評判が評判を呼び、同じような悩みを抱えた女性たちを勇気づけています。実例がどんどん信頼できる実例と研究に拍車をかけている、というのがアメリカの現状です。
ただ、まだまだ十分な環境が整っているとは言えません。がん患者のためのヨガの普及に努めるアメリカの第一人者 Jnani Chapman 氏も、まだまだヨガのインストラクターがこのセラピーを学ぶ場が不足していると指摘しています。また、もっと医師たちにヨガの治癒的効能に対する理解を期待したいとも述べています。
ヨガは西洋医学に基づく治療法ではありません。西洋医学に置き換えられるものでもありません。しかし、西洋医学の飛躍的進歩は何百年もの間人類を苦しませてきた肉体上の病気発生率を明らかに低下させました。また、優れた医薬品や手術法のおかげで、多くの伝染病は根絶され、代謝障害も治すことができるようになってきました。しかし、これらの医療技術を以てしても、慢性的ストレスに起因する疾患や、心身相関疾患と言った、新たに広い範囲で生じてきている病気の治療に関しては、限界があります。
一方でヨガは肉体に対してはもちろん、心や魂の次元の問題にまで取り組めるような、一個の人間存在の健やかさを全体として取り扱う(ホリスティック)上で、現代医学が欠いている技法を提供してくれます。ポーズは筋肉を弛緩させ、その働きを整えさせると共に、いろいろな内臓にマッサージを施すような動きも含んでいます。また、呼吸はいうまでもなく体内の生気の流れを整え、副交感神経や自律神経のバランスを高めます。リラクゼイションや瞑想法は、心や感情の働きを鎮め、深いところでの癒しをもたらします。ヨガによるセラピーは、心と身体の両方に働きかける技法の組み合わせによって、より大きな効果を生じさせているのです。ポーズをとりながら筋肉を伸ばすときは、筋肉の緊張が気持ちよく解放されるため、心もよりリラックスできるようになります。呼吸や瞑想で心がリラックスしてくると、肉体の緊張も解けてくるのです。(心と身体の相関 ソマ・サイコロジーについては後日別途紹介します)ヨガ・セラピーは病気を予防するだけでなく、これまでふれてきた乳がんが一つの例であるように、様々な疾病への治療効果も期待されています。私たちの内部に生まれつき持ち合わせている心身のバランスや調和の状態を再び取り戻し、ホリスティック(人間の存在を全体として取り扱う)な観点から、人々の健康を助け、QOL ( Quality of Life : 生活の質)を高めます。
しかしながら、ヨガ・セラピーの技法と病気への対処法が著しい効果を現したとしても、それは決して現代の西洋医学が不要になったことを意味するのではありません。特にがんのように症状の重い病気のほとんどが、手術や薬物を必要としているからです。現代の西洋医学と、伝統的なヨガを用いたセラピーは、互いに補うようにして用いられる必要があり、そうすることでヨガ・セラピーは西洋医学の治療に起こりがちな、各種の著しい副作用を軽減したり、薬の量を減らしたりする効果を発揮できるのです。そして、疾病を煩っていない人には、病院に行く機会を減らし毎日を健やかに暮らせるような心と身体の健康を与えてくれます。西洋医学が進歩する遥か昔、先人たちが行なってきた治療は原始、心地よさを重視し、なだめ、慰め、そして全体を感じるようなものだったことをあらためて思い出すきっかけを与えてくれるのがヨガ・セラピーなのかもしれない、とヨガを研究する医師たちも言っているのは面白いことです。
話を乳がんに戻します。
乳がんを宣告され、不安と恐怖におののいているときにヨガなんて始める気分になれない、と多くの女性が思うかもしれません。しかし、思いきって始めてみた女性がヨガとであって本当に救われた、というストーリーと実際の処方箋を紹介させてください。
