危機遺産<ガラパゴス諸島>の話 

ガラパゴスリクイグアナ

危機遺産<ガラパゴス諸島>の話 

ガラパゴス諸島が世界遺産であるということは、皆さんなんとなくご存知かと思います。
その種では最後の1頭になってしまった「ロンサムジョージ」という名の亀がいて、赤道直下なのにペンギンが住んでいる。チャールズ・ダーウィンによる「進化論」が生まれたのもここ。固有の生態系を育んでいる、動物好き、自然好きにはたまらない魅力を持った島々です。

でも、危機遺産ということは知っていましたか?また、この美しい島々の歴史に、日本が間接的に関わっているということは?
全然知られていません。

アオアシカツオドリ今月始めにガラパゴス諸島を初めて訪れて、人間を怖がらない動物たち、ここでしか見られない動植物の姿に、それまでに体験したことのない感動を覚えました。そして同時に、増え続ける観光客に対応するための人員・農業・酪農、それによって持ち込まれる外来種の問題に危機感を覚えずにはいられませんでした。
ガラパゴス諸島は、実感としてはっきり感じましたが、神の祝福を受けた場所です。こんな場所は他にないね、と出会った誰も彼もが口にしていました。
その玄関口は、バルトラ島という島の空港です。この島と、遠くはなれた日本に、深い関わりがあることを、私は行って初めて知りました。    <写真:アオアシカツオドリ>


その昔、日本軍が真珠湾を攻撃したときアメリカは、日本が次はパナマ湾を狙ってくるだろうと踏んで、このバルトラ島に基地を構えて攻撃に備えることにしたのです。基地を作り空港をつくって、人間が住める環境を作りました。日本人として心が痛む話です。

人間はただ住むのでなく、たくさんの家畜を持ち込み、自分たちが食べる食料をそこで育てました。外来種である家畜たちは野生化し固有種の存在を脅かします。例えばサンタフェ島では、ヤギがイグアナの卵を食べるなどして一時は絶滅寸前にまで追いやりました。牧草や、人間が食べるための果物や野菜は、固有種の動物の餌となり、在来種をしのぐ成長を見せ、他の場所へとどんどん広がっていきます。

人間がちょっと快適に生活しようとすると、ものすごい代償を自然に払わせることになるのですね。大概の観光客は、そんなこと知りもせずに、無邪気に自然に感動して帰っていくのでしょう。渡航する過程やツアーの中では、そんなこと誰も教えてくれません。
ローカルの人ですら、それほど問題意識を持っていません。海は相変わらずきれいですし、船がたくさん停泊している港にすら、アシカが泳ぎイグアナが泳いでいるのが、すぐそばで見られるのですから。

今回の渡航に先立って、私は知人の写真家・藤原幸一さんの著作『沈みゆく方舟 ガラパゴス』を読み、どの程度まで外来種が侵略しているのか、自分なりに想像していました。実際に自分の目で見て一番受け入れがたかったのが、ローカルの人が何の罪悪感もなく農園を営み、本来そこにはないはずのグアバ、バナナ等の外来種を植えて育て、野性のゾウガメの生息地のすぐ隣で牛を飼っていたことです。
ここにしかない動植物に会いたいがために世界中から大金をはたいて観光客が来ているというのに、よりにもよって牛を育てているんですよ!全体の面積の3%でしか許されない行為だとしても、自然にとってはそんな境界線は関係ありません。
到着した初日にそれを目の当たりにした私は、早々にがっかりしました。その後たくさんの豊かな自然と動物たちに出会えば出会うほど、人間の意識の低さに焦りを感じました。

私は予め藤原さんにお願いして、藤原さんが現地の方々と行っている植林活動をお手伝いさせていただく予定でしたので、着いて早々に、その矛盾を抱えた農園の敷地内で、スカレシアというガラパゴス固有の植物を4本、植えさせていただきました。
私自身も単なる観光客ですから、どうしたって滞在中は、悪影響の一旦を担います。せめてもの恩返しをしたかったのです。

スカレシア

スカレシアは小さい苗なので簡単に植えられ、またあっというまに大きくなるので、植え甲斐があります。植えるだけなら作業時間は1本10分程度でしょうか。植林をできたことが、滞在中はせめてもの慰めとなりました。

私は植えながら、ここの土に触れられ挨拶ができ、また直接土地に貢献できるこの作業を、ツアーに組み込んでしまえば皆喜んでやってくれるんじゃないだろうか、と考えていました。知らないからやらないけど、そういうオプションがあればどうだろう。
何に使われているんだか分からない入島税100USD(2008年11月現在)を払うだけではない、
心に残る意味のある貢献ができるのであれば、ずっといいんじゃないか。

そのためにはエクアドル政府、ローカルの人々の意識、観光客の意識、すべてが変わっていかないといけませんが。現地で出会った人々(世界中から来ていた自然を愛する人々と、現地で生まれ育った心の純粋な人々)を見る限り、それは実現不可能ではないように思いました。少しの滞在で、自分の子供のように、恋人のように、好きになってしまったガラパゴスを、もっと守れるように、何かできないかいつも考えるようになってしまいました。こうして伝えていくことで、少しでも周り巡っていい影響があればと願うばかりです。

ところで藤原さんは写真家としての活動の傍ら「ガラパゴス自然保護基金(GCFJ)」を立ち上げ、現地での植林活動をサポートされています。私のような個人旅行者だけでなく、ピースボートの方々と現地の高校生とで一緒に参加する植林活動のサポートもされています。
植林募金というものもあるので、ご興味のある方は是非一度サイトを覗いてみてください。
http://www.galapagos-cfj.com/

text&photo : 岩本 ローラ

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