50歳で乳ガンをを告知され、二回の手術を経験し、典型的な化学療法とその副作用に苦しめられた女性は、自分が8年経った今、ガンから完全に回復し元気に暮らしていられるのは、親身になってくれる医療チームに恵まれたことが何より、そしてヨガによって自分を癒し、励ましながらあきらめずに前向きに治療に取り組めたからだと話しています。
ガン治療の様々な療法への取り組み方を、ヨガが全く違うものにしてくれたというのです。
たとえば、検査の間PETの中で一時間もじっと耐えなくてはいけないときなどいろんなことを考えてしまうものです。そういうときにヨガの呼吸が役に立ったり、その他の局面でも悩まされる恐怖やパニックからもヨガで覚えた呼吸をしてみることで、随分と救われたとのことです。
実際、ヨガによるリンパへの好影響も報告されています。病気からの回復を助ける、白血球と免疫力を高めるといわれている自律神経にもリンパの状態が関係しています。
ただし、すべての乳がん患者の方に全てのポーズが安全というわけではありません。乳がん患者さん向けのヨガは、私自身も今まさにアメリカで学び、取り組んでいるカスタマイズド・ヨガの一つです。シニアヨガ、セラピーヨガはほとんどがカスタマイズド・ヨガであると言っても過言ではありません。
(1)おしり歩き
座った姿勢で脚を前に伸ばし、お尻で前方に移動したり後ろに戻ったりします。心を元気にし、腹筋、骨盤まわりの筋肉を鍛え、内臓をもマッサージします。リンパの流れもよくします。ベッドの上でも行なえます。実際やってみると、トコトコトコとちょっと滑稽な姿に思わず笑みがもれてしまいますが、それも狙いです。楽しくやりましょう。
(2)鵜のポーズ
椅子やベッドに腰掛け、手のひらを上に向け腕を前に伸ばします。そのまま肘を90度に折ります。手のひらは自分の方を向いています。その姿勢から、両腕を肩から観音開きのように開きます。手のひらは今度は、前を向きます。肘が肩のラインから落ちないように、ただの時、多くの人が肩をすくめがちなので、まずは首をリラックスしましょう。最初は大きく開かないかもしれませんが、小さく始めましょう。腕と胸の筋肉を鍛え、リンパ節切除に癒しと勇気を与えてくれるポーズと言われています。微笑んで胸を開くことで、心も明るくなります。
他にもいくつかのポーズを紹介してきますが、ヨガの持つもう一つの効能、心や考え方に与える影響に「喪失」感を「全体感」「一体感」に変えるということがあります。失ったことではなく、自分は全体で一つの存在であり、多くの人たちに温かく見守られ、支えられている愛に包まれた存在なんだ、という感情を呼び起こします。
(3)可愛い急須のポーズ
椅子やベッドに腰掛け、片方の腕は腰にあてます。息を吸ってもう片方の上でを天井に伸ばし、そのまま胸を開いた状態で(胸を開くことは、気分の好転に本当に効果があります)腰にあてた方の脇の下や肘を急須の注ぎ口だと思って、息を吐きながらゆっくり体を横に倒します。優しくお茶をつぐイメージです。このとき、天井に伸ばした方の腕は気持ちよく体の斜め上方に伸ばします。大きく曲げる必要は全然ありません。気持ちよく肋骨のあたりが伸びるぐらいで十分です。このとき、曲げるときに鼻からたっぷり息を吐きましょう。試しに息を止めてやってみると全く感覚が違う事がわかるはずです。肋骨まわりの筋肉をほぐし、活性化するため、結果もっと深い呼吸ができるようになるポーズです。また、腕を上げることでリンパの流れを活性化させます。
(4)あくび猫のポーズ
椅子やベッドに腰掛け(ベッドの場合は脚がぐらぐらしないよう台があるといいでしょう)手を膝に置きます。息を吐きながら、おへそを引っ込め、背中を丸く丸めます。頭は丸めた背中の延長線上にあるように、すなわちあごを少し引くことで、頭から背骨全体を長く伸ばすつもりで丸めましょう。今度は息を吸いながら、自分のお尻(仙骨)を椅子に押し付けるつもりで腕を膝からももに引き寄せるようにしながら体を気持ちよくそらします。これを繰り返しますが、決して無理はせず、背骨を優しく、長く伸ばす感覚を楽しんでください。猫が気持ちよくあくびをしている姿を想像してみましょう。自分も気持ちよく、背骨のストレッチを楽しんでください。背骨だけでなく、とてもいい腹筋運動です。
(5)風車のツイスト
椅子やベッドに腰掛け(ベッドの場合は脚がぐらぐらしないよう台があるといいでしょう)背筋を伸ばします(これがこのポーズのポイントです。危険なので猫背でやらないように)
左の手を自分の後ろ(背中)に置きます。右の腕を、真すぐ前に伸ばします。この伸ばした右腕を、床と平行に保ったまま、息を吐きながら、手の先がなるべく大きな弧を描くようにして自分の左肩の先まで移動させます。自然と体がツイストされ、視線は伸ばした腕の先を追いかけます。今度は息を吸いながら、腕を右肩の先に移動し、胸を開きます。視線は同じく腕を追いかけます。吐いて畳んで、吸って開いて、このパタパタを呼吸にあわせて繰り返します。逆側も同じようにします。背中周りの筋肉をほぐし、活性化させると共に、内臓も優しくマッサージします。
(6)自分と向き合うポーズ
仰向けになり、椅子やお布団の上に脚をのせ、膝の角度がだいたい90度になるようにします。背中に柔らかい毛布やクッションを敷くと気持ちいいでしょう。両腕を体から軽く離し、両手をお腹の上に優しく置きます。軽く目を閉じます。いい香りのするアイピローをつかってもいいでしょう。息を吐きながらお腹をゆっくりと床に沈めていきます。手のひらからエネルギーが体中に送り込まれ、体の隅々の細胞まで元気が送り届けられているのをイメージします。自分がこの世に生まれ、活かされている奇蹟をゆっくりと思い出し、呼吸と共に癒されている自分を味わってみましょう。体の中心から、新しい細胞が生まれ変わり、また今日も生きていけるのです。
(7)目をゆっくり閉じた時間
治療の過程や検査、結果を待つ間など、気分がとても落ち込むことがあるはずです。そんなときはベッドに横たわってゆっくりと目を閉じてみましょう。腕の下や脚の下に枕をいれたり、自分が快適と感じられるありとあらゆる手段を講じてみましょう。そうやって自分にやってあげる作業そのものも楽しいものです。
さあ、準備ができたら頭の中で何かとってもきれいな景色を想像してみます。海とか、山のてっぺんとか、森の中とか、草原とか。ただ色がついた背景だけかもしれません。現実のものでも、想像のものでも構いません。そこは、まさにあなたが駆け込んでいい避難場所であり、聖域であり、安全な場所なんです。
その楽しい場所には、とてもきれいな音が聞こえます。気持ちいい音しか、聞こえないんです。それに空気もきれいで、とってもいい香りがします。
そこでゆっくり休みましょう。疲れているんだから、休んでいいんです。休めば元気になりますよ。いつだって、疲れたらここにきて休んでいいんです。
さあ、少し元気になりましたか? 笑顔で日常生活に復帰です。でも、忘れないでください。いつでも疲れたら、さっきの場所に休みにいきましょう。
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たった7つの簡単なシークエンスですが、日本の乳がんの患者さんたちにも試してみていただく価値はあるかと思います。
まだまだ多くの研究と検証が必要とされるヨガ・セラピーですが今の段階で少しでも病気に苦しむ女性たちに明るい希望をもたらせる情報を、これからも発信していきたいと思います。
*このコラムで紹介するヨガ・セラピーに関する様々な方法やアドバイスは、お医者様からの適切な診断を無視するものではありません。また、結果や効果を保証するものでもありません。また、サイト内の情報を利用することによって生じた損傷、負傷、疾病、症状、その他についても全て自己責任を負いいただくことになりますことを明記させていただきます。
Posted by Luna2






















